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サロメ


サロメ

オスカー・ワイルドの「サロメ」を初めて読んだのは大学2回生の時の英語の教科書だった。先生もちょっとGっぽい(今と違って当時はLGBTという言葉は無かったのでお許しいただきたい。)雰囲気の方で、当時は「気持ち悪い話だなあ。授業で使っていいの?」という印象しかなかった。ただ、挿絵は何かで見たような気が漠然とではあるがしていた。単位を取るためだけに訳本として岩波文庫版の「サロメ(邦訳)」を買って読んだが、進級してからは完全に忘れていた。
数年前に図書館で偶然学生時代に訳本として使っていた岩波文庫版の「サロメ(邦訳)」を見つけ、たまには学生時代を思い出すのも悪くなかろうと手にした。当時の印象とそう変わるものではなかったし、挿絵についても同様だが、学生時代と違って今度はすんなりと出てきた。
私は「パタリロ」を始めとする魔夜峰央先生の漫画をよく読むのだが、その画風が似ているように思った。で、調べてみたら魔夜先生はオーブリー・ビアズリーに影響を受けており、そのオーブリー・ビアズリーが「サロメ」の挿絵を描いた画家ということで、そこで初めて「サロメ」とビアズリーがつながった。(それまでも知人がHNで使うくらいのビアズリー好きで名前は知っていたが、それだけだった。)
前置きが長くなったが、今回読んだのは原田マハさんの「サロメ」。
前から読んでみたいと思っていたのだが、今回ようやく読むことができた。
物語は「サロメ」の未発表版が古い劇場の床下から発見される所から始まる。その物語の作者とクライマックスの挿絵の画家は誰なのか、史実を元にしたミステリー。
物語はオーブリー・ビアズリーを巡るオスカー・ワイルド、オーブリーの姉のメイベル・ビアズリーの三角関係で進む。そこにワイルドの新作「サロメ」に各々の思惑が交錯して現在の我々が知っている「サロメ」が出来上がる。
裏ではオーブリーを手中に収めたいワイルド。(彼は男色家であったと言われている。)自分の描きたい絵を描くパトロンのつもりが、ワイルドと恋人関係になって、離れられなくなってしまったオーブリー。そんな二人の関係を切ろうとあの手この手を尽くすメイベル。(但し姉としてではなく、いつの間にか弟に恋する女性として。但しオーブリーの気持はワイルドから離れない。)ワイルドが収監された(当時同性愛は罪だった。)ことから破滅に向かう三人。衝撃的な物語であり、クライマックスだったが初めてワイルドの「サロメ」を読んだ時ほどの不気味さは感じなかった。


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