彼とお揃いのネイル
今日締め切りの原稿があるにも関わらず、お手上げ状態になってしまったので、一旦現実逃避の為にnoteを綴ることにした。
なんて逃げの様だが、僕的にも文字に残しておきたい内容だったので、形にしておくことにした。
今日のタイトルに「彼」という代名詞を使った。
僕は基本的に代名詞で性別を固定したくないなと思っていたりする。
だから「男友達」ではなく「友人」と言うようにしているし、「知り合い」という表現や「男の人」ではなく「○○のような人」という風に言う。
でも、今回はあえて「彼」ということにした。
それぐらいのインパクトがあったし、お話としても大切な部分だったと思ったからだ。
僕は今日、ネイルをして少しでも気分を上げて、文章を書いている。
あ、因みにこの記事を書いている「僕」は「志賀暁子」という人間で、身体的な性別は女性である。
世間一般的に言って、ネイルをしている事に違和感を持たれることはあまりない人間なのである。
さて。
僕は先日友人に会いに行った。対面で会うのは二か月振りの友人だった。
彼はもうすぐ誕生日でせっかくなのでプレゼントも一緒に持っていった。
「彼」。
そう、友人は男性だ。少し年の離れたとは言っても一回りは離れていないけれど、僕よりも年上の友人。
一般的には「社会人男性」と呼ばれる部類の人だ。って言ったら、たぶん彼は唇を尖らせて、「そういうの嫌だ」って言う。「永遠の18歳」「15歳でいたい」なんて宣う彼である。
彼は社会的に見て多くの人が「イケメン」という部類の人だ。
極めて顔が良い。冗談と思われるかもしれないけどさ。
…いや、事実なんだよな、これ。
彼は自分のあり方を知っていて、とてもセルフプロデュースが上手い人なのだと思う。自分を着飾る事に抵抗がなく、いつもとてもかっこいい。
どんな服を着ていても、ちゃんと「彼」という一人の人間という感じがする。実に魅力的な人だ。
多少派手な服も着るし、小奇麗な恰好ももちろん似合う。
僕は友人なので、その辺に多少のフィルターはかかっているかもしれないが、彼はそこそこモテると思う。虜になる人はいると思う。
まあ、いかんせんちょっと中身がポンコツ(?)なので、見た目に惹かれてもうっかり溺れるなんてことにはならないと思うし、まあ、なんていうんだろう、本人にその気がないことは一目瞭然だと思う。
そういうタイプだ。結構分かりやすい人だと思う。
で、そういう彼なので、メイクなどにも比較的抵抗がないだろうとは思っていた。ネイルもその延長線として受け入れてくれるだろうと予想もしていた。彼にはきっとネイルが似合うと予想も出来た。
負担にならないように気をつけて、安く、便利なネイルを買った。お試しという形で楽しんでもらえるようにした。
スリーコインズでお湯で落とせるピールオフのネイルを青系統のものを選んで二本買った。どっちがいいか選べなかったので、どちらがいいか選んでもらって、選ばなかった方は僕が使おうと決めて買ったのだ。
でも、やっぱり男の人にネイルは…という思いもあった。最後までぬぐえなかった。あまりに一方的なプレゼントのようにも思えて、躊躇った僕がいた。
なので、とりあえず正式にラッピングするのをやめて、僕は他のものだけを贈ろうと決めた。
だけど、もし許されるなら、話せそうなら、渡してもいい。
そう思ったので、負け惜しみのようにそのネイルを袋に入れたうえで鞄にしまって彼のところに会いに行った。
当日、食事に入ったカフェでプレゼントをした。
少し明るい色のマグカップと二種類のレターセット。片方は青の封筒のシンプルな物、もう片方は透ける封筒に便箋が綺麗な景色になっている素敵な物だった。
僕はプレゼントを決めるのにそこそこ迷って悩んだのだけれど、その時間に釣り合うくらいには、彼は喜んでくれた。
友人とは言え色の好みなどを詳しく知っているわけではなかったので、彼は「選ぶの難しかったでしょ?」なんて目を見て尋ねられた。
まあ、そこそこ。とは言わなかったけれど。
「すっごく嬉しい。マグカップちょうど欲しかったんだよね」とか「使いやすそう。青も綺麗。嬉しい」みたいな感想をくれて、正直褒めてくれた僕の方も嬉しかった。
そして、なんとなく言えそうな空気感だったので、(彼はかなりフランクな自人格なので、いつも話しやすい)ネイルの話もしてみた。
そして、おずおずとネイルを差し出した僕が「どっちがいいですか?」と尋ねるとしっかりと二本のネイルを見比べて、彼はどっちがいいかなあと少し悩んでからラメの入っていない淡い水色のネイルを手に取った。
「こっちかな」
「どうぞ」と返しつつ、僕はもう一つのネイル瓶を手に取った。こっちは僕の分として。メーカーが同じだけだけど、彼とお揃いのネイルが僕の手の中にある。
「え、嬉しい!今一番試したいかも!!」
楽しそうにキラキラした目ではしゃぐ彼は大概子どもみたいで可愛らしかった。「かわいい」という言葉が相応しくないというのなら、「チャーミング」という言葉にでもなるだろうか。
そんな魅力的な彼と友人でいられて、僕は幸せだなあと思ったし、久々に会った彼もめちゃくちゃ変わらず彼が素敵な人だということの証明になったので、心がとっても温かくなった。
僕がプレゼントとしてネイルを贈るのを躊躇っていたように、男性がネイルをすることに対して抵抗がある人も社会にはいると思う。
僕は比較的『ジェンダーレス』『ジェンダーフリー』という風潮が好ましいものであると思っているし、自分の魅力を引き出す一つの方法としてネイルというのはとても有効な手段だとも思う。
だけど、否定的な意見があることも知っているし、僕の周りでも否定的な人はいる。
だからこそ、彼が僕の贈ったネイルを身に着ける事で嫌な言葉や思いをぶつけられることもある気がしている。それが嫌だ。彼がそんな風に言われてしまうのは理不尽だと思う。それは悔しい。
だけど、絶対彼には似合う。
賭けてもいい。僕が真剣に選んだネイルは絶対に似合う。
彼はとても魅力的だから。
とびっきり素敵で、チャーミングな彼には絶対に似合うと確信している。
僕は他の誰が彼に何を言ったとしても、それが仮にいいものでなく、嘲笑うようなものだったとしても。
僕だけは「素敵だ」って言い切る。絶対伝える。
だから、安心してほしいと思う。
…いや、安心も何もないかもしれないけど。
彼とお揃いのネイルをした僕の指先がキーボードの上で踊っている。
因みに冒頭で語った通り、今日締め切りの原稿がある。
控えめに言って、僕は今大分ヤバイ。ヤバイっていう言葉はあまりに拙い言葉なので使いたくないのだが、現在そのくらい恐ろしい。
まあ、でも、魅力的な彼とお揃いなので、頑張れる気がする。
…マジで死ぬ気でやれよ、僕。志賀暁子。
最後に。
僕はプレゼントと一緒に彼に手紙を渡した。
誕生日の時、度々友人たちに手紙を書くのだが、今回彼にも書いたのだ。
で、彼はその手紙に返事をくれるらしいので、楽しみにしておこうと思う。
どんな言葉が彼からもらえるか、彼の応答がどんな言葉なのか知りたい。
…しいていうなら、彼は硬筆をしていたらしい。
僕の癖字との差が酷いじゃないか。勘弁してくれ。
彼の字がどのくらい綺麗なのかも楽しみにしておく。うん。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
あなたに祝福あれ。
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