「美味しんぼ」再読備忘録2024「臭さの魅力」‐第五巻「青竹の香り」第5話‐
東西新聞社がフランスの一番権威ある新聞社であるLE TUMP社と提携を結ぶことになり、LE TUMP社の社主や首脳陣を日本に招待し祝宴を開催することになった。そしてその祝宴には栗田さんと山岡も呼ばれている。
LE TUMP社の社主ショーバン氏は貴族出身で気位が高く、愛国主義者で世界中どこに行くにもお抱えのコックを連れて行くほどのグルメだそうだ。美味しんぼに登場するフランス人は大体強烈な愛国主義者であり、プライドが高い。騒動の予感しかしない。
ともかくも両社の提携を仕切った東西新聞社の小泉編集局長のお手柄である。お祝いの宴席の乾杯の音頭を取っている。喜びもひとしおだろうな。乾杯にはシャンパンが選ばれ、料理は日本料理とフランス料理が交互に出てくるようだ。しかし…
…となかなかに不穏な出だしである。そして小泉編集局長も日仏料理の対抗戦などと言わなくてもよいのに。
そんなこというからプライドの高いショーバン社主が、対抗?それは同等の相手に使う言葉だ。フランス料理が世界一なのだから同等の相手になるはずがない、くらいなりそうなの、今までの交渉でわからなかったのだろうか。さらにショーバン社主からそんなこと言われたら大原社主がどうなるかくらいもわかるだろうに。
前菜のキノコ料理の松茸とトリュフに対して、お互いが…
…と認め合わず、
祝宴の席はぶち壊しになってしまったが、しかし一夜明けて、大原社主もショーバン社主も流石に大人気なかったと反省したらしく、両者の提携は変わりなく行われることになった。
祝宴をやり直すことになって、小泉編集局長は山岡に相談を持ちかける。両者ともにやはりわだかまりがあり、心から打ち解けるとはならないであろうからなんとかしたい。食べ物のことだしと山岡に相談するのはもう皆の共通認識となっているようだ。
そして一路、琵琶湖まで
当然、策士山岡のことである。琵琶湖を選んだのもちゃんと理由がある。素晴らしい中国料理食べて少し打ち解けた両者。そしてデザートにはとあるチーズを出す。それはショーバン社主の大好物であったが、そのチーズのにおいを嗅いで拒否反応を示す大原社主。
またしても険悪なムードになりかけた時に、山岡がくさやの干物を持ってくる。その匂いに嫌悪感を示すショーバン社主。それを見て周大人が「中国人からするとそのチーズもくさやもどっちもヒドイ匂いですよ。」とバッサリ。
二人だけだとわからないが、第三者である周大人から醜い争いであると言われると少し冷静になるらしく、結果、お互いを認め合う、わかり合う、その努力を続けていこうとなった大原社主とショーバン社主。山岡の作戦成功である。
最後に山岡が琵琶湖の名物である「鮒ずし」を持ってくる。「鮒ずし」は試してみて美味しいと理解を示すショーバン社主。山岡の提案で「鮒ずし」を作るところを見に行こうとなり、「鮒ずし」のお茶漬けを皆で味わい、本当の仲直りとなる。メデタシメデタシ。
最後の秘密兵器の「鮒ずし」を出すために琵琶湖に連れてきた山岡の作戦勝ち、そして間を取り持ってくれた周大人の人徳の勝利であった。
この和解の舞台となった「鮒寿し魚治」は実在のお店であり、現在も営業しているようだ。
「鮒ずし」、実は子供の頃に食べたけど、当然食べられなかった。子どもって匂いに敏感なので、なんか変な匂いと思ったら拒否反応が出るのは当然のことではあるが、大人になった今は、子どもの嫌いな野菜の定番のピーマンやナス、香りの強いセロリなども大好きである。
そして子供の頃に食べて駄目だった奈良漬けも大人になって久しぶりに食べたら無茶苦茶に美味しく感じたことがある。デパートの鰻屋で出てきて本当に子供の頃以来に食べて、ナニコレ美味しいじゃん!お酒のアテにピッタリ!となったので、その後、地下の食品売り場の漬物売り場で買って帰ったくらいである。
だから鮒ずしも大人になった今なら食べられるんじゃないかな?そしてどうせ食べるなら一流のものを、と魚治さんのサイトを開いて、その価格を見てそっ閉じした俺様であった。(つづく)