自然の中で人間が生きるということ
人間の都合で害虫だなんて決めるな!
という立派なご意見を垂れる人は、日本住血吸虫などを知らないのでしょう。その寄生虫が現在日本において根絶されているということは、今を生きるわたし達にとってとても幸せなことです。
ある地域で原因不明の風土病が蔓延していたことがありました。
その地域に住む人は寄生虫に蝕まれ、体の成長も阻害され、腹水がたまり、若くして生命を失っていった。
それが寄生虫によるものであると確認され、媒介となる巻貝、ミヤイリガイも発見され、風土病を根絶するべく、行政と住人たちは普段の努力を続けた。
ミヤイリガイから放出された寄生虫の幼生は、水を介して人体に侵入していた。
朝露に触れるだけでも病気になる。稲作に従事しなければ生計が維持できない住民たちは、なんとかミヤイリガイを根絶しようと、箸で1匹1匹捕獲するなど、地道に駆除活動を続けた。
ミヤイリガイは流れの早い水の中では、生息できないことがわかった。
その地域ではコンクリートの用水路の整備が急がれ、殺貝剤の散布や、不用意に水辺に立ち入らないような子供たちへの教育も徹底されたことにより
100年以上かかって、日本住血吸虫症は終息宣言が出されるに至った。
その病気によって生命を落とした住民たちは数知れず。
失ったものはとても大きかったけれど、人が生きるため、風土病の根絶のために研究や駆除活動を続けた偉大な先人がいた事を忘れてはならない。
そうした歴史も知らず「害虫だなんて人間の都合で言うな」などというのは、人間が普段から如何に自然に介入して日々の営みを続けていることへの、想像が足らんのだとしかわたしは思わない。
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