白黒の世界 携帯小説2
第二話 焦心
(全12話)
登場人物
森 龍牙(もり りゅうが):物語の主人公
木原 京(きはら けい):龍牙の親友
鳥海 紅音(とりうみ あかね):新入社員
鈴川 将太(すずかわ しょうた):スタッフ
その日に連絡が返ってくることはなかった
なぁ紅音ちゃん具合どうだ?
緑色の吹き出しに既読通知はつかなかった。
会社からは事情を確認する電話が来た。
「はい。前日体調が悪く高熱だったもので、心配してます」
「わかった。私からも連絡してみる」
女上司が淡々と話す。
電話を切るとスタッフ鈴川将太が
「これって5月病ってやつなんじゃないですかー!もしかしたらこのまま、出勤しなくなるかもですね、新人入って助かってたのになぁ」
いや、そんなことはないんだ。
そう自分に言い聞かせながら返信を待った。
カットをしながらも、紅音ちゃんが予約の取り次ぎをしにくる姿が脳裏に浮かび、うなされてることを想像すると気が気ではなかった。
「おはようございます
すいません熱で寝込んでました」
連絡が来たのは彼女が無断欠勤した
次の日の朝だった。
すぐさま携帯の画面を素早くタップし
電話をした。
「大丈夫か?」
「ずっと熱が下がらなくて大変でした」
「今日はどうする?休むなら休んでいいぞ?それとちゃんと飯食えてるか?」
「さっき軽く食べたんですが自炊できないので、、、」
「わかった、じゃあ紅音ちゃんが好きなもん買って夜届けてやるよ、一人暮らし大変だろ」
「ほんますいません」
とりあえず安心できた。
信じて良かったそう思えた瞬間だった。
朝礼で紅音ちゃんの話を聞いた鈴川が
「とりあえずなんでもなくてよかったです。店長、無断欠勤ですからね、その辺はちゃんと指導お願いします!」
正論すぎて何も言えなかった
強気な店長、ドライな店長だった自分が、だんだんと紅音ちゃんをかばうようになっている自分に気づき始めていたのだ。
その日はなぜか、会える喜びと、看病してあげなきゃという気持ちで、早く時間が過ぎる感覚があった。
彼女が好きなクロワッサンとレモンティーを買って30分バイクを走らせた。
「家の前に着いたよ」
営業後に行くと伝えていたが連絡がなかった
「すみません寝てました」
連絡が再度あったのは到着後2時間後だった。
「店長すいません。本当に申し訳ないです」
その間俺は待っていたが突然の雨で
買ったものはドアノブにかけて帰っていた。
会えると期待していた自分が
恥ずかしくも思えたんだ。
俺は彼氏ではない。
「お前の好きなもん買って置いてきたから、なんも食ってなくて腹減ったろ?動けるようになったら食べろよ!やっぱうまいもん食わないと、力でないからさ」
「わざわざ来てくれたのにすみません。やっと明日は出勤できそうです。ご迷惑をおかけしました。」
「店のグループラインにも入れとけよ。みんな心配してるからさ」
「はい!ありがとうございます」
自分が高熱であることを感じた。
きっと、38度ではなく。
体温計では測れない熱なんだと思う。
帰路に着く為バイクを走らせ
その熱を覚ますかのように
風になった。
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「店長!昨日はありがとうございました!」
元気に出勤してきた彼女の姿が
お店を華やかにした。
「おぉーまじで、大丈夫か紅音ちゃん!どこか悪いとこないか?本当に本当に大丈夫か?」
鈴川「店長紅音ちゃんにやけに優しくないですか?」
「ん?そうか?」
鈴川「社内恋愛禁止ですからね〜まったく」
紅音「私と店長が!?ないないないない、いくつ離れてると思ってるんですかーまったく先輩ったら」
「だよねーごめん」
あっないのか。察し。
一瞬にして元気をなくす俺。
「でも昨日はありがとうございました。ほんまに助かりました。夜会えなくてすいません。」
「じゃ、もっと元気になったらご飯行こうな」
「ご馳走してくれるんですか?」
「そうだな快気祝いだ、食いたいだけ食えや!」
元気になってから俺たちは毎日一緒に夜ご飯を食べる仲になった。
そして、、、
「休みの日も遊びにいこう!関西から出てきたんならそうだなーいろんなとこ連れて行けたらいいなー!絶対楽しいよな!」と盛り上がっていた。
そんなある営業日後
鈴川「紅音ちゃん明日休み?」
「店長?私休みでしたっけ?」
「俺が仕事だから仕事だろ?」
鈴川「ん!?なんで、店長に聞くの?しかも店長休みかぶせてんすか?やっぱ2人付き合ってんすか?怪しい。」
「んなわけねぇだろ(付き合いたいのは付き合いたいけど」
紅音「誤解させちゃう感じでしたねすいません」
まったくこの感じはなんなんだろうか?
言い出せずにいる退社を言えば
彼女は悲しむのだろうか?
もうすぐ、5月も終わる。あと2ヶ月
悲しませたくなかった、
この生活がなくなるのが怖かった。
だからといって
退社を取りやめる気持ちはなかった。
刻一刻と迫る別れの日
告白するべきか、退社だけを伝えるべきか
上司と部下、社内恋愛禁止の会社で
人を好きになってはいけないのか
そして、歳の差があってはいけないのか
不利な状況であることは確かだった。
ただただ彼女の笑顔が見たくて
過ごした時間に蹴りをつけなくてはいけなかった。
明日言おう
全て言おう
俺らしく何からも逃げずに、、、
正面から向き合ってみよう。
深夜0時の電車の中、
俺の気持ちは12時でもなく0時でもなく
上を向く針のように真っ直ぐに生きていた
すべての感情の針が重なった
そう覚悟を決めメッセージを送った。
「明日の夜大事な話があるから、スケジュール開けてくれないかな?」
続く
次回予告
遂に打ち明けた想い。その答えは?上司と部下の壁は?揺れる男心。それは正解なのか?間違っているのか。言うことで変わる世界は幸せか?
次回 告白
https://note.mu/blancetnoir/n/ncbabae58457c
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1話 【希望】