外国人新制度「育成就労」の影響
はじめに
新たな外国人材受け入れ制度「育成就労」の導入により、日本全国で外国人材の流動化が進み、地方と大都市での人材争奪戦が激化しています。この制度の成功ポイントや他の企業が再現できる点について考察してみましょう。
育成就労制度と特定技能制度の関係
育成就労制度の概要
育成就労は、技能実習に代わる新しい制度として導入され、従来の転職制限が緩和されることで、外国人材の流動化が促進されています。これにより、地方や大都市での人材争奪が激化し、各地域が定着策を模索するなか、新たな動きが生まれています。
地方での取り組み事例
高知県では、育成就労に基づいて定着奨励金を支給する制度を始めました。また、現地教育機関への補助金などを通じて、外国人材が地域に定着するための支援が行われています。これにより、地域の魅力向上と外国人材の定着が図られています。
大都市と地方の賃金格差と課題
育成就労に伴う外国人材の動きは、賃金水準の違いも浮き彫りにしています。大都市と比べて地方の賃金水準が低いことから、地元企業では外国人材の流出を懸念しています。このような課題に対して、地方企業の取り組みや支援策が求められています。
特定技能との比較
特定技能と育成就労の違いについても触れるべきです。特定技能では転職制限がないことから、外国人材が大都市周辺に集まる状況が既に生じており、地方の危機感が強まっています。地方での特定技能「2号」の取得支援や相談体制の充実など、地域ごとの取り組み事例を紹介しましょう。
「育成就労」制度と技能実習制度の主な違いは以下の通りです:
目的:
技能実習制度は、途上国への技術継承が目的で、労働力ではない。
育成就労制度は、人材確保と人材育成を目的としており、基本的に3年間の育成期間で特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指す。
対象職種:
技能実習制度では、88職種161作業が対象でした。
育成就労制度では、特定技能と同一分野が対象で、特定技能1号に向けての人材育成が目的とされています。
転籍の要件と手続き:
技能実習制度では、原則として転籍ができませんでした。
育成就労制度では、転籍が可能で、新しい育成就労先での育成就労計画の認定が必要です。転籍先の職種が従前と異なる場合は、原則として認められません。
人材育成のあり方:
技能実習制度では、特定の職種や作業に特化した技術を習得することが目的でした。
育成就労制度では、特定技能制度の「業務区分」の中で主たる技能を定めて「育成就労計画」を作成し、その計画に基づいて育成・就労を行うことが想定されています。これにより、特定技能への移行を見据えたキャリアアップの道筋が描きやすくなります。
これらの違いにより、育成就労制度は、特定技能への移行をスムーズにするための制度であり、技能実習制度を変更したものと言えます。
育成就労制度の課題と今後の展望
育成就労制度導入に伴う課題や今後の展望についても触れるべきです。外国人材の受け入れが増える中で、地方と大都市の人材争奪は一層激化する可能性があります。また、国全体の魅力向上と賃金面についても、今後の課題として取り上げることが重要です。
「育成就労」制度のメリットとデメリットは以下の通りです:
メリット
長期的な雇用が可能になる:
技能実習制度では最大5年間、特定技能1号だけでも通算5年間までしか雇用できませんでしたが、新たな育成就労制度は特定技能1号への移行が前提となる人材育成制度です。そのため、育成就労制度で3年、特定技能1号で5年、通算8年の雇用が可能になります。
外国人の労働者としての権利の保護:
育成就労制度では、外国人の労働者としての権利の保護が強化されています。管理団体などの関係機関の要件を適切化し、外国人に就労先として選ばれるような制度設計を目指しています。
キャリアアップの道筋が明確になる:
育成就労制度では、特定技能1号への移行がスムーズに行える枠組みとなっています。これにより、外国人にとってキャリアアップの道筋が明確になります。
デメリット
監理団体の許可の取り直しが必要:
技能実習制度の「監理団体」は、新制度の育成就労制度でも引き続き存続するようですが、独立性・中立性や受け入れ機関数に応じた職員の配置や相談体制などを担保して監理団体の許可の取り直しが必要になる予定です。
転籍の条件が厳しい:
育成就労制度では、転籍は下記の条件を満たしていれば認められますが、条件が厳しいため、転籍が困難になる場合があります。
特定技能1号への移行が必須:
育成就労制度では、特定技能1号への移行が前提となるため、特定技能1号の要件を満たさないと移行ができない場合があります。
これらのメリットとデメリットを踏まえると、育成就労制度は、外国人材の育成と就労を目的としており、特定技能1号への移行をスムーズにするための制度です。
結論
新たな外国人材受け入れ制度「育成就労」の導入により、日本の地方と大都市での人材流動化が進んでいます。この動きに伴う課題や今後の展望について、各地域が取り組む成功ポイントや再現可能な取り組みを紹介しました。外国人材受け入れが増える中で、国全体の魅力向上と賃金面の整備が求められることが示唆されています。
引用:2024/06/15 日本経済新聞 朝刊 5ページ
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