マガジンのカバー画像

25
拙い詩の数々
運営しているクリエイター

#ぽえむ

億の眼

億の眼

ひどく青ざめた夕暮れ 黒い蝶が飛んでいく
街にひとはおらず にもかかわらず 億の眼に見つめられている
足先に踏みにじられたケシの花 誰にも摘まれることもなく 踏まれ 雨に打たれ それでも花を増やす
歩道に煙草の灰を落とす 億の眼がささやきだす
僕は背後を振り向く 電柱の影が揺れ 工場の煙が赤く染まり 億の眼がささやきだす
億の眼は僕を裁きだす 神でも法でもない億の眼に僕は裁かれる
煙草を落とし ケ

もっとみる
「通りすがりの人」

「通りすがりの人」

昨日友だちに君の話をしたんだ
君のために捨てられるものを話した
狂ってるよ、とからかわれたけど
僕は笑わなかったよ
誰にも理解されないだろう
理解されようとも思わない
君以外には

あと2m、1m、50センチ
君の髪の香りが感じられるくらいの距離
だけど君が怖がるといけないから
近づけない 声をかけられない
僕は通りすがりの人間を演じるだけ

君を知ってから 日記を書き始めた
言葉で君を閉じ込める

もっとみる
「片隅の絵葉書」ほか

「片隅の絵葉書」ほか

「片隅の絵葉書」

透き通った朝方 ふいに目覚めて
あなたの夢で 目が覚めて
青く暗い部屋に ひとりでいる
自分自身が とても不憫に思えた
望むものは 多くなかったはず
ただあなたの部屋を飾るもののように
壁に留めた 片隅の絵葉書のように
ただ、そばにいたかった
初めから 予感がしていたの
あなたは いつか離れると
会話が途切れて 窓外の雨を見る
あなたの横顔が とても悲しかったから
誰も必要とし

もっとみる