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故・相米慎二監督の誕生日記念!“演者のことをいちばんに”ここでしか聞けない相米監督の想い、制作秘話!『お引越し』4Kリマスター版📹秘蔵メイキング映像 ・トーク付き上映🎤【イベントレポート】

 この度、故・相米慎二監督の誕生日である1月13日(月・祝)に新宿武
蔵野館にて、相米慎二監督作品『お引越し』4K リマスター版の秘蔵メイキ
ング映像・トーク付き上映イベント
を開催しました。
『お引越し』の助監督で現在は日本映画大学准教授・原正弘さんと、『お引越し』のプロデューサー補・田辺順子さんの、”相米組”としてともに作品作りをしていたお二人をゲストにお迎えしました。
当時ではなかなか聞くことができなかったものの、現代になってようやく発
見できる貴重な秘話を時間いっぱい、たっぷりとお話しいただきました!

本イベントを行った1月13日は、相米慎二監督が存命なら77歳の誕生日。「生前、相米監督は初めて会った方にいつも『今日、俺の誕生日なんだよ』と(嘘を)言い、プレゼントを貰おうとするような人でしたが、今日は本当の誕生日です」と、『お引越し』プロデューサー補の田辺さん。そんな笑い話からトークは始まりました。

相米慎二は、先を見極める眼力を持っていた
「この映画に出て良かったと思ってもらえる作品にしたい」

 30年前にレンコを演じた田畑智子にとって、本作は初めての演技。メイキング映像では苦労している様子も垣間見えるが、そんな彼女が本作を通して成長していく姿を「本当にすごいですよね」と原さん。
「表情も素晴らしいし、(田畑さんは)走ったり、そういう動きの身体能力がすごく良かった」。田辺さんからも「所作がとても綺麗でしたね」と、”動き”が大きな決め手となったそう。
 そんな田畑さんとの撮影現場のエピソードは、「彼女の学校が終わるのを門で待ち受けて、遊びに行かさないように、近所の神社や、大学のボクシング同好会に連れて行ったり、ムーンウォークの練習に呼んだりしました」と、11 歳という遊び盛りの田畑が嫌がる胸中を十分に察しながらも、撮影に連れ出していたと告白。
監督との直接のコミュニケーションというよりは、田畑はスタッフとの交流が大きかったという。監督の指導についても「役の気持ちが云々とは別に、アクションとして何かを覚えるとか、そういうことは初めて演じる子に対してすごく力になったのでは。そういった監督の目論見はあったと思います」としつつ、いま改めて観ても親切な指導をしていたと振り返る原氏。田辺氏も同意しつつ、「ちょっとね、顔が怖いけど」と会場の笑いを誘った。
さらに原氏は、「『自分で考えて演じればいいんだ』っていう風に仕向けられていくので、だんだん良くなっていくのだと思います」と、撮影中の田畑の成長ぶりを挙げながら「映画1 本を背負うまで(田畑さんが)変われるのかどうかを見極めた、相米監督の本当に偉大な眼力が見事でした」と振り返った。

田辺順子氏、原正弘氏

 現在も俳優として活躍する田畑のように、相米監督作品に出演した俳優の多くが、現在の日本映画界をけん引する存在となっている。
田辺氏は、「相米監督は演者のことを1 番に思っていました」と話す。「子供たちを(キャスティングに)選んだ以上は、大事な時間を映画のために使ってもらうから、”この映画に出てよかったな”と思ってもらえる作品にしたい」と常々言っていたそうで、大人の俳優陣の時も「とにかく恥をかかせないように、この作品に出演したことで役者として認められるように」と重きを置いていたのだという。「自らが監督賞をもらうことよりも、俳優が賞をもらったりするとすごく喜んでいた」と裏話も披露された。

相米慎二監督

「みんな監督の味方になっちゃう」
次世代へと受け継がれる、作品に込められた思い

 『お引越し』ストーリーの後半は、実際のお祭りの中での大掛かりな撮影や、脚本にない内容が盛り込まれていた。特にレンコが森を彷徨い、琵琶湖で体験する一連のシーンについては監督が文字にすることもなく進行していったという。台本がなく、口立てで少しずつ進められた異例の撮影については「そんなの今では許されないでしょうね。ただ、その場にいたスタッフがみんな監督の味方になっちゃった。だから、みんな共犯ですよね」と笑いを誘う田辺氏。
結果的に撮ったシーンについて、原氏からは「実際にはなくても、話としては繋がるんですよね。でも、何度も編集したものを観る過程で、最後のクライマックスにつなげるためには”やっぱり必要なんだ”と体で分かってくるんですよね」と、言葉にならない体験を語った。
続けて田辺氏も、「舞台が京都ということで、しっかりその空気感や風景、京都の良さを、映画の中にきちっと描きたいと思っていたのかもしれませんね」と相米監督が語らずともスタッフに伝心していたであろう気持ちを代弁した。

ゲリラ撮影された琵琶湖シーン

今回、30 年前に制作された作品が4K リマスター版に蘇るにあたって、当時のスタッフとも相米監督が亡き今、話し合いを重ねた原氏は「こんな仕事って他にないな」と思ったという。
「今、映像も音も新しくなった状態で新しい観客が本作に出会って、かつ他の相米監督作品も観ていただいて、“こんなに面白い映画もあったんだな”と、何か新しいヒントにしていただけたらいいなと思います」と次世代へ受け継がれる希望を語った。
続けて田辺氏は、「今回の4K リマスター化は、読売テレビさんの賛同や、撮影監督・栗田豊通さんの”絶対に諦めない””最高のものを残さないと相米監督に怒られるぞ”という粘り強い努力があったからこそ生まれ変わったものだと思います」と想いを話し、今後も本作に限らず、相米監督作品が後世に語り継がれる存在になることを願ってトークの幕を閉じた。

【STORY】
『お引越し』

両親が別居。 はじめは家が2つできたと喜んだレンコも、次第に自身を取り巻く変化の大きさに気づかされていく――
京都に住む、明るく元気な小学6年生、レンコ。
父ケンイチが家を出て、母ナズナとの二人暮らしが始まった。
ナズナは新生活のための規則を作るが、変わっていこうとするナズナの気持ちがわからない。
レンコは、離婚届を隠したり、自宅で籠城作戦を決行したり、果てにはかつて家族で訪れた琵琶湖への小旅行を勝手に手配する…。

1993年/124分/日本
監督:相米慎二 脚本:奥寺佐渡子、小此木聡 原作:ひこ・田中「お引越し」
製作:伊地智啓、安田匡裕 撮影:栗田豊通
出演:中井貴一、桜田淳子、田畑智子、笑福亭鶴瓶

『夏の庭 The Friends』
「死」への興味から、奇妙な老人と関わりを持った小6トリオのひと夏の成長記。
木山、河辺、山下の小6トリオは、祖母の葬式に出席した山下の話を聞き、「死」に興味を持ちはじめる。
近所に住む一人暮らしのおじいさんがもうすぐ死にそうだ、と聞きつけた3人は、家を張り込むことに。
はじめは少年たちを追い返そうとしたおじいさんも、次第に彼らを受け入れ始める。
そんなとき、ひとりぼっちのおじいさんのために、3人はある計画を思いつく…。

1994年/113分/日本
監督:相米慎二 脚本:田中陽造 原作:湯本香樹実 撮影:篠田昇
出演:三國連太郎、坂田直樹、王泰貴、牧野憲一、戸田菜穂、笑福亭鶴瓶

Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、
新宿武蔵野館ほか絶賛上映中

公式HP / 公式X

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