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【多職種連携の現状と課題】ノルウェー高齢リハの視点から

毎週の定例会議を開けば「多職種連携できている」と言えるのか?

はじめに

ノルウェーの回復期リハ施設で働いていると、「多職種連携」という言葉を毎日というほど職場やセミナーで耳にします。ノルウェー健康局のガイドラインにも法律にさえも、多職種連携の重要性と医療者への義務が示されています。しかし、実際には医療従事者が多職種連携を難しいと感じています。

今回は、そのへんの深堀を文献を用いながら少ししていきたいなぁと思います。・・・初めに言っておきます、私もまだまだ多職種連携を円滑にするためのとっておきの答えが見つかってません!💦でも多分「答えがない」こと自体が今の現状を表していて、だからこそ多職種連携に関する論文や記事がたくさんあって、だからこそ、諦めずに解決法を導き出していく必要があるのだと思います。

きっと、世界のどこかのあなたも、共感できる部分があるのではないかなぁと思って記事にしました。長くなると思いますが、お暇なときにぜひ読んであげてください。コメント大募集です♪


多職種連携は医療者としての義務である

ノルウェー健康局(2017年11月)は、「複雑なニーズを持つ人々(フレイル高齢者を含む)のフォローアップに関する国家ガイドライン」の中で「多職種連携」という用語を使用しています。ここでは、多職種連携が包括的なケアを確保するための基本的な方法論および構造化された作業形態として記述されています。

連携の義務はさまざまな法律で規定されています。医療・介護サービス法と専門医療法の両方では、協力と連携の義務が責任と業務分担に関する章で独自の法律規定として組み込まれています(医療・介護サービス法、2011年、§ 3-4; 専門医療法、1999年、§ 2-1e)。一方、医療従事者法では、協力と連携の義務が第2章、適正性の要件に関する章に組み込まれています(医療従事者法、1999年、§4)。

また、この作業形態に関する共通の理解と知識を確保することの重要性も強調されています。これは、職種、レベル、セクターを超えた対話と共通の意思決定ポイントを前提としており、患者および家族との連携を含みます(ノルウェー健康局、2017年11月)。

でも実際は・・・?

・・・と、ここまで記述すると理想的に聞こえますが、あらゆる文献研究によると、医療従事者は実際には多職種連携を実現することが難しいと感じています。以下では、フレイル高齢者患者へのリハビリを行う中で多職種連携についてノルウェーの医療従事者がどのように感じているかについて議論していきます。

多職種連携の弱点 - まだ確立されていないものから学ぶべきこと

多職種連携については、さまざまな文献で、医療従事者間の協力体制が内部でも階層を超えてもうまく確立されていないことが多く、実際に協力を実現するのが難しいということが示されています(Kvæl, 2021; Johannessen & Steihaug, 2019; Johannessen & Steihaug, 2013; Dale & Hvalvik, 2013)。

Iversen & Hauksdottir (2020) によると、良好な協力の前提は、他者の価値観に関心を持ち、違いと相互依存を認識し、独立性を保ちつつ互いの専門知識に余地を与えることです (s.105 & s.152)。このため、医療従事者間でこれらの前提についての理解を深め、自分自身の影響力を認識することが重要です。

多職種連携は、高齢患者の包括的なケアを確保するための基本的な方法論および構造化された作業形態として言及されています (ノルウェー健康局, 2017, 11月)。しかし、ノルウェー医療従事者の中では、自分たちの仕事が認められない、または専門的な統合性が欠けていると感じていると報告しています。さらに、一部の専門職グループにおいては専門的なコミュニティから排除されていると感じています (Johannessen & Steihaug, 2013; Johannessen & Steihaug, 2019; Kvæl, 2021; Dale & Hvalvik, 2013)。

存在しない多職種連携の具体的なルーティンとその影響

連携体制のルーティンが確立されていなかったり、そのような体制を確立するための具体的な指針がない場合、組織・団体ごとに異なる実践が行われがちです。特にノルウェーの場合は大小さまざまなコミューネ・自治体で構成されており、それぞれのニーズも異なるため、協力ルーティンは状況に応じて適応されるべきであり、そのためにバリエーションが生じることは自然です。

組織構造に極端なバリエーションがある医療業界

医療従事者が働く場所によって異なるルーティン文化に適応する必要があるのは当然かもしれませんが、特にフレイル高齢者の複雑なニーズに関しては、具体的なルーティンが文書化されていない場合、何が必要とされるのかを理解するのは困難になります。さらに、あらゆる団体・職種と協力しなければならず、それぞれが独自の実践を持っていることもあります。Ramsdal (2019) は、「組織構造に極端なバリエーションがあるということが医療業界の特徴」と述べています (s.99)。

多職種連携成功へのカギは医療者へ人材・時間・余地を与え、そして多職種連携ルーティン論をシステムレベルで確立すること

多職種連携のルーティンを確立するための指針がないと、結果として個々のリーダーや医療従事者の能力に依存し、うまくいくかいかないかは、偶然に基づくことになります。Ramsdal (2019) によると、多職種チームが割り当てられた課題に集中できるように、資源、時間、および余地を与える必要があると指摘しています (s.115)。ノルウェー健康局 (2017, 11月) も、良好な多職種連携の中心的な前提条件の一つが、多職種連携の方法論確立に時間を割くことであると確認しています。

多職種連携失敗でもたらす医療従事者への悪影響も考えるべき

高い業務負荷と悪い職場環境は、時間が経つにつれて病欠や仕事での燃え尽き症候群を引き起こす可能性があり、これは医療業界だけなく多くの業界で知られている問題です。仕事の包括性、専門的および社会的な両面での重要性は、欠勤と出勤に影響を与えます (Kvam, 2020)。良好な職場環境と意見が言いあえる環境は、協力と良好な連携の重要な条件とされています (Johannessen & Steihaug, 2019; Johannessen & Steihaug, 2013; Kvæl, 2021; Dale & Hvalvik, 2013)。これには、実施すべきタスクに対する安心感、明確な役割の理解、そして明確なリーダーシップも含まれます。良好な組織およびリーダーシップ要因を備えた概念フレームワークの開発は、連携と多職種連携の実施にとって重要であると考えられます。

参考文献

  • Kvæl, L. A. H. (2021). Helhetlige pasientforløp: brukernes erfaringer med pasientdeltakelse og personsentrert omsorg i kommunal korttidsrehabilitering i overgangen mellom sykehus og hjem. Tidsskrift for omsorgsforskning, 7(2), 29-43.

  • Johannessen, A., & Steihaug, S. (2019). Brukermedvirkning i helsetjeneste for eldre- en kvalitativ studie av to kommunale akutte døgnenheter og samarbeidende kommuner. Tidsskrift for omsorgsforskning, 8(1), 1-14.

  • Johannessen, A., & Steihaug, S. (2013). The significance of professional roles in collaboration on patients’ transitions from hospital to home via an intermediate unit. Scandinavian journal of healthcare science, 28(2), 364-372.

  • Dale, B., & Hvalvik, S. (2013). Administration of care to older patients in transition from hospital to home care services: home nursing leaders' experiences. Journal of Multidisciplinary Healthcare, 6, 379-389.

  • Iversen, A., & Hauksdottir, N. (2020). Tverrprofesjonell samhandling og teamarbeid. Kjernekompetanse for fremtidens helse- og velferdstjenester. Gyldendal.

  • Helsedirektoratet. (2017, 21. november). Oppfølging av personer med store og sammensatte behov.

  • Ramsdal, H. (2019). Tverrfaglig team- Hvordan lykkes? C. Bjørkquist & M.J. Fineide (red.), Organisasjonsperspektiv på samordning av helse og velferdstjenester. (Kapittel 4, s.95-118). Cappelen Damm Akademisk.

  • Kvam, M. (2020, 30. april). Utbrenthet. Norsk helseinformatikk (NHI). Hentet fra NHI.

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