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舞台「DEATH TAKES A HOLIDAY」-小瀧さんの歌と演技に衝撃を受けた3時間

10月中旬、舞台「DEATH TAKES A HOLIDAY」(以下、デスホリと略称)を観劇した。WEST.の小瀧望さんが主演を務めたミュージカルである。随分遅くなってしまったが、改めて感想を記したいと思う。
小瀧さんの感想がメインになっている点と、ネタバレは含むので注意。
※あくまで個人の感想なので、気になる点があったとしても悪しからず。

作品詳細は公式ページ参照
『DEATH TAKES A HOLIDAY』|梅田芸術劇場


観劇前までの印象

WEST.の歌唱力の高さはファンとして知っている。近年の歌番組ではロックテイストの曲を披露する機会が多いが、ダンスナンバー・EDM・バラード・トンチキソング……と幅広いジャンルを歌いこなせる人達だ。

メンバーそれぞれで「この人歌うまいな」と思うポイントが違うのだが、小瀧さんの場合は「声量」と「声圧」だと思っている。歌声の「強さ」とも言い換えられるが、ミュージカルで映える歌声だと想像しやすい。
それに演技力も舞台「エレファント・マン」で高評価を受けており、読売演劇大賞の優秀男優賞と杉村春子賞をW受賞している。

そのため、ミュージカルの主演をすると聞いた時、全く不安はなかった。
「死神が二日間の休暇を過ごす」というストーリーだけはイメージがつかなかったが、舞台の開幕と観劇を楽しみしていた。

そして実際に9月下旬からデスホリが開幕すると、想像以上に絶賛の嵐だった。
観劇前にネタバレを見たくなかったので流し見していたが、「小瀧さんが素晴らしい」「普段の歌声とは違う」「ミュージカル界の新星プリンス」……そういった言葉がSNS上で並んでいた。
(実際、そういった声は大千穐楽までずっと増え続けていたと思う)

観劇前のハードルを上げすぎるのは良くないと思っていたが、その反響の大きさに期待を持ちながら、観劇当日を迎えた。

観劇後の感想

想像以上に正統派のロマンスラブストーリーであり、観劇前の高くなったハードルを越えるものだった。
第一次世界大戦後の1920年代初頭、ランベルティ公爵一家の一人娘・グラツィアをつい助けてしまった死神が、二日間の休暇のなかで「サーキ王子」として過ごすうちに人間の感情を知っていく話。誰かを愛することの尊さ、生きたいと願う気持ち、そしてグラツィアへの愛……そんな感情の機微を丁寧に描いていた話だった。時折クスッと微笑むようなシーンがありつつ、何度か思わず目から涙が落ちるような素敵な物語だった。

小瀧さんの歌と演技の衝撃

開幕早々、時代背景のナレーションが始まるが、この時点で衝撃だった。
低音で朗々とした心地いい声で、普段とは別物の「死神」の声だった。

死神としての歌唱シーンもあるのだが、低音のテノールが舞台に響いており、声の綺麗さと表現力には驚かされた。そして、やはり歌声の強さが舞台に映える印象を抱いた。
普段のWEST.としては中高音パートが多い分、とても新鮮だったのもある。

そして死神はサーキ王子の身体を借りて二日間の休暇を過ごすのだが、ここからは「サーキ王子の身体を借りた死神」となる。この役が相当難しいと思った点は、ここからは冒頭の死神と明確に演じ分けなければならない点だ。
しかも完全に別人になればいいわけでもなく、身体がサーキ王子になっただけで中身は死神のままなのだ。サーキ王子ではありつつも、死神らしさ・普通の人間ではない異質感は残っていなければならないのだ。

小瀧さんはこの絶妙なバランスが求められる役をすごく丁寧に演じていたと思った。サーキ王子としての華やかなルックスと爽やかな声を持ちつつも、どこか人間離れしていて掴みどころがない。そしてふとした表情に影を感じる。グラツィアが魅力的に感じたのも納得するものだった。

そして、特に印象的だったところが二つある。

一つ目は、一幕の「ロベルトの眼」だ。
この曲はランベルティ公爵一家の息子・ロベルトが戦争で亡くなった時のことやその時に感じた「死神」の恐ろしさを、親友であるエリックが歌う。エリック役の東さんの歌声の迫力と戦争の悲哀の表現が凄まじい名曲だった。この時、小瀧さんは歌わずに踊ったり歩いたりしているのみなのだが、その目の鋭さと「この人間はずっと何を言っているんだ?」とでも思っていそうな表情はゾッとさせられた。

二つ目は、二幕の「人として、生きて」だ。
休暇のタイムリミットが迫る中、死神はグラツィアへの愛を感じたり人間と同じように「もっとこの世界を生きたい」と思ってしまっていることを憂う。小瀧くんは黒のタキシードを着て、一本の薔薇を握りながら歌う。
涙を滲ませて声を震わせつつ、ブレずに歌い続ける姿は美しくもあり、涙を誘うものだった。

主演とヒロインを際立たせる演出

舞台全体を通して、どこか「宝塚歌劇団」っぽさを感じていた。
私自身がタカラヅカに詳しい訳ではないが、主演の男役やヒロインを美しく魅せることへのこだわりは相当強いだろうと推察している。
死神とグラツィアの身長差や視点の差を意識させる階段のセットの多さ、死神とグラツィアを際立たせるライトアップの美しさ、演者のスタイルの良さを見事に際立たせる衣装が印象的だった。

なかでも、タカラヅカっぽさを覚えたのは宙船のセットだ。
この宙船は、最初に死神が登場するシーン、最後に休暇を終えた死神とグラツィアが天へと旅立とうとするシーンで登場する。最後に二人が宙船に乗っているところを観た時、その美しさと大円談感に思わず唸ってしまった。

正直、このストーリーはハッピーエンドではない。
死神とグラツィアにとっては二人でずっと一緒にいられるハッピーエンドではあるが、ランベルティ公爵一家の面々にとっては悲しい結末だ。
特に両親であるヴィットリオとステファニーにとっては、戦争で息子を失った傷が癒えていないまま娘も奪われるのだ。悲劇以外の何物でもない。

それでもこの最後のシーンを観た時に「良かった」と死神とグラツィアの幸福を願うような気持ちを抱かせるのは、あの最後のシーンでの二人の美しさが大きな役割を担っていただろう。

最後に

観劇時、作品に集中するために演じている本人の事情(多忙さ・本人のキャラクター)はあえて鑑みないようにするが、少し触れさせて欲しい。
デスホリ制作発表から始まる直前(6月中旬から9月下旬)まで、WEST.はWOWOW独占ライブ撮影・ドームツアー・フェス4本・DREAM ISLAND2024・新曲発売に伴う歌番組……と超多忙であった。
(実際、小瀧さん自身が「今までで一番忙しい」と言っていたほどだ)
そのなかで、ここまでのクオリティーに持っていった小瀧さんのプロ意識の高さと根性には脱帽している。そして、舞台期間中も毎日Instagramのストーリーズを更新していたサービス精神も素晴らしかった。

小瀧さんのインスタは下記↓
Nozomu Kotaki / 小瀧望(@nozomukotaki_730) • Instagram写真と動画

※補足
WEST.は今年10周年を迎え、YouTube(通称:WESTube)登録者数100万人を目指し、年間100本の動画投稿を行っている。
パフォーマンス動画もさることながら、企画動画では舞台上の彼からは想像できないほど面白い人なので見て欲しい。あわよくばチャンネル登録も。

おすすめの動画として「跳び箱王」を。どれだけ跳び箱を高く飛べるか挑戦しているのだが、全員がボケ倒していたりWEST.の団体芸を楽しめる。

他にも料理や大食い企画、ボードゲーム、各メンバーのソロ企画もある。
(小瀧くんは「のんべぇ散歩」として居酒屋を飲み歩く企画)

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