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職場での妊娠差別 - 「沈黙」を破る声

以前、LinkedInインフルエンサーなる、キャリアアドバイザーのフレデリックさんが投稿した記事を取り上げたこと、覚えている方もしくは読んでくれた方はいらっしゃるでしょうか?🙇

彼の投稿の内容は、Z世代の声を代表して、現在の働き方やリーダーシップの在り方を問い、疑問を投げかけるものでした。

取り扱いづらいテーマを、ましてはリーダー達が集うLinkedInで投稿した事に対して、勇気がありインパクトがあり、紹介記事を書きました。

前回の投稿記事はこちら。
ノルウェー人LinkedInインフルエンサーが伝えたいメッセージ

今回(2024年12月)は、LinkedInではなく、ノルウェー最大手アフテンポステン紙で彼の名前を見つけまして。「あ、フレデリックさんだ。なんだろう。」

スクロールして読み進めていくと、記事内容は、現代社会における「妊娠女性への職場差別」という問題。

事の始まりは、フレデリックさんがキャリアコーチとして講演会をする中で、信じがたい話を参加者から告白されたことから始まったようです。以下、記事の内容をなるべく簡潔に、まとめてみました。

実際に行われた実態調査

ノルウェーのオスロメトロポリタン大学が2021年に平等・差別オンブズマンから依頼を受けて実施した調査では、驚くべき数字が明らかになりました。

主な調査結果:

- 女性の12%が面接で妊娠予定について質問された

- 妊娠・出産を報告した際、女性の14%、男性の10%が上司から否定的な反応を受けた

- 臨時雇用者の22%が妊娠・育児休暇に関連して契約更新を拒否された

具体的な事例:

- 育児休暇中に職位が変更された

- 妊娠報告に対して上司が「がっかりした」「予想外だった」と発言

衝撃的な事例

フレデリックさんが収集した証言の中で、特に注目すべきは、上司からの「中絶費用を出してあげる」という発言。この発言は、単なる差別を超えて、女性の身体的自己決定権への深刻な侵害であり、精神的虐待とも言える行為。

記事を読んでいたら今まで感じたことのないような感情が溢れかえって、一旦携帯を棚にしまった私。

ジェンダー平等上位のノルウェーが何故?とかそういう怒りとか戸惑いではないんです。上位だから何の問題もない、なんてありえないですし、実際こういう課題は普段からノルウェーではよく現地メディアで取り上げられています。

3児の母として、妊娠、産休、育休を経験した身として、「仕事に穴を開けてしまう」「同僚に迷惑がかかってしまう」「妊婦だからって特別扱いされたくない」「復帰後もバリバリやっていきたい」毎朝毎晩そんなことを思いながら駆け抜けてきました。

誤解を招かないように先に述べておくと、私の雇用主からの協力がなかったため、という事実はありません。むしろ、とても理解のある上司や同僚で、いつも助けてもらえました。私はかなり恵まれている環境にいると思います。

それでも、人の命を預かる医療職。いつもどこか不安な気持ちが拭えなくて。特に第一子妊娠中、まだ何もかもが新しいことだらけ。つわりや日々大きくなるお腹、食べるものの変化、たまにコントロールが難しくなる感情。周りの人からの対応の変化や気遣い。力仕事や立ち仕事を求められる仕事柄、お腹の中のまだ見ぬ子への不安、これ以上動いても大丈夫かな?常にそんな事を考えながら、患者さんの治療もクオリティを下げずに出来るのかの不安。仕事が多忙期真っ只中で、出血したため週の真ん中で病院での検査が必要になり、病院へ行く車中「赤ちゃん死んじゃってたらどうしよう、そうしたら仕事しすぎた自分のせいだ」と不安に襲われ、でもその間も私の仕事の穴埋めをしてくれている同僚のメンタルや負担や健康への不安。

記事を読んでいて、そういう不安の日々の記憶が蘇ってきて、なかなか正常メンタルで読み終えることが出来ませんでした。

だって、フレデリックさんや大学調査で告白してくれた女性たちの当時の心理状態は、私には想像もできないくらいのものだと思うから。職場や就職先からそのような扱いを受けて、どれほどの孤独を味わってしまったんだろう。辛かっただろうな。自分を責めたり、妊娠したことを後悔したりしたのかな。ただでさえ、妊娠中は身体面だけでなく精神面も不安定になりやすくなるのに。

記事の中では妊娠中のストレスについても医学的観点から数点述べられていました。

医学的観点からの考察

妊娠期間中のストレスが母子に及ぼす影響については、数多くの研究で指摘されています。職場でのネガティブな経験は、以下のリスクを高める可能性があるとのこと:

- 妊娠高血圧症候群の発症リスク上昇

- 胎児の発育への悪影響

- 産後うつのリスク増加

- 早産のリスク上昇

医療・教育分野での課題

皮肉にも、最も差別報告が多いのは医療・教育分野だそう。これらの分野は、本来、人権や福祉に最も配慮すべき立場にある反面、切迫する現場の雇用者当事者たちは耐え難い差別を受けている人がいるという事実。

心理的影響と対策

職場での差別は、以下のような心理的影響をもたらす可能性があるとも述べられています:

- 自尊心の低下

- 不安障害

- キャリアに対する不安

- 組織への不信感

これらの影響を最小限に抑えるためには、適切なメンタルヘルスケアの提供と、組織的なサポート体制の構築が不可欠だとも述べられています。

法的保護の重要性

ノルウェーの平等・差別オンブズマン、トーン氏は、面接での妊娠予定の質問が違法であることを記事の、インタビューで改めて強調しています。しかし、法的保護の存在だけでは不十分で、実効性のある監視体制と、違反に対する厳格な処罰が必要であるとも述べています。

「沈黙」を破る声

フレデリックさんのこういう問題提起は、単なる告発に留まらないと私は考えていて。社会の今までの「当たり前」に疑問を投げかけて、議論をもっと進めようとするアクション。批判を恐れない姿勢は、称賛に値するし、妊娠女性に限らず、あらゆるマイノリティや今の社会が生きづらいと感じている人々にとって、大きなインスピレーションになっているはず。だからこそ、講演会に参加した人たちは「フレデリックなら、分かってくれるかもしれない」と思って、さらにアクションを起こした結果だと思います、もちろん、これで終わりではないのだけれど。

でも、そういう沈黙を破る声が、これからもっともっと聞こえてくる世の中になってほしいです。

原文記事
«Jeg kan spandere aborten din dersom du ønsker det», skal sjefen ha sagt til den gravide kvinnen

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