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「リファラル採用」は本当に効果的なのか?Visionalの人事データを基に検証してみた

こんにちは。WorkTech研究所の友部です。

私自身、現職も前職もリファラル採用により入社しました。リファラル採用とは自社の社員紹介による採用のことを指します。人となりを知っている方からの紹介のため、事前に会社や働いている人のことを深く理解できたり、自分に期待される役割が明確になる等、私自身の体感的にもリファラル採用のメリットを感じていました。

採用する会社にとっても、リファラル採用はポジティブに捉えられている事が多いですが、定性的な印象から判断されることが多いとも感じています。すべての会社にとって、リファラル採用がポジティブであるとは限らないので、企業ごとに本当にメリットがあるかは定量的に分析する必要があります。

ちなみに、Visionalグループの採用・人事データを基に分析した結果ではリファラル採用は以下の点でポジティブである、と判断しています。

  • 早期退職する確率が低い

  • 入社2〜3ヶ月の立ち上がりが早い

しかし、これがどの会社でも言えることなのか、というとそうでもありません。所属している社員の方々やリファラル採用の制度設計によっても効果は変わってくると思います。

では、リファラル採用の効果を分析するには、どのような数値をみるとよいでしょうか。弊社でどのような数字を見たか、などを参考に今回はリファラル分析についてのお話です。

リファラル採用の目的は何か

一番大きな目的は採用数を増やし、社員を増やすことです。ただ、もう少し深堀りすると、以下のような目的が含まれています。

  • 採用チャネルの拡大

  • 面接工数の削減

  • 入社後の定着・活躍

もちろん、この内目的はどれか一つだけというわけではありません。リファラル採用によってこの目的がどのように果たされるのか、それぞれ仮説を立ててみます。

採用チャネルの拡大

「リファラル採用が活発だと、採用候補者が増える」

採用チャネルとしては、自社採用サイトからの応募やエージェントからの紹介、ビズリーチなどの直接スカウトなどがあります。これらの採用チャネルに加え、自社の社員による紹介を取り入れることで採用チャネルが増え、採用候補者を増やすことができます。

面接工数の削減

「リファラル経由だと一定のスクリーニングが働くので、面接工数が削減できる」

採用面接自体の目的の一つとして、自社の求める人材要件にあっているか、を見極めるがあります。社員による紹介で一定レベルのスクリーニングが働けば、要件に合っているか見極めるための面接の回数・時間を短縮することができるので、採用工数が削減できるかもしれません。

「リファラル経由だとアトラクトの効果が高まるので、内定承諾率が高くなる」

採用面接の過程では、人材要件に合っているかの見極めだけでなく、社員と触れ合うことにより入社意向を高めるアトラクトも行います。社員の紹介経由であれば、紹介者から自社の魅力を伝えられ、内定承諾率が高く効果も期待できます。

入社後の定着・活躍

「リファラル経由だと、定着率が高い」

リファラル採用の効果としてよく言及されるポイントです。入社前から紹介者より期待値醸成がなされるので、入社者の会社への期待のズレが生じづらくなります。また入社者の人材要件に関する見極めの精度が高いので、会社から期待されることと本人ができることのズレも小さくなり適切なアサインができます。結果、退職のリスクが低くなる可能性があります。

「期待」をどう捉えるかについては、こちらのnoteでも書かせていただきました。

「リファラル経由だと、入社後のパフォーマンスが高い」

面接過程での話にも関係しますが、人材要件に関する見極めの精度が高いので、活躍する可能性が高いと考えられます。とはいえ、パフォーマンスとは何か、は定義する必要があります。

パフォーマンスについてはこちらのnoteで書かせていただきました。どのパフォーマンス定義をリファラル採用に期待するか、は事前に採用担当者と現場の受け入れ担当者の間ですり合わせておくとよいでしょう。

「リファラル経由だと、エンゲージメントが高い」

これも定着と関係しますが、リファラル採用で入社することで、会社と入社者お互いの期待値のズレが生じづらいので、エンゲージメントが下がりづらい、ということがあるかもしれません。また、紹介者のエンゲージメントが高いと、入社者のエンゲージメントが高まる可能性があります。

…と、ここまでは仮説を並べてきました。リファラル採用の目的によってフォーカスにする仮説を決めて、その仮説を検証するためにどのような数値を見るか、考えていきます。

入社後の定着にフォーカスして分析

採用過程での効果が気になるものの、今回の分析では入社後の定着についてフォーカスしてみました。分析にあたって、以下のようなデータを集めました。なお、以下ではリファラル採用経由による入社を「リファラル」、リファラル採用以外の経由による入社を「非リファラル」としています。

  • 直近3年の入社者リスト(リファラル・非リファラル問わず)

  • リファラル入社者について、紹介者のリスト

  • 上記入社者のうち退職した人のリスト

  • 上記入社者の入社後半年間のパルスサーベイの結果

  • 紹介者のパルスサーベイの結果

ここで使っているパルスサーベイは月に一回実施しているもので、「仕事にやりがいを持っているか」について答えてもらっています。これらのデータから数値を見ていきました。分析に関してはここでご紹介している数値以外にもいろいろ見ておりますが、諸々の事情で詳細な数値をここで言及することはできません。また伝わりやすいようにわざとわかりやすい数字を持ってきたりグラフの加工など行っております。どのような数値を見たかというのだけでも参考にしていただけると幸いです。

退職率

リファラル入社者と非リファラル入社者の対象期間での退職率を比べてみると、リファラルのほうが4ポイントほど退職率が低いことがわかりました。

リファラル入社者と非リファラル入社者の退職率の差


早期退職率

ここでは、入社後半年以内の退職を早期退職とします。リファラル入社者と非リファラル入社者の早期退職率を比べてみると、リファラル入社者の早期退職率は非リファラル入社者のおよそ1/4となりました。(検証の全期間における退職率の差と比較しても、「早期退職率」のほうがリファラル/非リファラルの差が大きく、強い影響があると言えそうです)

リファラル入社者と非リファラル入社者の早期退職率の差
(グラフ:非リファラルの早期退職率を「1」とした場合の差)

入社直後のパルスサーベイの結果

月に一度実施しているパルスサーベイの「仕事にやりがいを持っているか」という設問に関する回答について入社直後の推移を見てみました。リファラル入社者と非リファラル入社者で比べると、入社1〜2ヶ月ではリファラル入社者のほうが7〜9ポイントほど高い結果となりました。しかし、入社3ヶ月となるとリファラル入社者も非リファラル入社者も差がなくなります。

パルスサーベイで「やりがいがある」と答えた回答者の割合

これらの数値より、リファラル採用については「早期退職する確率が低い」「入社2〜3ヶ月の立ち上がりが早い」と見ることができるため、目的を入社後の定着にフォーカスするとポジティブである、と考えることができます。もちろんこれらのデータについて検証すべきことはたくさんありますが、ここでは割愛させていただきます。

リファラル採用の効果

今回はリファラル採用の効果として、入社後の定着にフォーカスを絞り込んで数字を見てみました。前述ではありますが、企業のカルチャーやリファラル採用の制度によって効果も変わると思いますので、どのような観点でどのような数字を見ればいいか、参考にしていただければと思います。

入社後の定着について一定の効果が見られましたが、なぜ弊社のリファラル採用でこのような効果が得られるのか、深堀り分析をしようと思っています。仮説としては「初期段階での社内の人間関係ネットワークの構築速度が早くなるため」と見ているので、入社直後のコミュニケーションの状況、特に弊社は1on1の文化もあるので1on1の実施状況について検証したいです。

また、リファラル採用の採用活動への効果についても今後調査する予定です。採用チャネルの拡大や面接工数の削減には有効なはずですので、そこでみるべき数字についてもご紹介できればと思っています。

目的のところで今回は書きませんでしたが、リファラル採用に関わることによる在籍社員への影響についても考えられるかもしれません。Visionalには「事業づくりは、仲間づくり」というバリューがあるため、それを社員紹介を通じて体現することが、会社や組織にどのような影響を与えるか、という点も興味深いです。

というわけで、今回はリファラル採用についてのお話をさせていただきました。人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。