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芸術の秋🍂おすすめしたい山口蓬春記念館@逗子/(魁夷と蓬春 美への眼差し)

ずっと行きたかった山口蓬春記念館にようやく行ってきた。

きつかった10月後半は、ここに行くことと北海道旅行を楽しみに踏ん張っていた。

あいにくの空模様だが、土砂降りになることもなく、雨がやんだ時間もあってびしょ濡れになることもなく過ごせた。

山口蓬春記念館

先日の山種美術館で、作品を見て訪れたくなった記念館。

その前に皇居三の丸尚蔵館でも皇室の買上げとなった作品を見ており、ずっと気になっていたが、場所が東京駅から約1時間半と少し遠目。

連休に行こうと友達と計画していた。

JR逗子駅を降りたら、ロータリーの3番バス乗り場から、
海岸回り葉山行(逗12)
もしくは、
海岸回り福祉文化会館行(逗11)
に乗る。
「三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前」下車 徒歩2分。
(土日祝日は毎時00 15 30 45分と覚えやすい。)

山口蓬春記念館のホームページより

約20分とあったが30分ちょっとかかった。
父のいとこが逗子にいて、子供の頃はよく来た。懐かしい。

バス停を降りて記念館に向かう。

バス停を降りたらこの看板がある
一つ手前の曲がる場所を見逃して
別の道からアクセス

細い道を抜けて、(本来のルートじゃなかったと思う)辿り着く。

細い道を抜けたら、素敵な記念館が現れた。

見えにくいが手前のガラスに
山口蓬春記念館とある
入場料600円
安い。
しかも高校生以下は無料!

記念館からの眺めでいろんなことを思い出す

ちょっと本筋から離れる。


記念館は写真が撮れない。

とても素敵で『また来月来ようね』なんて話になった。

本当は呈茶会に行きたいが日程が合わなさそう。

記念館でもらえる紙より
展示室は3つ
案内図左の画室がまた素晴らしい

こんな素敵なお家に住みたい。

思えば父の実家は鎌倉で、子供の頃泊まりに行くと、少し歩けば海が見えて好きだった。

記念館に着いてから、ずっと鎌倉が近かった頃のことがじわじわと頭の中に入ってきていた。

友達と絵を見ながら、話しながら、どこか頭の片隅に記憶がじわじわ入り込んでくる。

子供の頃、『鎌倉に住みたい』と父に話していたが、通勤には不便で遠く、父は鎌倉に住む選択をしなかった。
『おじいちゃんも働いてたよね。』という私に、『お父さんには運転手さんがいないから通勤が大変なんだ。』と父は言った。

社会人になって通勤が嫌で、
私も誰かに会社まで運んでもらいたいと思い、そんな時は祖父のことを思い出した。いいなぁって。

そんなことをこの素敵な記念館の2階の窓から海を眺めながら考え、またどんどん昔のことを思い出す。

思えば、前は近所のパイロットさんもお迎えが来ていた。
私も何回か仕事が遅くなって夜中になった時偉い方の運転手さんに順にに送っていただいたことがあった。

今は経費節減もあり、そんな機会もなくなった。

ちなみに、運転手さんは私などにもドアを開けてくださるので申し訳なく、家の前でお断りしようとしていたら、翌朝『仕事は仕方ないが、申し訳なく思うならば、タクシーで帰りなさい。』と父に言われもっともだと思った。

海を見ながら、そんな昔の記憶が蘇えっていた。

我に返り、改めて海を見た。
昨日は西の方も大雨で、関東も雨。
薄い淡いグリーンとグレーの海の波が海岸に寄せているのが見えた。

こんなことは、街中のビルの中の美術館だとあまり起きない。
絵以外のことに気持ちが向いたことにちょっと驚いた。

話を記念館に戻す。

吉田五十八設計の画室

左端にある部屋

全面も背面も大きなガラス窓(昔のゆらぎのガラス💓)で枠も木製。

その外側には緑が鮮やかな木々が配置され、本当に美しい部屋だった。

私などこの部屋にいたら、仕事が捗らなさそうだ。

海側は床が一段低くなっており、そこにも椅子とテーブルが配置されて、もしかしたら仕事の合間にここで飲み物を飲んだり打ち合わせをされたのかもしれない。

ずっとここに座っていたいと思う素敵な空間だった。
背後の丘側の窓も外は緑の木々。
紅葉もするかもしれない。

海の反対側のそちらにはソファが配置され、置かれた平たいクッション柄はウィリアム・モリスの『いちご泥棒』だった。
(私はあまりこの柄は好みじゃない💦が代表作だから仕方がない。)

桔梗の間

真ん中あたりの部屋

ここは奥様がお客様をもてなしたお部屋で、雪見障子から見えるのは茶庭。

ここに飾られた絵も素敵だった。

桔梗の間を過ぎて、別館に行く途中のガラスケースには使われていた器が展示されていたが、オールドバカラのグラスや喜多川の器なども飾られて、やはり昔の器が好き。

昔のものは、手がかかって美しい。
便利さと引き換えに失ったものがとても多いと感じる。

展示室1

受付からすぐの部屋。
ここに入るすぐ右手にロッカーがあるので荷物を預けられる。

こちらのInstagramでパンフレットに掲載があるが、
『秋』という作品が美しい。
葉の色に黄色やグリーン、紫がかったピンク色が使われた木が描かれたその絵は透けるような綺麗な落ち着いた色合いの絵で、上の方に横を向いたアカゲラがとまっている。

このXでも見られる。

『南天』という絵は、東山魁夷も描いているなぁと思ったが、東京美術学校の課題だったようだ。

この部屋にはシロクマとペンギンの絵の下絵も展示されていた。(タイトルは『望郷』)

山口蓬春は、北海道の松前で生まれている。だからなのか?
最初にその絵を見た時に『望郷』という二文字は思い浮かばなかった。

山口蓬春記念館のホームページより

展示室にはこの絵の下絵と下図が2つあり、私はペンギンのいない下絵が良かった。

ペンギンがいる方の下絵(か下図)は、シロクマの左にもペンギンが配置され、後方右側の山の形も、ペンギンなしのものと異なり、試行錯誤の過程が分かり面白い。

友達はこの絵のクリアファイルも買っていた。

『昨年の夏は、まことに暑い日が多くつづいた。とくに八月に入ってからは六〇年ぶりの暑さという日もあった。当時、私は「白熊」を題材に何か制作をと考えていたので、ある日、上野動物園へ写生に出かけた。2匹の白熊は、この日、誰かの厚意か、暑さを忘れるようにと送られた二、三本の氷柱をさも嬉しそうに撫でたり、抱いたりしていた。この華麗な姿を見て、この図を制作することにしたのである。(中略)本来であれば、北極の白熊と南極のペンギンが同じ空間に存在することはなく、また猛暑にされるさらされることもない。(後略)

山口蓬春ー新日本画の世界ー解説より抜粋


展示室2

ここでは代表作の一つでもある『山湖』という作品がとても美しかった。山口蓬春の代表作でもある。

https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/?trgt=20200222


即位礼正殿の儀が行なわれた皇居・宮殿「正殿松の間」の廊下にある杉戸には、壁画が描かれています。描いたのは、新しい日本画を追求し続けた日本画家・山口蓬春。
縦72cm横153cmの横長の画面に、空を写す湖面の表情が伸びやかに表現されている『山湖』は、一見西洋絵画のような風景画…若くして画壇で認められた蓬春の原点は“西洋絵画”でした。洋画の技法を日本画に取り入れ、新しい時代の感性で描く独自の世界観は、「蓬春モダニズム」と呼ばれ、戦後の日本画壇に大きな存在感を放ったのです。今回の作品『山湖』は、そんな「蓬春モダニズム」の夜明けを告げる最初の一枚です。

https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/?trgt=20200222
テレビ東京サイトより

同じ緑と青の自然の風景でも、東山魁夷の絵よりもあたたかさを感じる。

この展示室には、魁夷の『緑響く』もあったが複製でこれは残念。

この部屋ではまた魁夷と蓬春が蒐集した珠玉のコレクションを見ることができた。
香炉や刷毛目茶碗などのコレクションがありそれぞれ素晴らしかった。

絵画以外の作品も見ることができて良い。


展示室3

この部屋は、いろんな作品の下図や素描が多かったが、台風が来た時の海を描いた『濤』(なみ)という作品も印象的だった。

グレー単色で描くことの六ヶ敷さが解説に書かれていた。
(難しいではなく、六ヶ敷さという漢字が使用されていた。)

アイオン台風を題材とした作品である。波は波頭の動態を灰色(グレーとふりがな)の一色で表現しようと言う特殊な研究目的で着手したものである。空も、沖も、前景も殆ど灰色(グレー)で、荒天の動態を、写実的に表現しようとした。荒れて居る日の、或る時間に、海一体がすっかり色彩を失って、グレー一色に見えた。そのひとときの自然の姿を、単色の濃淡で現してみたかったのである。(中略)誰でも、単色の表現は簡単にできるように思うであろうが、実際は寧ろ反対で、多彩であるより単色の方が却って六ヶ敷いのである。(後略)

山口蓬春ー新日本画の世界ー解説より抜粋

古唐墨 作霜雨

この墨にまつわるエピソードが良かった。

山口蓬春が、この古唐墨を東山魁夷の師である橋本素明に贈り、橋本素明が亡くなった時に、東山魁夷がその古唐墨を山口蓬春に返しに来た。
その時山口蓬春はそれを改めて東山魁夷に贈った。

後に、東山魁夷は唐招提寺の障壁画を描く際に用いた。
紫味を帯びた墨色だったという。
昔、東山魁夷の唐招提寺の壁画を展覧会で見た時にもしかしたら読んだかもしれないがすっかり忘れていた。

主屋2階からは逗子の海が見え、
横の窓からはくっきりとした鮮やかな美しい柿が絵のように枝についていて素敵な部屋だった。

山口蓬春という画家

もともとは西洋画だったが、日本画のように渋いという評価もあり、途中で、日本画に転科し、28歳の大正10年から京都に1年間居を移し、深草の石峰寺や高野山などを描く。
その後主席で東京美術学校を卒業した。

1965年には文化勲章受賞を受賞している。

戦争の際に、山形に疎開をしていて、串田孫一さんも山形に疎開していたことを思い出す。

記念館の別館では23分ほどのビデオを見ることができる。
その中で、『芸術もまた革新していかないと芸術は進化していかない。社会や時代が進んでいくのだから。』というような言葉があったと記憶する。

やまと絵から、新しい日本画の世界を切り開き、蓬春モダニズムと呼ばれる独自の世界を創り出したのだ。

画集を紐解いても、いろんな画風があって、それぞれにいい。

蓬春死後、美術評論家・河北倫明氏は『誰かが蓬春のレベルを維持しなくてはならない。』と語った。
蓬春芸術は、西洋画と日本画を超えた近代日本美術の1つの到達点とも言えるのである。

山口蓬春ー新日本画の世界ーより

先日見てきた福田平八郎とは『六潮会』の仲間。

ランチ

この界隈は全く不案内で、よく分からないから検索してヒットした一番近い神奈川県立近代美術館葉山館のレストランを行きの道中に予約した。

ここでは大きな波音がしていた
地図のルートは遠回り
こんなに遠くなくすぐ近く


骨付き湘南豚ソテー
野菜も美味しかった
チョコレートケーキも
甘過ぎなくてよかった


近いし、綺麗だし、海も見えていいお店だったと思う。
夏は混みそう。

レストランの前から階段を降りていくと砂浜には出られないけれど、一色海岸が目前。

波音はこちらで。

晴れていても綺麗だったと思うのだが、この海の色は淡いグリーンとブルーがかったグレーの混じり合った優しい色味でお疲れモードの私には癒しの色だった。

山口蓬春記念館の画室からの木々の緑も雨のおかげでつややかで緑が鮮やかだった。

雨もたまにはいい。

記念館で買ったもの

・絵葉書が1枚100円。今日、これは安い。
24枚購入。

左『秋』右『冬菜』
これらは秋と冬に使えるから
複数枚購入
『白梅』と『枇杷』

・マグネット2枚。早速使っている。
枇杷と桔梗の絵のを購入。

・一筆箋とお揃いの封筒
枇杷の絵のもの。

・画集一冊。

もう一冊、素描集を買うか迷うも
踏みとどまる。
ハガキ買い過ぎと言われそうだが
これから季節毎に使う

・紫陽花の絵のクリアファイル。

白熊とペンギンの『望郷』は買わなかった


逗子駅にて


電車に乗る前に、駅前の文章堂という文具とハンコのお店に入った。

そこで職人さん手製の和紙の箱を。
ハガキ入れに。
赤くてかわいい。作りもしっかり。

早速飽和状態の絵葉書をしまう。

住所のやりとりしない方法があれば、フォロワーさんプレゼント企画でもしたいくらいにまたたまってきたから、せっせとリア友にお便りを出したいと思う。

山口蓬春記念館の
チケットが素敵なので栞にする
今、栞が足りないから過去のチケットを出してこよう


逗子に行って、山口蓬春記念館に行っただけなのに大満足。

記念館自体が素敵なので、ここだけで私は楽しかった。

山口蓬春記念館で、明治神宮ミュージアムのチケットをいただいたので行って来たいが期日が迫る。

『明治を描く』という展覧会が開催中。


葉山女子旅きっぷ

私は使わなかったが、これがお得らしいので載せておく。


芸術の秋

大満足な1日。

この連休は忙しい。

見たかった根津美術館のチケットをいただき、バレエ(これもチケットをいただき)も見にいく。

ちなみに正面S席です。
チケット代はいりません。
とのことです💦

友達のLINEより

こんな素敵なご招待は、這ってでも行きたい。チケット代を聞いたら26,000円😨
バレエをしている知り合いに聞いたら、コロナの後ますます高騰しているらしい。

演目のおさらいをしておきたい。


まさに芸術の秋。

仕事に忙殺されたら、芸術で心を回復する。

今はそうしていく。

それができることに、感謝しながら。

今日は晴れたから朝から2回洗濯をして、シーツも全員分洗って干している。
夏ほど乾きは早くないが、洗濯をすると気持ちはスッキリ。

明日に備えたい。

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