荒木飛呂彦の漫画術 【読書感想文】 緻密に計算されたヒットへの道と、それを超えて生まれる傑作
★★★★★
Amazonでレビューしたものです
0.目次
はじめに
第一章 導入の描き方
第二章 おさえておきたい漫画の「基本四大構造」
第三章 キャラクターの作り方
第四章 ストーリーの作り方
第五章 絵がすべてを表現する
第六章 漫画の「世界観」とは何か
第七章 すべての要素は「テーマ」につながる
実践編その1 漫画ができるまで
実践編その2 短編の描き方
おわりに
1.ジョジョを生み出す荒木飛呂彦先生のアタマの中
ジョジョの奇妙な冒険の作者・荒木飛呂彦先生が書かれた漫画術。
ジョジョといえば、ジョジョ立ちと呼ばれる印象的な人物のポーズに、「ゴゴゴゴゴゴ」「ズキュウウウン」といった擬態語に印象的なセリフ回し、というイメージがあり、非常に感覚的に作られている作品かと、勝手に想像していました。
しかし、こちらの漫画術を読むと、非常に現実的かつ論理的に計算をして描かれた漫画かがわかりました。
そうだったのか、、、
多くの漫画や映画が紹介され、さらにご自分の漫画を例として解説されています。
荒木先生がこんなことを考えて漫画を書かれているのかーと非常に勉強になり、関心しました。
2.見てもらってナンボの漫画の世界
驚いたのが、
最初の第一章が、"導入の描き方"であり、いかに編集者や読者の目をひきつけるかが繰り返し書かれていたことです。
とにかく見てもらう。
それがいかに重要で大変なことか、、、
週刊少年ジャンプのという人気が全ての世界で生き残るのはこういうことかと、ゾクゾクしました。
袋から出してももらえないと。
人気商売は厳しいですね。
さらに少年マンガならではのルールにも触れられています。
読者が少年であり、少年はこう言うのが好きだと言うのも意識して書く必要があるんですね。
もちろん自分で表現したいものはある。
が、それもみてもらえなければ意味がない。
みてもらうためにはどうしたら良いか。
常に読者を意識して、漫画は作品は作られているのですね。
3.4大構造と特徴的な絵
導入の後に、漫画の「基本四大構造」が解説されます。
曰く、キャラクター、ストーリー、世界観、テーマ。だそうです。
キャラクターとストーリーはないと漫画にならないですよね。
テーマもまあわかります。友情とか、恋愛とか。
世界観って難しいな、と思いました。
しかもその漫画の世界観を表すためにはリアリティが必要で、取材が必要と。
リアリティ!
出ました、リアリティ!!
さらには、絵の書き方についても詳しく解説されています。
荒木先生はジョジョを見ていても、絵がすごい変わったなと思います。この本では、ジョジョの前の作品も載せられているので、一人の人間が描いた絵とは思えないくらいの変遷です。
それも、常に時代に取り残されないように努力して変えてきたのだそうです。
常に勉強なんですね。恐れ入ります。
4.構造の先の傑作は企業秘密
導入と絵と基本四大構造で、王道漫画の「黄金の道」になるんだそうです。
ありがとうございました!
これを読んでその通りに実践すれば、私も荒木飛呂彦になってジョジョを描ける、、、
わけないじゃん!
大人は嘘つきですな。
いや間違うのでしたっけ?
キャラクターでリストを細かく作られていると言われる荒木先生。でもその人物リストは時にしばしばよく変わってしまいます。身長が成長期なのに縮んだり、能力にないのに戦闘中空を飛び始めたり。
さらには長年にわたって構築された世界でさえ、加速してなくなり、別の世界が始まってしまいました。
自ら作り上げた世界を自ら壊す黄金の精神。
さらに、構築された世界を装飾する、謎のセリフや擬音の出てくるセンス。
これらが加わって、唯一無二の荒木ワールドになるのでしょう。
まだまだ企業秘密がありそうですね。
全部見せていただけるのを楽しみにしています。