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測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか? 単行本 – 2019/4/27

「またこの時期が来たか…」と、ため息交じりにつぶやいたことがあるマネージャーは少なくないと思います。人が人を評価するということは、本来的には無理な話なのかもしれません。それでも結論を出さなくてはならないのが人事考課です。社員が個々に目標を掲げ、期限内に約束した成果が出たかどうかを測ること。これが一般にパフォーマンス評価と呼ばれるもので、その達成度合いによってボーナスが決まったり、目標達成の安定度から判断して昇給があったりという企業内の仕掛けです。

ただ、仕事というのは都度都度決まったモノサシを当てれば正確に測れるという単純なものばかりではありません。共通の目標を目指す組織の営みの中で、個々人の貢献はさまざまな形で発揮されますから、全員が納得する着地を見込むのはほぼ無理なのです。そもそも無理なことをしていますから、そのストレスに耐えかねて「測りすぎ」がはびこるようになったのではないかと推察します。

この本を読みながら思い出したのは、シリコンバレーにある某有名IT企業を視察してきた方から聞いた話です。訪問先企業の人事担当者いわく「僕らは、計測できないものを目標に設定したりしません。だって結果がわからないものは評価できないから意味ないじゃないですか」とのこと。さすが先進IT企業は違うね!と、そのまま飲み込みそうになりつつ、どこか釈然とせず違和感が残ったことを覚えています。

本書は、計測や数値化を否定するものではありません。もちろん物事の実態を知るのに測ることはたいへん役に立ちます。ただ、それが人や組織の評価に結びついたとき、数値達成自体が目的化し、単なる数字合わせや改竄といった本末転倒した方向に動き出すリスクも増大するということ。さらに、“正しく”測ろうとするあまり、気がついたら経営を圧迫するほど膨大なコストをかけるハメに陥っているなど、数々の例を挙げてそのリスクを解説してくれます。

「測りすぎ」に異を唱えたとして、今の私には代案を披露できるほどの力量はないです。しかし、数字によって可視化されていないものが、あたかも存在しないかのような取り扱いを受けることには賛成できないことはハッキリしています。そんなモヤモヤの中で、専門家が説明努力をしてくれる本書に出会うことができ、少し元気になりました。

(おわり)


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