経営計画の作り方 5.経営計画の運用
ここまで経営計画の内容とその作り方を見てきましたが、当然ながら、経営計画は作れば終わりというわけではありません。経営計画を作った後にも実行と見直しというテーマが存在します。今回の講義の範囲には含めていませんが、重要テーマであるため、個人としての見解のさわりを共有しておきたいと思います。
計画の実行
対外説明のみを目的とした経営計画でもない限り、計画した内容が実行されなければ、計画を作る意味はありません。その意味では、計画の実行は策定以上に重要であり、個人的にも腐心してきたテーマです。
経験から言えることは、計画の実行は決して一筋縄ではいかないという事です。作った瞬間に“机の上の置物”や“タンスの肥やし”になる場合もありますし、なし崩し的に目標がどんどん下方修正され、計画の原形が分からなくなることも良く見られる光景です。
これには様々な要因があります。例えば、計画の出来が悪い、社内に浸透していないという“計画”そのものに関する要因もありますし、計画と個人の評価が連動していないといった“仕組み”の問題や、経営者が計画にコミットしていないという“人”の問題もありえます。更には、綿密に進捗管理するプロセスが欠けていたり、そのための情報収集インフラが整っていない、といった計画の管理“プロセス”が問題である場合もあるでしょう。
逆に言えば、これらをつぶし込む事により、計画がしっかり実行される確度を高める事ができると言えます。本資料では具体的な議論まで踏み込みませんが、“いやというほど浸透させて”、“丁寧に数値とアクションに落とし込み”、“推進する仕組みと体制を整えた上で”、“ギチギチと進捗管理をしていく”ことが基本スタンスとなります。
計画の見直し
やるべきことをやらないで計画を修正することは基本的に避けるべきですが、実際の経営においては、予測不可能な状況変化などが起きることは多々あります。そういった場合は、むしろ当初計画に固執せず柔軟に計画を見直すことが正しい判断となります。
「どうせ当たらないんだから、経営計画を作っても意味がない」という意見を良く聞きますが、そもそも経営計画とは一度作ったら変更しないものではなく、このように必要に応じて随時見直していくものなのです。
ただし、見直しを行う前にしっかりと振り返りを行ことが不可欠です。“何が原因で見直しが必要となったのか?”、”何を変えるべきで、何を変えないべきか?“という点をしっかり見極めた上で、計画を修正することが肝要です。
さもなければ、上でも述べたような、なし崩し的な計画修正が常態化してしまい、当初の目標が遠のくだけではなく、経営計画そのものに対する信頼性や作ることへの意欲が失われ、経営ツールとして役に立たなくなってしまうため注意が必要です。