コロナ後の新たな世界へ向けてBizjapanがスタートを切った一年間の奮闘記
Bizjapan9期代表の中澤太良です。
2023年1月15日で一年間務めたBizjapanの代表を退任しました。在任期間中は多くの方のお力添えによって助けられ、皆様に感謝してもしきれません。
ここでは、一年間の振り返りをすると共に今現在のBizjapanがどのような場所で、在任中の一年間に団体とコミュニティを活性化するために行った施策とその効果などについてお話しします。
この記事が過去・現在・未来のBizjapan関係者のみならず、プラットフォーム設計やコミュニティ設計へ挑戦する全ての方へ微力ながらその挑戦をサポートできるようなものになっていれば幸いです。
本題に入る前に、Bizjapanについて軽く説明します。
BizjapanとはEntrepreneurship(起業家精神)を持ったエネルギー、野心、アイデアが溢れる学生が自分の「好き」を形にして社会に働きかける学生団体・NPO法人です、メンバー構成としては東大を中心としていながら早稲田、慶應、ICUなどの学生も所属していて、メンバーに留学生が多く、日英両言語を公用語として活動しているのも特徴です。
2022年はEntrepreneurshipに加え、BorderlessとPassionもバリューとして活動しました。各々の熱意(Passion)を共有し、国籍や言語だけでなく分野などあらゆる分断や壁を乗り越え、自由な発想と多様な人間関係を生む場所になることを目指しました。
Bizjapanは以上のことを達成するためにプロジェクトプラットフォームという形式を取っており、自らの興味や問題意識から生まれたプロジェクトで社会に実際に影響を与えることが主な活動内容です。
わかりやすい例としてはデマの拡散を防ぐプロジェクト、地方創生を学生に広めるプロジェクト、環境負荷の低いタイカカオのサプライチェーンを日本で作るプロジェクトがあります。
つまり、Bizjapanには新しいプロジェクトを生み、それらが走り出すプロジェクトプラットフォームであると共に、新しいアイデアが生まれる素地となるユニークな人間関係を築くためのコミュニティでもあるのです。
2022年のBizjapanの振り返り(プラットフォーム編)
2022年はBizjapanがプロジェクトプラットフォームとして成熟した一年でした。プロジェクトプラットフォームを標榜する以上、プロジェクトを生み出し、回すのにおいて最適な場所を設計するべきというのが運営の際の一貫した指針でした。
プロジェクトを生む仕掛けとしては、団体の週例イベントの内容を一捻りすることで会話からの自然発生的なプロジェクトの誕生を促進しました。これに加えてすでにプロジェクトを回しているメンバーからプロジェクトを始める方法を新しいメンバーに共有する場や、一人一人との対話を通じてプロジェクトを「引き出す」セッション、プロジェクト案を壁打ちするイベントを通じてプロジェクトが生まれるために最適な環境を整えました。
プロジェクトを回す仕組みとしては、今年から導入したプロジェクトフィードバックサイクルが最も革新的な試みでした。プロジェクトのゴール、すなわち成果を出すタイミングを一律に設定することによってプロジェクトの活発な進行を促進しました。このシステムについてより詳しく説明します。まず、プロジェクトピッチとしてそれぞれのプロジェクト案の発表の場を設けます。ここで、プロジェクトメンバーの募集や第一印象でのフィードバックをプロジェクトピッチ参加者から得ます。このプロジェクトピッチを経てプロジェクトが正式に走り出します。そして、この走り出しのタイミングですでに成果を出すべき時期がゴールとして見えていることがプロジェクトを活性化すために必須であると確信し、Biz会議と銘打ったプロジェクトの成果発表を外部の専門家、学生、Bizjapanの先輩方に対して行うイベント立ち上げました。そして、Biz会議までの約三ヶ月の間にさまざまな企業や先輩方とのメンタリングセッションを通してプロジェクトの計画に磨きをかけると共にプロジェクトの実現可能性を最大限高めました。このメンタリングセッションが、プロジェクトのアイデアと成果の架け橋として働くことで、プロジェクトの活動を後押ししました。2022年は二回のBiz会議とEnd of Year Partyでの発表を合わせた計三回、このフィードバックサイクルを回しました。
このサイクルを行うことによって、常に社会と接点を持ったプロジェクトが多数誕生し、合計で十七のプロジェクトが生まれました。
ただ、必ずしも全てがうまくいったわけではありませんでした。まずは、三ヶ月はプロジェクトが何か大きな成果を出すには明らかに短すぎました。このスパンでは目に見えるような大きな成果というよりは方針の具体化、ステークホルダーへのアプローチや開催イベントの準備の進捗を報告することになった場合が多かったです。また、イベントでの発表のためという言わば「外圧」だけでプロジェクトの進捗を管理しようとしたことも理想的ではなかったでしょう。プロジェクトの安定した運営においては改善点があると思われます。
しかし、依然として、形はどうあれプロジェクトを進めるための推進力を仕組みという形で確保したことは、プロジェクトプラットフォーム運営において大きな進歩であり、理想状態に大きく近づいたと言えるでしょう。
2022年のBizjapanの振り返り(コミュニティ編)
2022年はコロナ禍を経て目まぐるしく変容する社会においてBizjapanがどのような価値を提供し、社会の潮流を感知しながら特別な存在であり続けるかを常に問い続けました。
理想的なプロジェクトプラットフォームであることはもちろんBizjapanの大きな価値です。ただそれ以上に、Bizjapanの価値の真髄はそこにいる一人一人の存在、そしてメンバー同士やメンバーとあらゆる分野などを有機的につなげる媒体であることです。つまり、コミュニティとして魅力的で活発であることはBizjapanがその真価を発揮するのには必要不可欠です。これに加え、コミュニティが活発であることが団体にコミットするメンバーを増やすことにも直結するので、コミュニティの活性化はBizjapanの一番の基礎となるべき部分なのです。
2022年の前半はパンデミックによる制限があったのですが順次緩和され、夏以降は対面の活動ができるようになりました。ただ、二年以上対面の交流がほぼ無に等しかったことは社会とその構成員である学生に想像以上に大きな影響を与えていました。コミュニティに所属するメンバーの仲を深めるために毎年行われていた新歓やインクルージョンなどの仕組みやイベントは下級生が参加することで雰囲気などを学び、次の代に自然と伝わるものです。よってこの流れが一度途絶えたことによってにコミュニティ構成の第一歩が失われてしまいました。それに加え、Bizjapanならではの苦労した点として、プロジェクトプラットフォームとして完成するほど、プロジェクトごとに縦割りのような形で動くことが多くなり、団体全体としての交流にさける時間が少なくなることで帰属意識が薄れる方向に働いてしまいました。団体の特性がコミュニティ設計を難しくしていた点もあったのです。
今年はBizjapanというコミュニティを再び活発にするための施策を考えました。辿り着いた結論は至ってシンプルで、「対面でメンバーが会う機会を最大化する」でした。過去二年間、多くのことがオンラインでも行えるようになりました。その結果、場所取りが必要で、日程調整がより困難な対面でのイベントの開催のハードルが高くなったように感じます。ただ、対面の力は凄まじく、大学の授業すら対面で行われないものも多い中、コロナ禍以前では日常だった実際に人と会う経験が特別なものになり、対面であることが逆に力を持つようになったのです。
コミュニティ活性化の次のステップとして、その対面の場をどうやってより特別な経験にするかが課題でした。Bizjapanのメンバー構成はとても多様(現役メンバーには異なる八カ国からの出身者がいて、専門分野も国際関係から政治学、経済学、社会学、医学etc など幅広い構成)であり、それぞれが強い自分の意志を持っています。このメンバーだからこそできる学びや経験を追い求めました。その結果が、「『好き』のお裾分け」のために開催されるあらゆるテーマの自主ゼミやイベントでした。未知の領域について熱く語る仲間の姿を見て、その領域を少し覗き見るような機会を提供することに重点を置きました。そして、必ずフランクな食事会や料理会とセットにすることで、純粋に人といる楽しさもメンバーに与えられるようにし、モチベーションとコミットの維持に努めました。その結果、合計二十回以上の対面イベントを開催し、新入生の8割以上が高いコミット率とともに団体に残ることにつながりました。
コロナ後での学生団体の使命
段々と制限が緩和され、学生の活動が戻ってきた今、改めて学生団体の価値と意味を見直してみたいと思います。
まず、学生の間というのはあらゆる面でトレーニングを積んでいる期間で、将来の下地を作る時間であり、この期間中に積んだ経験がその後の人生の方向を規定すると言っても過言ではないです。
限られた学生生活の時間を、より効率よく仕事の経験を積めるインターンなどでなく学生団体に費やす意味。それは自分達の裁量と責任で何か他人を巻き込んだ、学生団体でしかできない活動ができることではないでしょうか。
特に、Bizjapanではプロジェクトによって学生のうちに、自分のアイデアで外の世界とつながることで社会の大きさやその厳しさを学び、チームとして0から何かを作る経験をすることができます。それによってマネジメント力を学生のうちに鍛えることができます。どんなことでも自分達で試行錯誤しながら何かを作り上げ、世の中に出すというサイクルを一周回す経験は必ずどこかで役に立つと信じています。また、あらゆる分野の友人を作り、異なる分野を知ることによって分野の枠にとらわれないBorderlessな発想が可能になります。よって、プロジェクトの結果だけでなく、どれだけそこに至るプロセスを全力で行い、経験と人間関係を作るかが未来のために種を蒔いている学生時代で大切なことだと思います。そして、そのような経験を得られる場所にすることが、この団体に貴重な学生としての期間を使ってくれたメンバー全員に対してのせめてもの恩返しだと思い一年間運営を続けました。
最後に、全体を通して偉そうに語ってしまいましたが、副代表の3人をはじめとするメンバー全員や先輩方などがいなかったらここに書いたすべてのことは実行できていません。運営において関わってくださった全員に感謝すると共に、この文章を締めさせていただきます。
Bizjapan 9期代表 中澤太良