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マージナルマン(患者と治療者のmix)で生きていく

私は女の子の姿をした
血を吹き出す泉

ビョークの「Bachelorette」に出てくる歌詞だ。
さまざまな疾患を持ってる人が、社会に求められる姿で適応している、いわゆる「カモフラージュ(ASDにおけるcamouflageも含む)」は、まさにこんな状態ではなかろうか。私はそうだ。

職場に行けば、患者さんと朗らかに会話をし、集団のプログラムを動かす。ある日は白衣をきて検査をし、カウンセリングをする。休日は学会発表や素敵な仲間と論文を書く。周りは「仕事ができる人」「知的水準高そう」「うちのエボシ様」とか言ってくる。こそばゆい。患者さんとも関係良好で、大事な相談もこっそりしてくれる。

この治療者が家に帰ったら

頭の中の「お前はダメだ」「だからいつも失敗する」「いじわるいわね」「無能、死ねばいいのに」と母親の声で何度も何度も何度もリピートされる。1人で「ごめんなさい許してください」「死にます、死にますからどうか許して」「怖いよ!誰か助けて!」と頓服の薬を探しまわり、鼻水を撒き散らしながら泣き叫んでいる。これでも27歳だ。意味わかんない。

はたまた、恋人と呼ばれる相手からちょっとでもそっけない態度をされると、「ほら、嫌われる」「メンヘラでめんどくさくなったのよ」「頭も悪くて何も価値もない、そんなお前を誰も2度と愛さない」「消えて然るべき存在」と聞こえるのだ。少し前は「試し行為」でそれらの声を打ち消していたが(最悪)、最近はODか解離かパニックになって突然泣くかとなっている。

そしてまた朝が来て、治療者の仮面を被り出勤するのだ。私は治療者の形をした血と涙と鼻水を噴出するだけの泉(最悪)なのかもしれない。

マージナルマンとしての自分

家に帰り、治療者の仮面を外した「患者の私」は食べられず、寝れず、風呂にも入れず、気が付けば薬のことばかり考えている。自分はただの道具であり、入れ物であり、クッキーの型。どれだけ自分を満たす具材を入れても出ていってしまう。自分で自分を大切にすることができない。

「自分すらケアできないのに、なんで誰かのケアをやっているんだろう」と葛藤することがある。
メサイアコンプレックスなのか?違う。だって理不尽に対して一緒に怒っている。じゃあ、自助グループ的な立ち位置にいるのか?ちがう、私や職場で症状や疾患をオープンにしてない。

ユングの「傷ついた癒し手」?

Jungは、「分析家に 癒やしの力を与えるものは、分析家自身の傷つき である」と述べている。すなわち、癒やし手自身の傷つきがクライエントに対する共感性と理解、受容を育み、癒やしの過程で役立つようになると いう。

Bennet, 1979

多分似てるけど、なんか違う。傷ついた癒し手は「治療者が癒やされた(いわゆる寛解した)」ことが前提となってくる。精神疾患ちゃんぽんの私は、たぶん寛解しない。

またユングはこうも言ってる。

セラピストは一生学び続けなければいけない。自分自身の傷が、治癒力の尺度となるからだ。

The analyst must go on learning endlessly…it is his own hurt that gives the measure of his power to heal.

自分の傷(疾患や症状)が相手の症状や状態を感じ取るセンサーになってるのは間違いない。

でも、患者としての側面だけでは社会との連絡役も取れずミイラ取りがミイラになる。

最近「ヘルシー」がマイブームだが、完全にヘルシーマッチョって正規分布のちょーはじっこくらいしかいないのではないのか。

患者さんと接していると、「もしかしたらあなたが座っているその診察室の席に、私が座っていたかもしれないし、あなたが白衣を着て私を診る可能性だってあったよなぁ」と思うことがある。

患者としてのあなたと、治療者としての私を分けているものって一体なんだろうか。
きっと同じ線の上にいるだけで、きっとスペクトラムの中で立ち位置が違っただけの話なのに。

幸い、私はハリボテの社会適応を身につけることができた患者だ。
このハリボテをうまく使いながらスペクトラムの端っこ(健康な人がいる側)にいって、アボドカシーしたり、また端っこ(患者さん側)に言って、彼らの症状や体験や気持ちを思いっきり聞いて感じ取ろうと思う。

治療者の形をした血と涙と鼻水を噴出するだけの泉(汚い)は、治療者と患者とのマージナルマンとして、勝手に自由に生きさせてもらいたい。

治療者としてバリバリ仕事こなす私も
flashbackとODで狼狽える私も、どちらも大切な私なの。諦めて受け止めて大事にしたいところだ。

なんか、ハリポタのスネイプ先生みたいな立ち位置でかっこよくね?

まぁいいや。

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