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ドラッカー『非営利組織の経営』第II部「マーケティング、イノベーション、資金源開拓」を読み説く

お読みいただきありがとうございます。第I部に引き続き、第II部を読んでいきます。

第I部はこちら


第II部の日本語訳でのタイトルは「マーケティング、イノベーション、資金源開拓」となっていますが、これも第I部と同じように原文は違います。原文では、”From Mission to Performance : effective strategies for marketing, innovation, and fund development” となっていまして、直訳すると「ミッションからパフォーマンスへ:マーケティング、イノベーション、資金開発のための効果的な戦略」となります。つまりは「戦略」の話です。実際、第5章のタイトルは「非営利組織の戦略」となっています。

第2章の冒頭に、非営利組織にとって戦略がいかに重要か、ということが書かれています。引用してみます。

意図では山は動かない。山を動かすのはブルドーザーである。ミッションとプランは意図にすぎない。戦略がブルドーザーである。戦略が山を動かす。特に非営利組織では戦略が重要である。(中略)かつて私は、戦略という言葉を使うことをためらった。軍事の匂いが強すぎるといわれたからだ。だが考えは変わった。プランが知的な遊びに終わっていることに気づいたのだ。きれいに綴じて棚に置き、それだけで素晴らしいことを行った気になっている。プランはつくっても、実際に行動しないかぎり何も変わらない。これに対し、戦略は行動志向である。こうしたことから私は戦略という言葉を使い始めた。戦略であれば、期待するものではなく働くためのものであることがはっきりしている。

『非営利組織の経営』PP.65-66

第I部でも行動の重要性を主張していたドラッカーですが、ここでも行動を強調しています。リーダーシップは行動であり、戦略も行動である、というわけです。

さて、戻って第1章から見ていきましょう。

第1章 マーケティングと資金源開拓

この第1章のタイトルの日本語訳も英語版と違います。原文では、”Converting Good Intentions into Results” となっていまして、直訳すると「善意を成果に変える」となります。ちょっとドキっとするような表現ですね。

ドラッカーはこの章の冒頭、非営利組織には、プランニング、マーケティング、人、資金が必要と語っています。その上で、プランについては既に述べた、と言っています。これは第I部のミッションに基づいた長期目標と短期の行動計画が必要、と言った話かと思われます。そして人については第III部以降で語るよ、と。そこで、ここでは、マーケティングと資金源開拓について述べるよ、と言っていて、この部分が日本語訳の章タイトルに使われています。

わかりやすくするために、順番を入れ替えてドラッカーの主張を展開してみます。

まず、資金源について。

非営利組織が企業や政府と大きく異なるのは資金源である。
企業は売上げによって資金を手にする。
政府は税金によって資金を手にする。
非営利組織は募金によって資金を手にしなければならない。大義に共鳴する人達から資金を得なければならない。

『非営利組織の経営』P.61

最後の「募金」のところ、英語では、”donners” になっています。現代風に訳すと、これは「寄付」ということになります。

そしてこれに関して、ドラッカーは理事会の重要性を訴えています。

資金源開発の第一の主役は理事会のメンバーすなわち理事である。もはや、非営利組織の趣旨に賛同するというだけの理事では困ることは明らかである。自ら資金源となることによって、資金源開拓の先頭に立つ理事が必要である。

『非営利組織の経営』P.62

そして、理事会の役割については、もうひとつある、とドラッカーは言います。

資金については、理事会にはもう一つ役割がある。使える資金と活動のバランスを図ることである。この理事会の役割が果たされて、非営利組織は堅実な歩みが可能となる。教会、学校、病院をマネジメントする者は情熱をもたなければならない。ノーばかりいう人間では困る。しかし、誰かが「使える資金に活動はバランスしているか」をチェックしていかなければならない。(中略)非営利組織の資金は寄付者から寄託されたものである。理事会はそれらの金が目的のために使われることを確認する。

『非営利組織の経営』PP.62-63

実は理事会については、第IV部で人事について書いていて、そこでも出てきます。ここでは、こういう理事で理事会を構成する必要がある、という話に止めますが、要するに、お金の調達と運用について責任を持つ人を理事にしなさい、ということを言っているように思えます。

第2章 成功する戦略

ということで、第2章は、なんということでしょう。成功する戦略について書いているようです。これは頼もしい!

改善のための戦略
1.人 2.資金 3.時間

定性的な目標設定が必要

戦略のステップ
1.目標 2.コミュニケーション 3.ロジスティクス 4.スケジュール

イノベーションのための戦略
・うまくいっているときに変える
・外の世界の変化こそ機会
・予期せぬ成功は行動への呼びかけ

イノベーションの成功要因
・変化を機会として見る
・責任者を探す
・戦略をもつ

犯しやすい間違い
・試行段階を飛ばす
・自分で調べない
・独善
・根本的な見直しをしない

戦略がうまくいかないときの鉄則
 もう一度行う → それでもダメなら撤退する

この章に書かれていたことを簡単にまとめました。どちらかというと、成功の秘訣というよりは、これらはチェックリストとして使えそうです。

第3章 非営利組織のマーケティング戦略 │ フィリップ・コトラーとの対話

ここではコトラーによる解説部分のエッセンスを抜き出しておきます。

マーケティングで重要なこと
・マーケットリサーチ
・セグメンテーション
・ターゲティング
・ポジショニング
・仕事の設計

マーケティングの目的=販売を不要にすること

差別化で重要なこと
・セグメンテーション
・ターゲティング
・ポジショニング

マーケティングの順番
・マーケットリサーチ
・マーケットを分類し、ターゲットを定める
・ターゲットに合わせた方針、方法、プログラムをつくる
・プログラムをターゲットに知らせる

第4章 資金源の開拓 │ ダトレイ・ハフナーとの対話

ドラッカーによるまとめの部分を引用しておきます。

・資金源開拓とは、人間の育成
  非営利組織は資金源開拓によって支持層を得ている
  理解と支援を築いている
  人に満足をもたらしている
・資金源開拓は、ミッション、マーケット、寄付者、ボランティア、成果からのフィードバックに基づいた活動でなければならない

第5章 非営利組織の戦略 │ まとめとしてのアクション・ポイント

ここまで途中、キーワードで整理してきましたが、結論部分だけは再び文章でまとめてみたいと思います。

非営利組織にとって、サービス受益者のみならず、寄付者もボランティアも顧客である彼らをミッションに結び付け、満足を与え、成果を出す。これが非営利組織にとっての戦略であり、マーケット戦略である。

・非営利組織が成果をあげるには、改善戦略とイノベーション戦略の両方が必要である、と。そして、イノベーションのための戦略を成功させるには、機能しなくなったもの、貢献しなくなったもの、役に立たなくなったものを廃棄するシステムが必要である。

・これらの戦略はマーケットリサーチから始まる。

・非営利組織の戦略で次に重要なことは、人のトレーニングである。それはスタッフのみならず、むしろ、ボランティアのトレーニングの方が重要である。

以上になります。ちなみに、この人に関しての話は、第IV部と第V部でも詳しく語られます。

第II部はこの辺で。第III部に続きます。

現場からは以上です。この記事が面白かったという方のスキ、何か言いたいという方のコメントもお待ちしております。

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