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ノルウェーの急性期精神科病棟で実習したときの話~【痛み】の知識を深めたくなったきっかけ~
実習先で出会ったスーパーバイザーはNorwegian psychomotor physiotherapist。
皆さんはPsychomotor physiotherapyという言葉は聞いたことがありますか?
Psychomotor(精神運動) Physical Therapyは、Body awareness(身体意識・自らの身体に出会うこと、身体に気づくこと)とPhysical activity(身体活動)を用いたアプローチです。これはスカンジナビア諸国で普及していて、痛みや心身症(Psychosomatic disorders)の緩和を助けるために確立されました。また、Norwegian Psychomotor Physiotherapy, NPMPとしても知られています。NPMPは、理学療法士のアーデル・ビューリョー=ハンセン(1906–2001)と精神科医のトリュグヴェ・ブラートイ(1904–1953)によって、1940年代後半に形成されました。
精神疾患やトラウマを抱える患者さんの多くは、からだの痛みを訴える人もたくさんいて、当時PT学生だったわたしは、ただ立ち尽くして一体何をどうアプローチしていけばいいのか分からなかったです。
こころの痛みを抱える人は、身体のどこかに痛みや不調を感じる人が圧倒的に多くって。今まで学校で学んだROM検査や筋力検査をしてアプローチをしても痛みが一向に改善しない。。。そもそも、担当した方々は以前からあらゆる理学療法のアプローチを受けたことがある人ばかりで、すでに私が評価した関節・筋肉にフォーカスをあてただけの【痛みの理由】からのアプローチは効果を見せなかった人が多かった印象です。
そんななかで私のスーパーバイザーはNPMPの専門資格も取得していて、ひとつひとつ丁寧に彼女なりの検査・評価方法を指導してくれました。
彼女はいつも私にこう指導してくれました。
こころとからだは切り離せすことはできないんだよ。その人の人生そのものが、からだに書き込まれているから、セラピストは患者さんがその人生に対してどういう反応パターンを現しているか、コトバとカラダを通してその人の人生の物語について理解していかないと。
私たちが体験するからだの痛み、疲労、不快感、調整の難しさなどのからだに起きる現象を、セラピストは患者さんと一緒に探求しそして時には挑戦し、患者さんが自分自身をより良くケアできるような出発点とプロセスを創り出る努力するお手伝いをする。
この人のことが好きすぎて尊敬しすぎていつもメモを取りまくっていました。笑
彼女は個別セッションとは他に患者さんに対して教育(ミニセミナー)も実施した。なんで教育も治療の一環なのかと尋ねたら「知識は力なりだから(Because knowledge is power)」と答えた。
授業の内容は、まるで医療者向けレベルの、けれど医療用語はなるべく避けた分かりやすいことばで説明されていました。
話の内容は主に脳・神経・ニューロンレベルの話で、こころとからだが切り離せないのはなぜなのか、何故じぶんは今不安なのか、心臓がバクバクなっているこの瞬間、からだの神経レベルで何が起こっているのか。患者さんのセルフマネジメントを目的とした内容でした。実習生だった私はどんどんバイザーの専門分野にのめり込んでいきました。
とともに、「痛み」と「中枢神経」の関係性をもっと知りたくなったきっかけでもあります。
資格は取っていませんが(他の専門へ行ったため)、高齢者リハの現場でも、Psychomotor physiotherapyのアプローチ方法は使っています。人生を長く生きた患者さんたちのからだは、とんでもなく心とつながっていることを、実感できる最適な場であると個人的には感じています。
Psychomotor physiotherapyについてもっと知りたい方は、Physiopediaのこちらのリンクから。
Norwegian psychomotor physioterapy (NPMP)については公式専門グループがYoutubeで紹介動画を出しているのでこちらからどうぞ。