見出し画像

①慢性腰痛エキスパートのセミナー参加してみた

こんにちは!

ノルウェーの理学療法協会が、腰痛専門の研究者・教授・臨床者であるKieran O'Sullivan氏を招いてWebinarを開いてくれるということを知り早2か月。協会メンバーは1000円ちょっとで参加できるときいて、速攻応募をし、うきうきしながらこの日を待っていました。

セミナータイトルはずばり!

Low back pain rehabilitation: how can ‘physical’ rehabilitation professionals address ‘non-physical’ factors?

「腰痛リハビリテーション: ‘物理的’リハビリテーションの専門家は、‘非物理的’要因にどのように対処できるのか?」

とても内容も興味深く、私自身講義の最後に聞いてみたかった質問なども聞けたので、せっかくだから記事にしてみようと思います。

おそらく長くなるので数回に分けて投稿させてください(*´ω`*)

それでは、どうぞ~!


1.慢性腰痛に非物理的要因が大きく関与している場合、理学療法士の私たちは何をどうすべきか?


腰痛治療は、従来「身体的なリハビリ」に重点が置かれてきましたが、近年では「生物心理社会的アプローチ(Biopsychosocial Approach/Model)」が注目されています。

今回私が参加したLimerick大学のKieran O'Sullivan教授によるセミナーでは、この新しいアプローチに基づく腰痛治療の進化、腰痛を引き起こす原因として非物理的要因の関与、そしてオサリバン氏が語る理学療法士としてのアプローチ方法について学ぶことができました。

セミナーの途中や最後に、参加者との質疑応答も交えながら、現場の課題や解決策を皆でシェアできたセミナーでした。

2.Kieran O'Sullivan氏ってどんな人?

Kieran O'Sullivan(キーラン・オサリバン)は理学療法士で、1999年にダブリン大学を卒業後、2004年にカーティン大学で修士号を取得。腰痛を中心に筋骨格系の痛みを研究し、2012年に博士号を取得。2021年に研究優秀賞を受賞。現在はLimerick大学で教授をしています。

セミナーの始めに、オサリバン氏は「腰痛研究しながら、できる限り臨床も続けています」とおっしゃっていました。

3.As all do some non-physical rehab, it is just about how much.

すべての専門家は、何らかの非物理的なリハビリテーションを行っているが、その「どれくらい行うか」という点が焦点となる。

オサリバン氏の言葉

近年、生物心理社会的アプローチの概念が医療界全体で少しずつですが認識されつつあるとは思います。オサリバン氏はそのことを念頭において、「じゃぁ、もしその生物学的・身体的な要因でないことが腰痛の主な原因だとしたら、私たちはどのくらいそれに関与しないといけないのか」という点についてセミナーでは議論していきたいと語っていました。

4.研究され明らかになっている痛みの要因リスト

セミナーの始めてはセオリーを中心に、まずは痛みに寄与する主な要因(Pain Contributors)はどのようなものがあるかを講義してくれました。

  1. Physical(身体的要因): 体を酷使する作業や労働が関連。

  2. Anatomical(解剖学的要因): 身体構造や姿勢に関する問題。

  3. Psychosocial(心理社会的要因): 精神的ストレスや社会的な要因。

  4. Lifestyle(ライフスタイル): 生活習慣や活動量が影響。

これらの要因はすべて痛みの原因として関連しているが、依然として治療の多くは「身体的および解剖学的な側面」に重点を置いているということを指摘。90%以上の慢性的な腰痛がこれらの要因に該当し、少数派ではないという点が強調されている。

5.あらゆる腰痛ガイドラインで述べられている共通の内容とは?

現在複数の腰痛に関する公式ガイドラインがあらゆる媒体で掲載されていますが、どのガイドラインにも共通して述べられていることが以下のことだとオサリバン氏は指摘しました。

  1. 患者中心のアプローチを取ること(Person-Centered Care)

  2. 深刻な問題の可能性を無視しないこと

    • 深刻な問題が存在しない場合、他の要因に焦点を当てる。

  3. 画像検査、薬物療法、手術に急ぐべきではない

    • これらはリスクがないわけではないため、慎重に判断する必要がある。

  4. 教育(Educate the patient)

  5. 運動(Exercise)

  6. 身体的要因と非身体的要因の両方を考慮すること(Consider physical and non-physical factors)

6.筋骨格系の痛みー11のベストプラクティス

https://www.physiotutors.com/best-practice-physiotherapy/

ガイドラインの根拠づけとして、オサリバン氏は「筋骨格系の痛みの管理における11のベストプラクティス」も紹介しました。以下のポイントが含まれます:

  • 患者の全体像を考慮し、心理社会的な要因を評価すること。

  • リスクフリーではないため、不要な画像検査や手術を避ける

  • 非外科的なオプションを検討し、エビデンスに基づいたアプローチを採用すること。

  • 患者教育と運動療法を推進し、活動や仕事への復帰を支援する。

7.ノルウェーで見受けられるガイドラインの浸透

ノルウェーでも不要な画像検査や手術を避けるという点は、かなり広まってきていると思います。SNSでも公共機関・施設は腰痛問題に関して不要なレントゲンやMRは避けるべきだと広める活動が見受けられます。腰痛だけに限らず、変形性関節症などの患者に対する公式な教育プログラムも数年前から国全体で広まってきています。

私自身も、AktivAセラピストという資格を取得しています。AktivAは、スウェーデンとデンマーク発、膝および股関節の変形性関節症患者に対するエビデンスに基づく一次治療を提供するサービスです。2015年に開始され、理学療法士向けの教育コース、患者教育プログラム、品質レジストリで構成されています。患者さんは主治医つたいやAktivAのサイトから自宅近くのセラピストに直接連絡を入れプログラムに参加することができます。


ちょっと長くなりそうなので、数回に分けて投稿していきたいと思います。

今回はここまで、次回はセミナーの本テーマでもある非物理的要因とは一体何か、理学療法士の非物理的要因へのかかわり方などを中心に報告させてください♪

それではまたー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?