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八本目の槍
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「賤ケ岳の七本槍」と言われる武将の八人目を巡る物語。彼らの小姓時代から関ケ原の戦い、そして豊臣家滅亡に至るまでの様々な葛藤が描かれていて面白かった。(これが史実であればいいなと思った。)
「賤ヶ岳の戦い」は織田信長亡き後の1583年(天正11年)に賤ヶ岳(滋賀県長浜市)付近で起きた、「羽柴秀吉」と「柴田勝家」の戦い。これに勝った羽柴秀吉(豊臣秀吉)が天下を駆け上がる契機となった一戦。この戦いで特に目覚ましい活躍をした秀吉の小姓組のうち加藤清正(虎之助)、福島正則(市松)、加藤嘉明(孫六)、平野長泰(権平)、脇坂安治(甚内)、糟屋武則(助右衛門)、片桐且元(助作)の七名を差して「賤ケ岳の七本槍」と言われるのだが、では八本目は誰なのか?
いつの世も出世するにつれて考え方も変わり始め、昔のように腹を割って話せなくなる。徳川家康の天下簒奪の企みを早くから見抜きそれに対する備えを早くから打とうとするも、あまりに先を見ていて誰も理解できず袂を分かつことになって散ってしまった八本目。しかし残念ながら事態は彼が予言した通りに進み、家康の横暴はますます露骨になって行く。何とか豊臣家を滅ぼすまいと残った者たちは奮闘するが…その時になって八本目が何を考えていたかを知る。それでも彼が死の間際に残した策略によって家康の動きを十年以上封じ込めることはできたが…
徳川家康が少し過剰に悪人に描かれているかなというのはあるが、読み応えのあるいい話だった。
八本目は誰か?評価が見直されているあの武将。(今でも地元では名君の誉れ高い。)いつの世も歴史は勝者の歴史だということを感じる。
それにしても今の所、今村作品に外れ無し。