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Sky 星を紡ぐ子どもたち:学校では教えてくれない「キャンドル課金」の裏話

はじめに

日本の資金決済法は、前払式支払手段(ゲーム内通貨など)に対する規制を設けています。この記事では、資金決済法がゲーム業界、特に米国発のソーシャルゲーム「Sky 星を紡ぐ子どもたち」にどのように影響するかについて取り上げます。

資金決済法について全てを説明するのは難しいので、今回はチャット形式でSkyに関係する部分だけを簡単に読み進められるようにしました。


登場人物紹介

すずめとHUUL
  • すずめ: ショートカットと茶ケープがトレードマークの駆け出し星の子

  • HUUL: なんでも知ってるおじいちゃん

資金決済法とは?

すずめ: こんにちはー。今日は、資金決済法とSkyの関係について、HUULおじいちゃんに色々教わりたいと思いまーす。

HUUL: よろしくお願いします。(腰が痛い…)

すずめ: それでおじいちゃん、早速ですが「資金決済法」ってなんですか?

HUUL: 最近は電子マネーやプリペイドカードなど、「新しいお金」が増えてきたじゃろ?

すずめ: うん。

HUUL: そういう新しいお金に対応するためにできた法律が「資金決済法」じゃ。

すずめ: ふーん。でも、それとゲームと何の関係があるの?

HUUL: ゲームの中で使えるお金…ゲーム内通貨はわかるかな?

すずめ: えーと、キャンドルやシーズンキャンドルのこと?

HUUL: そうじゃ。Skyの場合はキャンドルやシーズンキャンドルがゲーム内通貨になるな。

すずめ: ふむふむ。

HUUL: そういうゲーム内通貨も、資金決済法による規制の適用対象となる場合があるぞ。

すずめ: なる場合がある…っていうことは、ならない場合もあるの?

HUUL: うむ、ゲーム内通貨が「前払式支払手段」に該当する場合は適用対象となるんじゃ。

前払式支払手段とは?

すずめ: 「前払式支払手段」ってなあに?

HUUL: 商品券やギフト券、プリペイドカード、電子マネーなど、先にお金を払って使うタイプのお金があるじゃろ?

すずめ: うん。

HUUL: そういった、利用者から前払いされた対価をもとに発行される有価証券のことを前払式支払手段と言うんじゃ。

すずめ: なるほどー。ゲーム内通貨=前払式支払手段ってこと?

HUUL: いや、必ずしもそうとは言えないんじゃ。

すずめ: あ、そうなんだ。

HUUL: ①数量が数値で表されていること、②リアルマネーを支払って発行されること、③ゲーム内のアイテム交換等に使用できること、この3つが条件になる。

すずめ: キャンドルは1本や2本と数えられるし、キャンドルパックが売られているし、精霊とアイテムを交換する時に使えるから、条件に当てはまるね。

HUUL: その通りじゃ。Skyのキャンドルやシーズンキャンドルは前払式支払手段ということになるな。

すずめ: …ん?じゃあ、キャンマラで集めたキャンドルは?リアルマネーを支払ってないよ?

HUUL: 鋭い。リアルマネーを支払わずに取得したものは前払式支払手段ではないんじゃ。

すずめ: でも、キャンドルの本数はキャンマラで取ったのも買ったのも一緒に表示されるし、そんなのいちいち数えてないよ?

HUUL: Skyのシステム内部ではきちんと分けてカウントされとるから安心するが良い。

すずめ: ほんとだ〜!知らなかった!

HUUL: うむ。Switch版やPS版の星の子はご存知じゃろうが、普段スマホだけで遊んでおると気付きにくい仕様じゃな。

すずめ: OK!課金で取得したキャンドルは前払式支払手段ってことだね。

資金決済法に基づく届出義務

すずめ: 有償キャンドルが前払式支払手段なのはわかったけど、それがSkyとどう関係あるの?

HUUL: 前払式支払手段を発行する事業者は、金融庁にその旨を届け出ないといかんのじゃ。

すずめ: え〜…めんどくさいね。

HUUL: 日本は法治国家じゃからな。消費者を守るためには仕方ないんじゃよ。

すずめ: そっか。私たちを守るための法律なんだね。

届出後に適用される規制

すずめ: それで、届け出をするとどうなるの?

HUUL: 表示義務、供託義務、行政への継続的報告義務、払い戻し義務の4つの義務が課されることになる。

すずめ: うわ…めんどくさそう。

HUUL: 日本は法治こっ…

すずめ: わかったわかった!続けて。

HUUL: …コホン。では、順番に説明するぞ。

表示義務

HUUL: まずは表示義務。これは、前払式支払手段に該当するアイテム…Skyの場合は有償キャンドルについて、利用者に情報提供を行う必要がある。

すずめ: 情報提供?

HUUL: うむ。すずめちゃんは荒野行動は好きかの?

すずめ: うーん…戦うゲームはちょっと…。

HUUL: まあ、好みの問題じゃからな。荒野行動を配信しておるNetEaseという中国の会社があるじゃろ。

すずめ: 中国のSky「Sky光·遇」を運営しているところだね!

HUUL: そうじゃ。そのNetEaseが日本で荒野行動を配信するにあたり、資金決済法に基づく表示を行っておるから見てみると良い。

すずめ: ふ〜ん。こんな感じで表示するんだ。

HUUL: 他にも、色々なアプリやゲームが同じような表示をしておるから、興味があれば「資金決済法に基づく表示」で検索してみると良いぞ。

すずめ: は〜い。

HUUL: どんな感じかイメージできたかな?簡単に言うと、ユーザーに向けてゲーム内通貨についての説明を表示せんといかん、ということじゃな。

すずめ: うん、表示義務についてはわかったよ。

供託義務

HUUL: 次は供託義務じゃな。あまり考えたくはないが、もしTGC(※)が倒産したら、すずめちゃんが買った未使用のキャンドルはどうなる?
※Skyの運営会社:thatgamecompany

すずめ: え…そんなの嫌だよ〜。でも会社が倒産しちゃったら、未使用キャンドルの返金をちゃんとしてくれるのか心配になるね…。

HUUL: うむ。そのような事態に備え、前払式支払手段の発行事業者は一定額のお金を確保しておく必要があるんじゃ。

すずめ: 一定額って、どれくらい?

HUUL: 未使用残高の2分の1以上の額と決められておる。厳密には、毎年3月末と9月末時点での未使用残高が基準となる。

すずめ: 未使用残高って?

HUUL: すずめちゃんは今、キャンドルを何本持っておるかな?

すずめ: 最近キャンマラさぼってるからなあ…。あ、でも、もうすぐ再訪だから奮発して1番高いキャンドルパックを買ったよ!

HUUL: 150本におまけの40本が付属した6,600円のパックかな?

すずめ: うん!

HUUL: ということは、1本あたりだいたい35円ぐらいじゃな。190本まるまる残っとるのかな?

すずめ: ううん。この前15本使ったから、今は175本あるはず。

HUUL: そうすると35円x175本で6,125円分になるな。それがすずめちゃんの分の未使用残高ということじゃ。

すずめ: ほえ〜。

HUUL: このユーザーごとの未使用残高を全部合計した額が、その事業者が発行した「未使用残高」ということになる。仮にこの未使用残高が1,000万円の場合はその2分の1、つまり500万円を供託金として確保しておく必要がある。

すずめ: なるほど〜。

行政への継続的報告義務

HUUL: これはそのままじゃな。ゲーム内通貨を発行する事業者として、定期的に財務局に報告書を提出せんといかんのじゃ。

すずめ: 報告書には何を書くの?

HUUL: 基準日時点の未使用残高や発行額、回収額などを記入する必要があるぞ。

すずめ: そうなんだ。面倒だけどお仕事だもんね。

HUUL: うむ。金銭が関わることじゃからな。

払い戻し義務

HUUL: 最後は払い戻し義務。これは供託義務とも関わってくるが、サービス終了等により発行したゲーム内通貨が使えなくなるときの話じゃ。

すずめ: 嫌だな〜。

HUUL: サービス終了はいつか訪れることじゃからな。

すずめ: うん…。

HUUL: サービス終了が決まった場合、その旨とスケジュール等について内閣総理大臣に届け出た後、新聞に払い戻しの実施や手続きについて広告するんじゃよ。

すずめ: し、しんぶん!?

HUUL: 新聞じゃ。

すずめ: えぇー!さすが日本…。

HUUL: ……。(何かおかしいかの?ジェネレーション・ギャップじゃろか?)

すずめ: ちょっとびっくりしたけど…わかったよ。

HUUL: うむ、払い戻し期間は最低60日は確保する必要があってな、いきなり明日終わると言われても困るじゃろ?

すずめ: そうだね。心の準備はしたい…。

HUUL: あとは手順に従って払い戻しをするだけじゃな。

すずめ: 義務は以上?

HUUL: 以上じゃ。

適用対象外となるケース

すずめ: なんか、日本でゲーム配信するって、大変なんだね〜。

HUUL: そうじゃな。じゃが金銭に関わることはしっかりやっておかんとな。

すずめ: そうだね…でもやっぱり、めんどくさすぎる!なんとか回避する方法はないの?

HUUL: 適用対象外となるケースはあるぞ。

すずめ: へぇー!どんなどんな?

①未使用残高が1,000万円を超えたことがない

HUUL: 1つは、未使用残高が今まで一度も1,000万円を超えたことがない場合じゃな。

すずめ: 一度でも超えるとダメなの?

HUUL: そうじゃ。あくまで、一度も超えたことがない、という場合に限り適用対象外となる。

すずめ: そうなんだ。

HUUL: 小規模事業者を守るためじゃろうな。

すずめ: なるほどー。

②発行した通貨の有効期限が6ヶ月以内

HUUL: もう1つは、発行したゲーム内通貨やポイントの有効期限が6ヶ月以内で切れる場合じゃ。

すずめ: 6ヶ月か〜。結構短いね。

HUUL: そうじゃな。ポイント制の漫画サイトなどでは半年でポイントの期限が切れるものがあるが、もしかすると規制の適用回避を狙ったものかもしれないな。

すずめ: 賢い。

HUUL: うむ。

すずめ: 規制を回避する方法はこれだけ?

HUUL: 細かいことを言うともっとあるんじゃが、Skyに関係するのはこの2つじゃな。

すずめ: そっか。

問題となった事例

HUUL: 実際に問題となったケースは沢山あるんじゃが、わかりやすいケースとして、Pokémon GOの事例を紹介するかの。

すずめ: ポケゴーはフレンドさんがやってた!

HUUL: 詳細はリンク先の記事を見ていただきたいが、Pokémon GOのアイテム「ポケコイン」が前払式支払手段にあたるのではないかということで、金融庁の調査が入ったんじゃ。

すずめ: ほぇ〜。

HUUL: 新しい法律なので改正案についても活発に議論されておる。アンテナを張り巡らせて情報をキャッチしていきたいものじゃな。

すずめ: らじゃ!

参考記事

「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の場合

Skyは適用除外にあたるか?

すずめ: 前払式支払手段と規制については大体わかったけど、じゃあSkyのTGCも届け出ないといけないの?

HUUL: 適用除外に該当するかどうかがポイントじゃな。

すずめ: キャンドルの使用期限は特にないから、②はないとして、①に当てはまるかどうかってことだね。

①未使用残高が1,000万円を超えたことがない
②発行した通貨の有効期限が6ヶ月以内

HUUL: 左様。Skyは世界で2億5,000万ダウンロードされていて、そのうち2億がアジアと言うからすごいもんじゃ。

https://www.axios.com/2023/07/31/interview-jenova-chen-sky

すずめ: 意外とユーザーがいるんだねー。

HUUL: うむ。今年の8月にはAURORAの1万人コンサートでギネス登録もしたから、ユーザー数はなかなか多いかもしれんな。

すずめ: 星の子ってたくさんいるんだな〜。

HUUL: ちなみに、中国の分をどうカウントしとるかにもよるが、上の方で紹介した荒野行動は、資金決済法に基づく表示を行った当時、2億DLと言われていた。ダウンロード数だけで見れば今のSkyの方が規模が大きいことになるな。

すずめ: そしたら、適用除外には当てはまらない可能性が高いんだね。

HUUL: 厳しいかもしれんな。

すずめ: そっか…。

資金決済法に基づく表示を行っているゲーム

HUUL: あくまで一例じゃが、下に資金決済法に基づく表示を行っとるゲームの一覧を載せておくから、Skyの規模がどの程度なのか参考にしてみてくれ。

アークナイツ
Hypergryph(中国)
2021年2月時点でグローバル版のダウンロード数が1000万

三國志 真戦
Qookka Entertainment Limited(中国)
2022年9月、全世界ダウンロード数が7000万を突破

黒い砂漠
Pearl Abyss(韓国)
2020年1月、累計ダウンロード数が300万を突破

メメントモリ
バンク・オブ・イノベーション(日本)
2023年1月、ダウンロード数が200万を突破

Skyは届出をしている?

すずめ: じゃあ、TGCも届出をしてるんだ?

HUUL: うーむ…。

すずめ: どうしたの?

HUUL: 実はそこが、よくわからんのじゃ。

すずめ: どういうこと?(なんでも知ってるんじゃないのかよ)

HUUL: 表示義務というのがあったじゃろ?

すずめ: うん。

HUUL: Skyの公式サイトにも、TGCのサイトにも、ゲーム内にも、公式ヘルプにも、そういったものが一切見当たらないんじゃ。

すずめ: え…?

HUUL: 2022年3月には日本法人もできておるし、とっくに届け出ていてもおかしくないんじゃが…。

違反した場合のペナルティ

すずめ: ち、ちなみに、無届で営業した場合はどうなっちゃうの?

HUUL: 罰則規定があってな。

すずめ: ゴクリ…。

HUUL: 資金決済法の届出義務を怠った場合、資金決済法112条1号により、以下のペナルティが課せられる。

最大6ヶ月以下の懲役
最大50万円以下の罰金

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=421AC0000000059#Mp-At_112

すずめ: な〜んだ。最大50万円なら、たいしたことないね。

HUUL: そう思うじゃろ?しかし、これらの情報は公表される。そうしたら企業の信用度はどうなると思う?

すずめ: …な、なるほど。

HUUL: そういうことじゃ。

すずめ: ま、まあ、未使用残高がまだ1,000万円を超えていないのかもしれないし…ね?

HUUL: 判断は読者の皆さんにお任せするとしようかの。

安心してゲームを楽しむために

すずめ: 資金決済法とSkyの関係について、よくわかったよ!

HUUL: 安心してゲームを楽しむためにも、これらの情報は知っておいて損はないからな。

すずめ: そうだね。いろいろ勉強になりました。HUULおじいちゃんありがとう。

HUUL: 空の王国でまた会おう。さらばじゃ。

すずめ: さらばじゃー。

おわりに

この記事では、日本の資金決済法とゲーム内通貨の関係について、「Sky 星を紡ぐ子どもたち」をケーススタディとして挙げ、各種規制とその適用条件を説明しました。

資金決済法は利用者保護や利便性の向上を目的としており、ゲーム業界における透明性と信頼性を高める役割も果たしています。賢く知識を身につけ、安全な空の旅を楽しみましょう!


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