カップラーメンを待つくらいの間でわかる音楽講座 ニュアンスを大切にしよう b labo vol.76
ニュアンスを大切にしよう
「田んぼの畦道を歩いている感じでお願いします」
ギタリストの芳野藤丸さんがかつてレコーディングの際にディレクターから頼まれて一番困ったエピソードだそうです。
結局カントリー風で弾くことで決着したらしいですが、無茶な注文の仕方が笑える。しかしディレクターさんはニュアンスを重視した結果こういう言い方になってしまったのだろう。
カントリーといっても国や時代など千差万別のイメージがある。
古き良き日本の田園風景のニュアンス、これが田んぼの畦道という言葉に変換されてしまった。
藤丸さんは極端な例ですが、音楽には必ずニュアンスが介在していてとても重要な役割を担っています。
色彩・明るさ・温度・空間・時代・感情・におい・・・
これらはすべてイメージであり主観にすぎません。そして正解というものもありません。でも曲として出来上がったときには、何かしらのメッセージがあり、そのメッセージに共感したり感情移入するものです。
実際にレコーディングやバンドリハーサルでは変な会話がよく交わされる。
「もうすこしモッチャリとして」
「ここはまったりと」
「もっといなたい感じで」
まるで食レポのような表現ですが、こんなこと言われたことがあるでしょう。さきほども言いましたが、こんなものに正解なんてありません。
ただ普段音楽を聴いたりやるときに、ニュアンスをどれだけ感じているか?が大切なのです。たとえば古き南部のブルースをよく理解している人であれば「いなたい」の示す意味はすぐにわかると思います。
このようにニュアンスというものを大切にして、音楽を聴いて練習するように心がけましょう。ただスケールを弾く、リズムの反復をやるなどだけでは、上手いだけで味気のない音楽になるかもしれませんから。