舞台「プロデューサーズ」後編-濵田さんと神山さんの歌と演技が本当に素敵だった話
舞台「プロデューサーズ」の感想の続き。
ここでは、濵田さんと神山さんのそれぞれの感想を書きたいと思う。
※ネタバレを含む
※あくまで個人の感想なので、悪しからず。
前回の感想はこちら
舞台「プロデューサーズ」前編-最高に楽しくて笑えるミュージカル|かんみん
濵田さんと神山さんの舞台を観たのはこれが初めてだったけど、二人とも歌もそうだけどなにより演技が上手かった。今回って演目的には演技パートの比重も高いし結構重要だったからかもしれない。
二人の演技はそれぞれ地上波やWOWOW・NETFLIXのドラマで観たことがあって「普通に演技が上手い人だな」とは思っていたんだけど、舞台で観るとより感じた。
濵田さん@マックスの演技について
前編の感想ではざっくりとこんな感じ。
マックスは下ネタをたくさん言うが決して阿呆ではなく、彼の行動には彼なりの策略があって「胡散臭くてずる賢い色男」だと思っている。
その一方で、その行動や決断がはたから見たら突飛なせいで「他人からしたら変なことを考えている面白い男」でもある。この「胡散臭さ」と「面白さ」のバランスをどう演じるのだろうと思っていたんだけど、濵田さん自身の「愛らしさ」と合わさって「悪いことを色々やってるけどどこか憎めないマックス」を魅力的に演じていたと思う。
序盤から感じる「胡散臭さ」
老婦人に枕営業をしてお金を集めたり、レオに「一緒にプロデューサーになろう」と口説き落としたり粉飾決算をさせたり、数多の変人たちに適当なことを言って自分のやりたいミュージカルに協力させたり……序盤からずっとあくどいことをしているマックスだけど、それらの行動はとどのつまり自分の利益のためだ。ただ、それらの行動を「私は嘘をついていないし、協力することは君にとってもいいこと」と相手に思わせるような謎の説得力もあり、どこまでが本心でどこまでが建前かが分からない胡散臭さを感じた。
序盤のレオとの出会いも、最初「また変人が来やがった」「とりあえず宥めておこう」ぐらいの感じなのに、レオが儲かる法則に気づいて「あ、こいつは使える奴だ」と分かった後からの変わり身の早さと顔がちょっと綻んでる感じとかめっちゃ胡散臭かった(褒めてます)
あと、マックスがめちゃくちゃ変人達の扱いが上手いのもそう。とりあえず相手の言うことを肯定して無駄に相手の感情を逆撫でしない、相手に調子を乗らせてから自分の言いたいことを言う……変人達のあしらい方が上手くて慣れてる感があって、どこかのシーンで「俺の周りにはいつも変人しかいない」みたいな台詞の説得力がマシマシだった。
老婦人を誑し込む色気
今回のマックス役のもう一つ重要な「色男っぷり」だけど、今回は役的に50代ということもあって「大人の男」感を強めに出していたかなと思った。濵田さんってananの時とかにめっちゃ色気を出せる人なので信頼していたんだけど、良かった。たぶん全濵田担が好きだと思う。
ワインレッドのバスローブとか、赤ジャケットスーツとか、留置場のモノクロ衣装……衣装としてそもそも色気を出しやすいようにしている要素もあったけど、普通に濵田さん自身の色気が強かった。
前述の胡散臭い表情が多いのもあるし、時折けしからん腰とか手の動きをちょこちょこしているし、ウーラのことはスケベな顔して見てたりするし。
(留置場のシーンとか、衣装の感じとか気だるい感じとかも相まって、場面カットでananにそのまま使えそうなところあった)
滲み出るコメディアンっぷりの上手さ
マックス、濵田さんの「根っからの悪人じゃなさそう感」と混ざって「おもしろおかしい人」感が強くなっている感じはした。
隣にいるレオがめっちゃ表情が変わるのでそっちに目がいきがちだけど、マックスも結構表情が変わるし、マックスが全力でふざけられるシーンだとだいぶ変なことしてる(資金集めについてレオに「プロデューサーはいくら出すの?」って聞かれた後の驚愕するところとか、ソファーの周りや上をのたうち回ってたりするよね笑)
マックスは話を進めて行かなきゃいけない立ち位置だからコメディに全振りできる感じでもないけど、ちょっとした台詞の言い回しとか間合いがおもしろくてコメディ演技の上手さをめちゃくちゃ感じた。さすが。
留置場のシーンでのコミカルさとシリアスさの塩梅に圧倒
マックスの見せ場といえば、二幕の留置場のシーンだろう。警察に捕まって留置場に入れられた後、レオから音沙汰がなくて「俺を助ける方法を探しているんだ」と期待していたマックスが、レオからの浮かれた手紙で「裏切られた」と気づいてどこで間違えたのかと振り返るシーンだ。
まず、歌に始まる前のレオへの「怒り」と「憎しみ」が徐々に溜まっていく時の演技(声と目力)が良かった。負の感情の見せ方が上手い。喜劇が上手い人はシリアスも上手いというが、本当にそう感じる。これまでの胡散臭さとおもしろおかしさがあったからこそ「レオに裏切られた」と憤慨するさまが映えると思うので、それまでの演技を含めて良かったと思う。
そして、そこからマックスの独唱の「BETRAYED」が始まる。一幕から順番に振り返るナンバーだが、歌がめちゃくちゃ早口で難しいうえ、動きや表情がコロコロ変わる。そのコミカルな歌と動きで観客を笑わせつつ、その根底には「裏切ったレオへの憎しみ」がなければいけない。この曲が本作で一番難しい歌だろうと思うが、バチっとこなして笑いをさらっていく濵田さんは圧巻だった。歌だけでも相当ハードだと思うが、さらに曲の合間に毎度違うアドリブを入れてくるメンタルの強さも感じる。
(このアドリブはマックスというより「濵ちゃん」っていう感じがするのはファンサービスかな?と思いながら見てる)
そして曲中のふとした間に見せる眼光の鋭さで、レオに裏切られた怒りを表現しているのもゾクッと来た。最後の一言の声と表情も凄まじくて、濵田さんのシリアス演技うっま……って震えた。
これまでのお芝居の遍歴を調べると「いい人でおもしろい」と「ちょっと悪が絡む」感じが多いのは、このコメディとシリアスのバランスの上手さを評価されているのかもな、と思う。演技が上手い。
神山さん@レオの演技について
前編の感想ではざっくりとこんな感じ。
観劇前にチラッと見たSNSでの感想が「濵ちゃんがエロい」「神ちゃんがかわいい」とかが多かったんだけど、正直「濵ちゃんの色気は分かるけど、神ちゃんのかわいいはオタクの甘やかしでしょ?」とナメてた。
本気で謝ります、めっちゃかわいかった。あと総合的に上手いよね。
あと、レオは作品中に一番「変わる」役だけど、その変化の見せ方も良かったなと思う。
全力で演じる「かわいい」の威力
一幕の序盤、数分のマックスとレオのやり取りの時点で「あのかわいいって感想はオタクの甘やかしじゃなくて神山さんの演技が凄いのか」って気づかされた。コロコロと表情も変わるし、動きも大きくてぴょこぴょこしてるし、声も少年声っぽいというか高めの声だし、高身長のキャスト陣のなかでちょっと膝を曲げてることも多かったり……かわいい方向に全力で振ってる演技だなと。だいぶ変人でもあるけど。
きっと「かわいい」に全力でためらいがなく、変にあざとくならないのは神山さんの強みなんだろう。ここまで「かわいい」に振ってたら一歩間違えると「いい年の男がかわいこぶってイタい」にもなりかねないのに、普通に「かわいい」としか思わせないのは演技力の高さと才能だと思う。
この「かわいらしさ」の威力を実感したのが、マックスとレオの出会いのシーン。レオがいつも持っているブランケットをマックスに取られ、パニックを起こした時に「返して!」って叫びながらマックスに両手を伸ばすところがあるのだが、その時に観客から「はわぁ」みたいな声というか吐息?が漏れていた。この声って、よくある「衝撃映像○○連発!」みたいな番組のなかで、赤ちゃんとか小型犬とか猫ちゃんがちょっと危ない目に遭いそうになった時の「わぁぁ」の小さい版みたいな感じだと思う。
身長170cm・30代前半の成人男性がブランケットを取られただけなのに。
あの瞬間って観客の庇護欲というか母性が溢れた瞬間だと思っていて、観客にレオがどう見えているのかを実感するとともに、舞台が始まって10分も経ってないうちに観客の庇護欲と母性をあそこまで引き出す神山さんの「かわいい」って魔性だよなとも思う。元々観客にWEST.のファンが多いとは思っているけど、それにしても観客の反応がなんかおかしくて、あれは「かわいい」を耳から感じた珍しい体験だなと思った。
(私は映画・ドラマ・舞台とかは本人のキャラクターを完全に切り離して役として観たい人間なので、ファンとして観ているような反応ってちょっと引いてしまうんだけど、あれはなんか毛色が違う感じがした)
あと、これは少し観劇時の苦言になるが、言わせて欲しい。
一幕とか特にレオがかわいらしいシーンが多いから「かわいい」と思うのは分かる。ただ、後方でいちいち「かわいい」って呟く人がいて「いちいち呟くなよ」と結構冷めたから絶対やめて欲しい。どういう人かは見ていないから、誰かのファンなのか単に舞台を観劇し慣れていないだけの人かは分からないけど。頑張ってこらえて欲しい。
「変化」の場面での声の演技の上手さ
レオ、最初は前述のとおり「小動物か赤ちゃん」って感じなんだけど、プロデューサーになる夢へ動き出すとともに少しずつ「大人の男」へと階段を昇っていく感じがある変化が必要な役だった。これをどう見せるのかは難しかったと思うんだけど、歌とか演技でその変化を見せているのは上手かったなと思う。
印象的だったのは、神山さんって声の切り替えとか演技がサラッと上手い人だよなと思った。声質的に声優に向いてそうなのもあるけども。
一幕序盤の「WE CAN DO IT」では抑えめに、プロデューサーになることを夢見て歌う「I WANNA BE A PRODUCER」では声高らかに、二幕のウーラとの「THAT FACE !」では恋する男心を、裁判所の「'TIL HIM」では成長した姿を……みたいな感じで歌い分けてるのとかも、歌での演技の上手さを感じた。
台詞での声の演技で印象的だったのが、「I WANNA BE A PRODUCER」の直後のシーン。暗転後でレオが「マックス」って呼ぶところから始まるんだけど、これまで「ビアリストック」って呼んでいた呼び方が変わる=マックスとの友情が深まった証の台詞だと思っている。ただ、ここに友情が深まったことの補足は一切ないので「マックス」だけでそれを観客に悟らせないといけないんだけど、声が完全に気を許してて「上手いなぁ」と思った。
表情の演技も分かりやすくて。前述の「かわいい」に振ったコロコロ変わる表情もそうだし、二幕の「THAT FACE !」でウーラからのアプローチを受けてウーラへ向ける表情が「初心な少年」から「男」に変わる感じとかも良かったな。
安定のダンスの上手さ
レオって役的にはそこまでダンスが上手くなくても良さそう感はあるけど、神山さんがダンススキル鬼高いから普通に上手かったよね。
(たぶんレオに合わせた踊り方していると思うんだけど、身のこなし方というか足さばきが上手い人のそれで「やっぱり上手いな」って思ってた)
「THAT FACE !」でレオとウーラが二人で踊っているところがあるんだけど、あそこのステップとか二人とも結構ハッキリ踊っていて綺麗だったよね。二人とも息が合っててダンスが上手い人だなと思った。
普段見ているようなダンスなら上手さが分かる方なんだけど、今回のジャンルはあまり詳しくないから「ここがすごい」的なことは言えない。ただ、普通に見ていて綺麗だったってことはたぶん上手いんじゃないかと思う。
観劇前の心配を吹き飛ばした歌声
濵田さんと神山さんの声質
少しマニアックな話になるけど許して欲しい。
持論だが、声質は「声の輪郭」と「癖」と「声圧」でタイプが分かれると思っている。「声の輪郭」は声と他の音との境目、「癖」は質感の癖の強さ、「声圧」は声自体の迫力、みたいなものだと思って欲しい。
ミュージカルで主に活躍されているような人や「パワフルボイス」と称される人は、声の輪郭ははっきりしていて、声の癖があり、声圧が強い人が多い印象がある。特に、ミュージカルだと腹から声を響かせる独特の発声と相まってその声質が生きるっていうのもあると思う。
基本的に歌手だと声の輪郭がはっきりして特徴的な声の癖がある(声圧は人や歌い方による)タイプが多いんだけど、濵田さんと神山さんはちょっと違う珍しいタイプだと思っている。濵田さんは声の輪郭も癖もマイルドで、神山さんはハリがあるクリアな声。どっちの声質も素敵なものなんだけど、歌だと聞き流されたり下手に聴こえやすいタイプではあると思うので、歌い方とかテクニックとかでその声質の特性をカバーしている印象があった。
(細かい話をするとめちゃくちゃ長くなるので、WEST.の声質の話は映画「W」の感想と合わせてしたいなと思う。グループ歌唱でのバランスの良さとかは声フェチとしてとても興味深いので)
二人とも前述した「声質的にミュージカルで化けやすい声」とはだいぶ違うので、歌い方をがっつり変えるんだろうと思いつつも楽しみな反面心配もあった。
観劇時に感じた濵田さんと神山さんの歌い方の違い
実際聴いてみたら「なるほどそうきたか」と思いつつ、二人の考え方の違いを感じてニヤッとした。普段の歌い方とは結構分かりやすく違ったと思う。
濵田さんは普段の歌い方×ミュージカルに寄せたような歌い方で「濵田さんらしさ」を生かした感じにしていた。たぶん完全にミュージカルの歌い方にすることもできたと思うけど、声質的にそれだと声負けしやすいし表現のバリエーションが出しづらくなるから変えたのかな?と思った。
(この歌い方や声の微調整ができるのが濵田さんの歌の上手さだよなと思う)
高低差が結構あるうえにテンポが速い難曲「BETRAYED」でも音がブレない安定感やテクニックさすがの歌唱力の高さを感じたし、歌の表現は濵田さんの強みがすごく生きているなと思った。
一方、神山さんは完全にミュージカルの歌い方に変えており、普段感じる「神山さんっぽさ」はほぼ消してたと思う。声のクリアさとハリがミュージカルの発声で生きて「太めの声なのに透明感がある」っていう少し珍しい声になってて正直ゾクッとした。正直「あの声は上手いこといったら化けそう」とは思っていたけど、想像以上に劇場に声が響いていたのも驚いたし、歌詞が聞こえやすかったのは滑舌の良さとクリアな声の勝利を感じた。ミュージカル独特の声を伸ばした後のビブラートの上手さとかも相まって、綺麗ないい声だった。音程も安定してて上手かった。
あと、濵田さんと神山さん二人での歌唱は本当に綺麗だなと思った。
濵田さんのマイルドな声が神山さんのクリアな声と馴染んで、歌声の安定感と透明感を増している印象を受けた。歌声の相性がいいんだろうなと思う。
WEST.の時でもよく思うけど、それぞれが歌い方を変えたミュージカルでも相性がいいと思ったので声質的にも合っているんだと思う。
プロデューサーズのPV映像が公開されていたのでリンクを貼っておこうと思う。
濵田さんと神山さんの息の合った演技
ここまでですでに長くなりすぎたので簡単にしか書かないけど……本当に良かった。
マックスとレオって一幕の途中からは「年の離れた仲の良い友人」って感じなんだけど、ちょっとしたことがあったら互いに顔を見合わせる感じとか、リアクションがシンクロしちゃうところとか、そういう演技がなんだか微笑ましくて。途中で言い合いするシーンがあるんだけど、兄弟喧嘩を見ている親みたいな「またなんかやってるよー」みたいなノリで観てた。本当仲いい、マックスとレオ。
裁判所のシーンで互いが唯一無二の親友だと気付く場面があるけど、それまでのシーンの数々で仲良しこよしなのをめちゃくちゃ感じているから、説得力があった。頭コテンってする二人、めっちゃ愛おしい。
あとこれは若干ファン目線になっちゃうけど、濵田さんも神山さんも本当に舞台を楽しんでいるんだろうなって言うのがめちゃくちゃ伝わってきて嬉しかった。WEST.10周年でグループとしても死ぬほど忙しい中で同じ舞台の主役を一緒にやって濃密な時間を過ごして……って二人のなかで今まで以上に深い絆が出来たんだろうなと思うと、マックスとレオの最後のシルエットにも重なってめちゃくちゃジーンとした。
最後に
めちゃくちゃ長くなって申し訳ないけど最後に。
濵田さんと神山さんに興味持った方向けにおすすめの曲を載せとこうと思う。他にもいい曲はいっぱいあるのでWESTubeで色々聴いてみて欲しい。
舞台との歌い方の違いとかギャップも感じられると思う(神山さんはサングラス+派手髪になるので「誰?」レベルになりそう)
あじわい(濵田さん主演ドラマ「パティスリーMON」エンディング曲)
FATE(神山さん主演ドラマ「白暮のクロニクル」主題歌)※MVとライブ両方あるのでリンク載せときます。