SPY×FAMILY 14巻 【ネタバレありマンガ感想文】 潰れた夢 届かぬ想い 踊る人
★★★★★
Amazonでレビューしたものです
1.SPY×FAMILY とは
SPY×FAMILYは、遠藤達哉氏によるマンガです。
2019年から5年以上連載されています。
ジャンプ+の連載なので、1話や最新話はタダで読むことができます。
人気があり、アニメ化から映画化もされました。
Season3が近々またアニメになるそうです。
2.これまでのあらすじ
東西冷戦の時代(1960−70年代を想定)、隣り合った東国(オスタニア)と西国(ウィスタリス)は、戦争と休戦を繰り返し、現在は休戦状態となっていた。
しかしその水面下では、互いにスパイを送り合う壮絶な情報戦が繰り広げられていた。
西国のスパイ<黄昏>は、ある日東国の政治家ドノバン・デスモンドに近づくための指令オペレーション<梟>(ストリクス)を受ける。デズモンドは子供のいる名門寄宿学校の懇親会に出席するため、そこに出席して接触を図れというもの。そして、そのために子供を作って学校に入学させろという!
<黄昏>は、ロイド・フォージャーと名乗り、孤児院で少女を養女に迎えた。しかし、その少女=アーニャは、実は心がよめるエスパーだったが、そのことを周囲に秘密にしていた。なんとか入学試験の筆記試験に合格したアーニャだったが、次は面接試験であり、両親の参加を義務付けられていた。次にロイドとアーニャは街でヨル・ブライアという女性と出会う。東国では独身女性は不審に思われる傾向があり、また弟を安心させるため、ヨルはパーティに一緒に参加する相手を探していた。違いの利害が一致した二人は偽装結婚をする。が、そのヨルも実は<いばら姫>という凄腕の殺し屋だった。
隠して作られた家族は滑り止めでなんとか入学試験に合格し、アーニャは名門イーデン校に入学を果たす。
イーデン校は、6歳から19歳までの13学年制で、ハリー・ポッターのような名門寄宿学校(イートン校がモデルと思われる。アーニャは通学)。生徒は、優秀な成績や社会奉仕活動で、星(ステラ)を授与され、8つたまると皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)として、懇親会への参加が認められる。デズモンドが参加する懇親会への出席が<黄昏>の目標(プランA)である。
しかし、アーニャは実年齢が幼いと推測されており、学校の成績には四苦八苦している。さらに、心が読めることもあって、素っ頓狂な行動によりトラブルを起こすことも多い。
問題を起こしたり成績不良だと、星の代わりに雷(トニト)がつけられ、こちらも8つたまると退学になってしまう。
オペレーション<梟>の対象は、ドノバン・デズモンドの次男、ダミアンで、アーニャの同級生。危ぶまれているプランAの代わりが、アーニャがダミアンと個人的に親しくなり、家にお呼ばれするというのがプランB。
さらに、ドノバンの妻メリンダと、ヨルが知り合ったため、プランCも発動中である。
3.SPY×FAMILYの魅力
この漫画が人気なのはずいぶん前から知っていましたが、私は意地張って見ていませんでした。家族仲良しホームコメディなんて、独身女性には辛いよなーって。。
実際見てみたら、そんなことはなく、とっても面白い漫画でした。意地張って損しましたよ。。
一気に全巻揃えてしまいました。
魅力①:有能なのにツッコミ満載なキャラクター
主役はロイドこと<黄昏>。彼の過去については途中で触れられていますが、本名は黒塗りにされて、徹底的に隠されています。
十数年にわたるスパイということで、30になるかならないかぐらいと推測されますが、当然年齢も不明です。
このスパイ、とんでもなく有能なんですよ。百の顔を使い分ける変装の名人で、素顔はイケメン。凄腕で戦闘を制し、頭もよく、仮の職業の精神科医も仕事を完璧にこなして周囲に慕われ、家事も完璧、料理も上手というスーパーマンです。
しかし、真面目で考えすぎなところがあり、ロイドの内面語りに読みながら突っ込んでいくことが多いです。
そして、娘のアーニャ。
とにかく可愛いんです。この子。
引き取られた父親のロイドのためにこの子なりに頑張って協力しようとしますが、やっぱり勉強が苦手だったり、集中力が続かなかったり、子供ながらの変な理解をしたりして、ああ、小さい子ってそうだよねって感じです。
でも、子供ながらにずる賢いところとかもしっかり描かれています。
そして、超能力者だけど、それを隠しており、孤児院育ちなので、人に言えない過去がたくさんあるようなんです。こんな小さいのに苦労しているんですよ、これでも。アホな子ですけど。
アーニャの過去が明らかになったら泣いちゃいそうです。
めっちゃスタイルの良い人妻・ヨルさん。作中最強の馬鹿力ゴリラです。
天然の酒乱、殺人料理。
でも、アーニャの良いお母さんになろうと一生懸命です。
そして、暗殺家業も一生懸命です。
ロイドとは契約結婚ですが、最近ちょっと意識するようになってきたようで、このまま本当にならないかなーと期待しております。
美男美女バンザイ!
さらにターゲットのダミアンくん。
エリート意識の高いやつですが、家庭的にはちょっと不幸。でも、友達には恵まれています。向上心があり頑張り屋で、ここぞという時に勇気の出せる男らしい子です。
アーニャのことは実は意識バリバリなんですが、認められない認めたくない状況で、つい怒鳴りあって喧嘩になってしまいます。アーニャの友達のベッキーはそのへん気づいているようなのですが、ダミアンの取り巻きは全く気づいておらず、幼少期の男女差でしょうか。
ちなみにアーニャは作戦のターゲットだから仲良くしようと努力しているだけで、異性としては意識していない?
こっちもまとまってくれるといいなあ、と期待しております。
魅力②:学校と裏活動の交錯するストーリー
ロイドのスパイ活動と、アーニャの学校生活の2つが、メインストーリーになって、それが絡み合っています。
さらに、ヨルさんの暗殺活動や、その弟の諜報員活動も加わっています。
エリート学校生活、といってもまだ小学1年生なので、ドタバタでほのぼのしたギャクメインの生活です。
一方、スパイや暗殺は、しっかり人がバタバタ倒されて死んでいいっており、その背後に、冷戦状態で、いつまた戦争が起こるかわからない仮初の平和が浮かび上がります。
ロイドもヨルも、人が死なないで笑顔で暮らせる社会のために手を汚すという矛盾を抱えつつ、娘のアーニャを守って暮らしています。
魅力③:張り巡らされた謎と伏線
アーニャの超能力は、組織によって人工的に作られたものであることが示唆されています。
そして、途中から飼われた犬のボンドも、未来を予知できる超能力犬で、同様に組織で作られた犬なようです。
ボンドのいた組織<アップル>については、今は、研究者がいて政権崩壊とともになくなったと言われたものが、実は残っているらしいという程度です。それ以上のことはこれからわかっていくのでしょうか。
また、オペレーション対象のデズモンド家も複雑な家庭のようですし、ドノバンの目的も不明です。
今後東西冷戦がどうなるのか?アーニャは世界を救えるのか?わくわく、です。
4.試験の後のダンス
そんなこんなで14巻。
表紙はエレガント先生こと、アーニャたちの担任、ヘンリー・ヘンダーソン先生。
お茶と手紙が1つ、テーブルに置かれています。
アーニャは、星2つ雷2つの状態となって、期末テストに突入しました。テストの成績優秀者には星が、不良者には雷が付けられるとあって、みんな必死でした。
アーニャも得意の古語を、お隣さんに教わりつつ頑張って勉強しました。
結果は、古語で2位、数学ボーダー以下で、星と雷をそれぞれ1つづつ獲得という結果に。。。
デッサンが狂った顔になったロイドでしたが、それでもアーニャの努力を認めて褒めてあげました。
お祝い?のスキーに家族で行って、なぜか頭脳は大人ならぬエスパー状態で解決したフォージャー家。
名門イーデン校は、なんと期末テストの後の休み前にダンスパーティーがあるんだそうです。
ダンスパーティーで、アーニャはダミアンと踊ろうとしますが、照れたダミアンは断ります。
なぜか唐突にダミアンと踊るための女同士の戦いが始まりましたが、潜入していたロイドの助けもあり、アーニャが優勝して、ダミアンと踊ることに。
そこで、アーニャは初めてダミアンに自分が心を読めることを告白しました。
どうしたアーニャ?!
ダンスパーティーでは、ベッキーの付き人のマーサと、ヘンダーソン先生もダンスをして話題になりました。
仲を聞かれたヘンダーソンは、「古い友人」のマーサとの出会いを回想します。
この巻の後半は、ヘンリーとマーサの回想の話になっています。
イーデン校の先輩後輩として微笑ましい交流を続けてきた2人。
マーサはヘンリーのことが好きでしたがなかなか告白できません。ヘンリーはマーサと過ごす時間が心地良いと感じていますが、青い理想に頭がいっぱいのうえ、鈍い性格もあってそこまで気づきません。
一度はヘンリーの卒業で離れた二人でしたが、ヘンリーはヘンダーソン先生となって、イーデン校に赴任し、高校生になったマーサと再度交流が始まりました。
しかし、戦争が二人の運命を引き裂いていきます。
バレエの特待生だったマーサでしたが、バレエ団が爆撃により壊滅し、夢をたたれてしまいました。婦人隊に参加しようとするマーサにヘンリーは怒り、喧嘩になる二人。
決心したマーサは、自分の卒業パーティーでダンスにヘンリーを誘って踊り、仲直りして告白しようとしますが、無情にも空襲警報で中断されてしまいます。
告白できずに卒業したマーサは、軍からヘンリーと文通を始めました。
東に向けられる銃口を減らすため戦うことを決意したマーサは前線に送られることに。
最後の手紙で、ヘンリーに会いたいと告げたマーサ。
ヘンリーもやっと自分の気持ちに気づいたのですが、遅かった、遅すぎました。
今までフォージャー家中心の物語から、急に昔の悲恋話になりました。
でも、悲しく、感動的な話でした。
戦争は愚かだと皆わかっているのに、どうしてやめられないのだろうと思うほどに。