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【ボクシング】チワンディレの右に苦しむも、メルカドが上手さでV5

☆3月18日(日本時間19日)/メキシコ・チワワ州チワワ/マヌエル・ベルナルド・アギーレ体育館
WBC女子世界スーパーバンタム級タイトルマッチ10回戦
○ヤミレス・メルカド(メキシコ)チャンピオン
●クワダシ・チワンディレ(ジンバブエ)暫定チャンピオン
判定3-0(98対92、100対90、99対91)

 バランス、フォーム、パンチの打ち方、試合運び。どれをとってもメルカドが上回った。それは間違いない。だけれども、ボクシングとはそれらをすべて覆してしまう“何か”がある競技である。私の採点もメルカド勝利としたが、公式採点のような大差ではない。96対94と、メルカド薄氷の防衛と見た。

 メルカドが1階級上のフェザー級に食指を伸ばし、アマンダ・セラノ(プエルトリコ)に挑戦(0-3判定負け)。その兼ね合いで設けられただろう暫定王座に座っていたのがチワンディレだ。
 メルカドを大きく上回る身長から繰り出される右ストレート、いやオーバーハンドとストレートの中間で伸びてくるそれは、ことのほかメルカドを苦しめた。

 チワンディレのフォームは、決して褒められたものではなかった。上体を激しく左右に動かしたかと思えば、小刻みに動かす。そうしてせわしなく動き、上体を突っ込ませながら放つそれが、メルカドの顔面を、だが何度も捉えたのだった。

 対照的にどっしりと構え、バランスを整えて迎えうつメルカドは、ときに小さく、ときに大きくすり足に近いステップワークでこれをいなし、そのバランスの乱れを突こうとする狙い。だが、アフリカ人特有のというべきか、チワンディレは不格好に突っ込んできながらも、優れた運動能力がそれを支えるのか、バランスを乱さない。乱れたかと思えば、そこから追撃の左、あるいは右を繰り出してくるのだ。

 メルカドが王者たるゆえんは、それで混乱をきたさずに、戦略を切り替えられるところ。チワンディレが攻めるタイミングを探っているとみるや、左フックから飛び込んで連打で追い込む。チワンディレもボディーワークでこれをまともには打たせなかったが、ジャッジの心証や試合支配の部分では効果を上げた。また、互いにクリーンヒットなく終えるラウンドでも、距離を駆使してコントロールしていると見せるしたたかさも備わっていた。

 立ち上がりから最後まで、動き続けたチワンディレ。打ち方なんて度外視し、駆け込むようにして連打を仕掛けるなど、体力は相当なものだった。けれども、引くところ、出るところ、またド迫力の連打を降り注ぐなど、メリハリを利かせた攻防で魅せたのはメルカドだった。
 規格外の部分がチワンディレの強さであり、「殴る、避ける」という格闘技の根幹を持つ好ファイターだったが、ボクシングをしっかりと身に着けた上での“純”ならば、驚異的な存在になるはずだ。

《TV AZTECA視聴》

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