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外国人新制度「育成就労」の影響

はじめに


新たな外国人材受け入れ制度「育成就労」の導入により、日本全国で外国人材の流動化が進み地方と大都市での人材争奪戦が激化しています。この制度の成功ポイントや他の企業が再現できる点について考察してみましょう。

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001231483.pdf

育成就労制度と特定技能制度の関係


育成就労制度の概要


育成就労は、技能実習に代わる新しい制度として導入され、従来の転職制限が緩和されることで、外国人材の流動化が促進されています。これにより、地方や大都市での人材争奪が激化し、各地域が定着策を模索するなか、新たな動きが生まれています。

「育成就労」制度は、外国人材の育成と就労を目的としており、具体的な運用方法は以下の通りです:

1. 育成期間:
- 外国人材を3年間の育成期間で特定技能1号の水準に育成することを目指しています。

2. 在留資格の要件:
- 在留資格「育成就労」には、就労開始時点の日本語能力に関する要件があります。日本語能力A1※相当以上の試験に合格するか、相当の日本語学習を受講することが必要です。

3. 企業の要件:
- 企業が外国人を雇用するためには、国で決められた「特定産業分野」に該当する業種・職種であることが必要です。また、昇給や日本語能力向上のための要件も求められます。

4. 転籍の要件と手続き:
- 転籍する際には、新しい育成就労先での育成就労計画の認定が必要です。転籍先の職種が従前と異なる場合は、原則として認められません。また、転籍先事業所の適正性についても審査があります。

5. 人材育成のあり方:
- 育成就労制度では、特定技能制度の「業務区分」の中で主たる技能を定めて「育成就労計画」を作成し、その計画に基づいて育成・就労を行うことが想定されています。これにより、特定技能への移行を見据えたキャリアアップの道筋が描きやすくなります。

6. 管理支援機関の役割:
- 監理支援機関が新しい育成就労実施者との間で雇用契約成立のあっせんを行い、新規の育成就労計画認定申請を行うことになります。

7. 不法就労助長罪の改正:
- 不法就労助長罪も、育成就労制度に併せて改正され、厳罰化される予定です。

これらの要件と手続きを通じて、「育成就労」制度は、外国人材の育成と就労を目的としており、人材の流動化を進めることを目指しています。

※日本語能力A1は、日本語能力試験(JLPT)における初級レベルの一つです。このレベルでは、基本的な日常会話や簡単な文章の読み書きができることが求められます。日本語を勉強し始めた初心者向けのレベルであり、日本での生活や簡単なコミュニケーションに必要な基礎的な日本語能力を証明することができます。

地方での取り組み事例


高知県では、育成就労に基づいて定着奨励金を支給する制度を始めました。また、現地教育機関への補助金などを通じて、外国人材が地域に定着するための支援が行われています。これにより、地域の魅力向上と外国人材の定着が図られています。

高知県の「定着奨励金」は、外国人材の定着を促すために設けられた制度であり、効果的に機能している様子が伺えます。以下はその具体的な内容と効果です:

定着奨励金の概要

- 高知県は、外国人材が県内で働き続けることを促すために「定着奨励金」を設けました。この制度は、ベトナムやインドから来日し、県内で約3年間働いた場合に1人当たり30万円の奨励金を支給します。

対象者と要件

- この制度は、県が認定した日本語教育機関で来日前に高知の魅力や方言を学んだ人を対象としています。また、現地教育機関にも講師費用などを補助することで、入国前から高知に親しみを持ってもらい流出を止めることを目指しています。

効果

- この制度は、外国人材が高知県に定着することを促す効果があります。特に、県が認定した日本語教育機関で来日前に高知の魅力や方言を学んだ人を対象としているため、来日前から高知に親しみを持つことが容易になります。また、現地教育機関にも補助金を支給することで、外国人材が高知県に定着するための環境整備が進められます。

その他の支援策

- 高知県は、外国人材の定着を促すために様々な支援策を講じています。例えば、地域子育て支援センターの機能強化やデジタル技術を活用した効果的なWeb広告などを通じて、外国人材が高知県に定着するための環境整備が進められています。

結論

- 高知県の「定着奨励金」は、外国人材の定着を促すために効果的に機能している様子が伺えます。この制度は、来日前から高知に親しみを持ってもらい流出を止めることを目指しており、外国人材が高知県に定着するための環境整備が進められています。

 大都市と地方の賃金格差と課題


育成就労に伴う外国人材の動きは、賃金水準の違いも浮き彫りにしています。大都市と比べて地方の賃金水準が低いことから、地元企業では外国人材の流出を懸念しています。このような課題に対して、地方企業の取り組みや支援策が求められています。

 特定技能との比較


特定技能と育成就労の違いについても触れるべきです。特定技能では転職制限がないことから、外国人材が大都市周辺に集まる状況が既に生じており、地方の危機感が強まっています。地方での特定技能「2号」の取得支援や相談体制の充実など、地域ごとの取り組み事例を紹介しましょう。

特定技能「2号」は、外国人労働者が日本で特定の産業分野において技能を活かして働くための資格制度です。特定技能2号は、特定の技能や経験を有する外国人労働者が、日本での就労を希望する際に取得することができる資格です。この制度は、外国人労働者の受け入れ拡大策の一環として導入され、技能実習生や留学生などが特定の技能を身につけた後、日本での就労を希望する際に活用されています。

「育成就労」制度技能実習制度の主な違いは以下の通りです:

  1. 目的

    • 技能実習制度は、途上国への技術継承が目的で、労働力ではない。

    • 育成就労制度は、人材確保と人材育成を目的としており、基本的に3年間の育成期間で特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指す。

  2. 対象職種

    • 技能実習制度では、88職種161作業が対象でした。

    • 育成就労制度では、特定技能と同一分野が対象で、特定技能1号に向けての人材育成が目的とされています。

  3. 転籍の要件と手続き

    • 技能実習制度では、原則として転籍ができませんでした。

    • 育成就労制度では、転籍が可能で、新しい育成就労先での育成就労計画の認定が必要です。転籍先の職種が従前と異なる場合は、原則として認められません。

  4. 人材育成のあり方

    • 技能実習制度では、特定の職種や作業に特化した技術を習得することが目的でした。

    • 育成就労制度では、特定技能制度の「業務区分」の中で主たる技能を定めて「育成就労計画」を作成し、その計画に基づいて育成・就労を行うことが想定されています。これにより、特定技能への移行を見据えたキャリアアップの道筋が描きやすくなります。

これらの違いにより、育成就労制度は、特定技能への移行をスムーズにするための制度であり、技能実習制度を変更したものと言えます。

 育成就労制度の課題と今後の展望


育成就労制度導入に伴う課題や今後の展望についても触れるべきです。外国人材の受け入れが増える中で、地方と大都市の人材争奪は一層激化する可能性があります。また、国全体の魅力向上と賃金面についても、今後の課題として取り上げることが重要です。

「育成就労」制度のメリットとデメリットは以下の通りです:

メリット

  1. 長期的な雇用が可能になる

    • 技能実習制度では最大5年間、特定技能1号だけでも通算5年間までしか雇用できませんでしたが、新たな育成就労制度は特定技能1号への移行が前提となる人材育成制度です。そのため、育成就労制度で3年、特定技能1号で5年、通算8年の雇用が可能になります。

  2. 外国人の労働者としての権利の保護

    • 育成就労制度では、外国人の労働者としての権利の保護が強化されています。管理団体などの関係機関の要件を適切化し、外国人に就労先として選ばれるような制度設計を目指しています。

  3. キャリアアップの道筋が明確になる

    • 育成就労制度では、特定技能1号への移行がスムーズに行える枠組みとなっています。これにより、外国人にとってキャリアアップの道筋が明確になります。

デメリット

  1. 監理団体の許可の取り直しが必要

    • 技能実習制度の「監理団体」は、新制度の育成就労制度でも引き続き存続するようですが、独立性・中立性や受け入れ機関数に応じた職員の配置や相談体制などを担保して監理団体の許可の取り直しが必要になる予定です。

  2. 転籍の条件が厳しい

    • 育成就労制度では、転籍は下記の条件を満たしていれば認められますが、条件が厳しいため、転籍が困難になる場合があります。

  3. 特定技能1号への移行が必須

    • 育成就労制度では、特定技能1号への移行が前提となるため、特定技能1号の要件を満たさないと移行ができない場合があります。

これらのメリットとデメリットを踏まえると、育成就労制度は、外国人材の育成と就労を目的としており、特定技能1号への移行をスムーズにするための制度です。

特定技能1号は、外国人労働者が日本で特定の産業分野において技能を活かして働くための資格制度です。この制度は、2019年に施行された外国人労働者の受け入れ拡大策の一環として導入されました。特定技能1号の資格を取得することで、外国人労働者は日本での就労が可能となります。特定技能1号の取得には、特定の技能や経験を有することが求められ、日本での就労を希望する外国人労働者にとって重要な制度となっています。

結論


新たな外国人材受け入れ制度「育成就労」の導入により、日本の地方と大都市での人材流動化が進んでいます。この動きに伴う課題や今後の展望について、各地域が取り組む成功ポイントや再現可能な取り組みを紹介しました。外国人材受け入れが増える中で、国全体の魅力向上と賃金面の整備が求められることが示唆されています。

引用:2024/06/15 日本経済新聞 朝刊 5ページ

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