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【自由詩】拒む君へ

アル中ハイマー、と君は笑った
酒を飲まねば 酩酊せねば 自分の意見も述べられない
深刻な問題だと自覚だけはしていた

酒が入っていた時のことを 覚えていないと豪語する
普段 ニコニコ笑っていて
なににも不満がなさそうで
理不尽な迷惑を被っても 優しくスミマセンと言う
君は お酒に依存している
ひとたび酔えば別人となる
同じ体で 昼間の倍の声量で話す
気持ちよさそうにソファに沈み 社会への不満を朗々と述べ
ぶん殴るぞ と声を荒げて 虚空に拳を突き上げる

情けなく 哀れな君は もう 現実を見ていない
家族の悲しげな眼差しも 友だった私の失望も
アル中ハイマーなんだから 仕方ない 酒は痛み止めなんだ
いいえ 痛いところなんかないでしょうよ 二日酔いなだけだって
違う 痛みを抑えるためだ みんな なにもわかってない

君は 酒をかっくらう
自分で買いに行くこともしない 妻に 子に 買わせている
父ちゃん弱っているんだよう と 布団でか細い声を出し
与えられたアルコールを 儀式のように飲み干せば
ほら 別人
怒鳴り 叫び 暴力を示唆し
不満をこれでもかと並べ立てる
君は 毒吐く肉塊だね
酒を 学んでしまったんだね
アルコールが抜けたとき 自分になにもないことを
自覚するのが こわいんだね
人生の清算の時期に入っている
もう 息子もおじさんだ
君自身は何も成し遂げなかった そのことを酒で忘れようとしている

でもね 生きててくれただけで 本当はよかったんだよ
優しい夫で頼りになる父親だった頃は確実にあった
社会不適応は 誰だって起こすよ
あなたが会社を辞めたのは 誰の責任でもなかったよ
もちろん家族のせいでもない だから酒を買わせないで
前みたいに食卓を囲めばいい
これからでもまだやめられる
酒をやめて 戻っておいでよ
まだ 記憶が確かなうちに
やり直せたらいいのにと 思うよ

事実、雑感、生きた証をこれからも書いて参ります。 応援いただけるととても喜びます。