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深夜の虚無と夜明けの静寂

記憶を辿れば
保育園の時から上手に眠れなかった。

お昼寝が上手にできなくて
保育士に倉庫に閉じ込められた
ことも未だに覚えている。
タマキ先生っていったかな。
今じゃ大問題な話だけど。

1番夜が怖くて
でも朝も明日がくることも怖くて
よく泣いていた。

あの頃の自分はまだ、死も怖かった。

大人になってからの夜はとても短い。
学生の時はあんなに長く感じたのに
今は何も出来ずに時間が過ぎてゆく。

夜はバケモノが頻繁に現れた。
幽霊や妖怪だったらまだよかったのに
言葉が通じない人間はずっと恐ろしい。

夜にバケモノ同士激しく罵って
物が壊れた音はずっと耳にこびりつく。


深夜に帰宅して階段を登ってきたら
一人一人叩き起こし私達兄弟を正座させ

気が済むまで怒鳴り、殴り、説教をし
どれだけ自分が偉くて

お前らは俺の稼いだ金に感謝が
足りない。
お前らはどうしようもない役立たずで
底辺の能無しだと語る。

俺がしつけてやっているんだと
酒も飲んでいないのに自分の正義に酔っていた。

バケモノが感情を振り回す時に
つられて大泣きした妹は
『ウルサイ』と蹴られて真横でふっとんだ。

庇えば私もやられる。
いつからか泣きわめく妹に対して

“うるさい”
“こいつのせいで長引く”
“もっと上手くやればいいのに”
“在り方を間違える馬鹿な奴”

誰かが生け贄になれば
自分は助かる、見て見ぬふりは
仕方がない。

世の中の縮図は小学生の時から経験していた。

悪い自覚があるのか
よそ様の目が気になるからか知らないけど

バケモノはいつだって
目に見えない所や傷が残りにくい
ようにしていた。

家は落ち着かない。
死ぬかもしれない危機感が
ひりひり。

頭をまっしろにして
自分の意識を別の所にもっていく
だんだん音が遠のいて
水の中で聴いてるくらいに音や言語の
認識ができなくなると少しラクになる。

“怒りが過ぎるまでの我慢”
“体をつねって別の痛みでカバー”
“自身の意識を逃がせ”
“感情をなくせ、ころせ”
“口答えしない”
“泣かない”

記憶が曖昧なことも
多いけどこびりついた錆びは
なかなか落ちないし

落とそうと無理やりこすれば
本体に傷がつく。

心の傷が見えないから
体に傷をつけて自分はどのように
傷ついているか自覚するために
残すことも初めては小学生で
使ったのは針だったかな。

今も痣とかあると独特な安心感がある。

朝がくる
解放と絶望。

昔の記憶が曖昧でも眠ることが
また上手くいかなかったから
今日もこのまま仕事する。

起きなくていい日をずっと
夢みてる。