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【日記】2022年11月14日

「向田邦子のエッセイほしいなぁ。伊兼源太郎の最新作も読みたいし、谷繁、井端、吉見の本も。あ、吉田羊さんの初エッセイは発売前か。ビートは明日だった!」。そんな逡巡を経て、結局、『岸辺の旅』(湯本香樹実・著、文春文庫)のみを携えて、久しぶりの書店探訪を終える。
 浅野忠信、深津絵里。大好きな俳優、女優(女優を「俳優」と表す昨今、どうしても違和感しかない。決して性差別しているわけでなく、感覚として)が夫婦を演じるという、自分にとって奇跡のような映画。あのふたりを“再感”したくて手に取ったようなものだ。

 長いふたつの坂は、帰りの方がしんどい。それを感じないよう、「今日のごはんはどうしようか」を考えながら、ちんたらと歩く。

 パスタを茹でながら、スマホをセットする。久しぶりに、動く娘を見られるからだ。なんでも「歌える役者」を目指して、インセントという事務所のオーディションに応募。書類審査、面接を通過し、アプリを使った公開オーディションに参加するのだという。まだ「本スタート」ではないが、その前段としてのライブ配信だそうな。

 電話やLINEではやり取りをしてきたが、リアルな娘に会える(と言ってもスマホを通してだが)のは5年ぶりだろうか。大人になったなぁと感激ひとしお。よくわからんが、必死に花束を贈ったり、コメントをしたりしてバカ親ぶりを発揮した。バカ親が言うのもなんだが、「妙にこなれた風もなく、自然な感じ」がよかった。道はおそろしく険しいのだろうが、何事もチャレンジすることは良い。

 娘のチャレンジに気を奪われていたので、用意したパスタはすっかり固まってしまった。しかも、ふりかけた「明太子」と「ペペロンチーノ」がうまく全体に絡まない。箸で食べる習慣があるのだが、この日ばかりはフォークにすべきだったと、食べ終わってから気づく。

 何年も前から「観よう」と思ってマイリスト登録していた『テミスの剣』(2017年・テレビ東京)をParaviで視聴。中山七里・原作の映画やドラマは横山秀夫並に好きなのだ(が、肝心の原作を読んだことがない)。
 この後観ようと思っている『エルピス』と図らずもテーマが一致。あまりにも重たい展開に、上川隆也の好演が光る。そして、個人的好みで「日本一声が素敵」(もちろん見た目も好き)と思う堀内敬子が妻役でウットリ。
 しかし、週刊誌記者役の前田敦子が登場した中盤あたりから、それまでの重苦しいずっしりとした展開からなんだか急加速。刑事・上川と検事正・船越英一郎の対峙に突入。舞台俳優vs.2時間ドラマの帝王という異空間の対決は、ちょっと笑ってしまった。真上から「コントコケ」を撮る必要はあったのか。いや、そもそも「コケ」は要らなかったでのはないか。NHK-BSで第4シリーズが始まった『赤ひげ』は大好きで観続けているのだが、やはり船越に2時間を与えてはいけない。こんなとき、ナンシー関不在の大きさを痛感する。そして、原作を読んで“挽回”の機会を与えたいと思う。過ちを犯した人間の執念、信念という学びを、もっと確固たるものにしたいから。

 夜中。時代劇専門チャンネルで『それからの武蔵』が流れていた。内田吐夢監督、中村錦之助主演の名作『宮本武蔵』の流れを汲み、テレビ東京で制作された12時間ドラマの最初の作品だ。
 1980年、当時8歳になる直前だった前髪ぱっつん少年は、巌流島までの映画5部作一挙放送の虜となった。そして翌新年、実質続編となるドラマにも魅入った。それが再編集されて13話に区切られている。その第3話。
 40数年が経ち、私はすっかり汚れてしまった。ツッコミどころ満載だった。

 

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