真実の瞬間(Moment of Truth)
今回のメールマガジンでは「真実の瞬間(Moment of Truth)」について紹介します。
1.Moment of Truthとは
仕事に人生に常に全力投球したいのは誰しも同じですが、現実問題として人間には好不調の波がありますし、集中力にも限度があります。チャンスを逃さないようにするには勝負どころをしっかり把握したいものです。
スカンジナビア航空の元CEOのヤン・カールソン氏は、この勝負どころのことをMoment of Truthと呼んで重要視しました。 これは営業職だけでなく、直接顧客と接しない内勤者でも平社員でも同じです。勤め人であれば上司との間でのMoment of Truthがあります。 仕事だけでなく人生でもMoment of Truthがあります。一目ぼれなどはまさにそうでしょうし、重要な試験がその瞬間ということもあるでしょう。あるいは思いもよらなかったことが後で振り返ると人生の岐路となっていることもあったりします。
人生は有限であり、第一印象を得る機会は一度しかありません。一度きりのチャンスを逃さないようMoment of Truthを意識して生きたいものです。
2.複数のMoment of Truth
営業を例に考えてみると、顧客にとってMoment of Truthは1回ではないこともあります。
例えば、ネットで商品を検索し、実際の店舗で購入、持ち帰って使用することを考えてみます。ネットで探したときに「最近はこんな機能もあるんだ」「カッコ良さそうなデザイン!」と感じることもあるでしょう。店舗で実際に商品をみて一目ぼれするケースもあるでしょうし、店員の親切な説明が決め手になることもあります。逆に、何の気なしに買ったものでも、使って見てその性能や使い勝手に感動することもあります。
売り手にしてみれば勝負どころが複数あることになりますが、すべてに張り込むことは難しいので通常は焦点を絞ります。例えば価格勝負の牛丼チェーン店であれば「この値段でこのボリューム!」と思わせるコストパフォーマンスが重要でしょう。高級レストランでは「素晴らしい顧客サービス!」と思わせることが重要で、来店いただいた時に備えて店員をしっかり教育します。
会計的には、売上100円に対するコスト構成を考えるとこの辺が見えてきます。価格勝負の牛丼チェーンであればコストパフォーマンスを裏付ける材料費率が高くなるでしょうし、高級レストランであれば顧客サービスを裏付ける人件費が高くなるでしょう。通常の会社であれば自然と勝負どころに費用をかけるコスト構成になりますが、もし「見当違い」なコスト構成になっているとしたら問題です。
3.経営管理との関係
昔は勘と経験で経営管理をしてきましたが、今は多くの会社で定量的な経営管理手法を採用しています。バラつきを抑える改善手法であるシックスシグマ、価値とコストのバランスに注目するバリューエンジニアリング、指標の置き方そのものに注目していくバランススコアカードなど、大きな会社になれば何らかの定量的手法によって経営管理や業務改善をしています。ビッグデータが扱いやすくなってきたこともこの流れを後押ししています。
大きな会社になるほど勘と経験では管理できず、定量化しなければ全体像が見えませんから、この流れは必然と言えるでしょう。しかしながら忘れてはいけないのは、多くの経営管理手法では出発点として「顧客満足度」や「顧客にとっての価値」を用いていることです。ここの定量化がうまくできていないとどんな経営管理手法も意味がありません。そして、顧客がその製品やサービスに惚れ込み価値を認めるのは、実はMoment of Truthの一瞬なことが多いのではないでしょうか。
経営管理手法は、一度導入してしまうと数字が独り歩きしがちです。顧客にとってのMoment of Truthをしっかり捉え、そこにウェイトを置いた設計になっているかどうか、時に見直してみるのもよいかもしれません。(作成日:2017年9月13日)
■執筆者:株式会社ビズサプリ 代表取締役 三木 孝則
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