業務要件定義と「現場の煩方」の重要性
現場の煩方とは?
業務要件定義のプロセスにおいて、
一つ避けて通れない存在が「現場の煩方(うるさがた)」です。
この言葉の響きはネガティブに感じるかもしれません。
しかし、彼らは業務の網羅的な洗い出しには欠かせない存在です。
多くの場合、システム導入前に現場での業務ヒアリングが行われます。
管理業務はグローバルにテンプレ化されているため、日常的な業務は既知です。
しかし、現場の煩方は長い業務経験を持ち、イレギュラーパターンを豊富に経験しています。
彼らはヒアリング時に業務の細部を熱心に共有してくれます。
可用性ヒューリスティックバイアスの影響
一方で、このような現場の方は、
可用性ヒューリスティックバイアスに囚われていることが多いのです
参考:https://liberal-arts-guide.com/availability-heuristic/
可用性バイアスとは「思い出しやすい出来事、印象的な記憶に基づいて判断すること」です。
人は訓練をしないと必ずバイアスに囚われるですので、現場に限ったことではありません。
ただ、業務の中で、実際には、数年に一度発生するかしないかの異常なケースであったとしても、
管理部門はそういう時にほど「頑張って」対応したサクセス体験に繋がっていることが多く、
事実以上の重要性を持って語られることが多いのです。
「システムするのに、あの業務はそのままとは何事か・・・」といった発言です。
業務要件定義 : 可視化・定量化せよ
業務要件を進める設計者は、以上のような現場によるバイアスは「必ずあるもの」と前提をおくべきです。
決して、それはバイアスですよ、と議論してはいけない。険悪になります。
その上で、発生頻度や発生した場合の業務影響を定量化に可視化することが重要です。
以下は、確率的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment; PRA)を応用したリスクのマトリックスです。
システム化すべき業務要件を洗い出す手法としては非常に有効であるのでオススメしたいです。
現場も自己定量化も大事
前提としては現場はバイアスから逃れなれないとしました。
なぜなら過去の成功体験の否定にもなりかねないからです。
あの時頑張ったことは、実はそれほど経営影響はなかったということを自覚せざるを得ないかもしれません。
しかし、真に業務の効率化やシステム化を現場主導で進めるためには、客観的な自己評価が必要です。
コンサルタントのサポートを受けつつ、現場自らが業務を定量化する姿勢が求められます。