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やさしさは、顔に出る。

***

友達のお家でご飯を食べることになって、
スーパーで買い出しをして、割り勘で会計したところ500円が余った。
コンビニでも寄ってお菓子を買って分けよう、
ということになりスーパーを出ると、
フライドポテトのキッチンカーが出入り口に停まっていた。
Lサイズでちょうど500円。
バターやコンソメ、塩など、好みのフレーバーを選ぶことができた。

「500円だし、ちょうどいいじゃん!これにしよう!」
とわたし。友達も同意してくれて、キッチンカーへと向かう。
彼女といるとサクサク物事が進むのが、一緒にいて気楽で楽しい理由のひとつだ。
メニューを見ながら、
「いっぱい種類があって迷うねえ…せーので決めよう」
そういってわたしが「せーのっ」と掛け声を出す。
「のり塩!」と叫んだのはわたしで、
「コンソメ!」といったのは友達。
息が合わず、お笑い芸人にようにがっくりとコケる。
するとキッチンカーにいたおじさんが声を出して笑いながら、
「いいよいいよ、半分にしてあげるから、2人とも好きな味言いな」
と言って、Lサイズを半分に分けてそれぞれのフレーバーでポテトを作ってくれた。
「粉がかかってるから、よく振って食べてね」
というおじさんのアドバイスを忠実に守り、一心不乱に紙袋を振っていたら思ったよりガサガサ音が大きく、
「うるさい!」と爆笑しながら友達に注意されてしまった。
そんな楽しい気持ちで帰路についた。

友達の家に帰り買ったお惣菜をアテにお酒を飲みながら、
(食いしん坊なのでポテトは帰りの車内であっという間に食べてしまった)
「1人でいる時も多いんだけど、さきこといると顕著なんだよね」
と友達が語りだす。

聞くと、
“2人でいる時、店員さんなどに声をかけられて得をすることが多い”
ということだった。
確かに、こういった出来事ことは一度だけではなく、
以前2人で港町にドライブに行った時、
市場で岩牡蠣を食べようと列に並んだところ、
「2人はちょっと横に避けて待ってて」
と言われ後に回されてしまったことがある。
失礼なことでもしたのかと不思議に思っていると、
岩牡蠣を剥いていたおじさんが、
「はい!2人には大きいの、選んどいたから!」
と言って特別大きい牡蠣を渡してくれた。
2人とも大喜びでお礼を言って美味しくいただいた。
「可愛いって、得だねえ」
と、牡蠣を頬張りながら冗談半分に友達が呟き2人で笑った。

***

道ゆく人によく道を尋ねられる、という境遇を持つ人がいるという話を聞く。
わたしやその友達も例外ではなく、
地元だけでなく旅先などでも声をかけられたことは一度や二度ではない。
お互い温泉が好きなので温泉に行くことが多く、
お湯に浸かってぼーっとしているだけで他のお客さん(主におばあちゃん)に声をかけられることもある。
2人ともカメラを下げていることが多いので「写真撮ってくれませんか?」とかも。

2人でいるときは声がでかい、というのは一つの要因であると思う。
列に並んで待っているときも「楽しみだねえ」「美味しそうだねえ」と話しながらご機嫌に待っているので、
他の人々を排除しない声をかけやすい雰囲気があるのだと思う、おそらく。

***

「この歳になってようやく、そのことを楽しめるようになってきた」
と、友達は言う。
あのときも、そういえばあのときも、と声をかけられた思い出を語りながら、
話しかけられることは嬉しいことだなあとわたしも思った。

***

性格は顔に出る、とはよく言ったものだけど、
接客業を長くしていると本当にそうだなあと思う。
実際、穏やかそうな顔をした人は店員にも穏やかに優しく接してくれることが多いし、
キツそうな顔をした人は店員にもキツく当たることが多い、気がする。
(一見キツイかと思って気構えて接客すると真逆のいい人で、途端に好きになってしまうこともよくあるんだけど)

だからこそ、声をかけられやすい、というこの性質は喜ばしいことだと思う。
雰囲気が優しそう、ということだから。
わたしも友人もパッと目を引くような派手なタイプではないので、
尚更だと思う。いつも冗談を言い合ってはヘラヘラゲラゲラ笑っている。

2人ともこの歳までそんなふうにカラッとしてこれたのは、
他人から優しさを与えられる機会が多かったからだと思う。
人に優しくされることが当たり前になったおかげで、
自分が誰かに優しくすることも普通になれた。
その日の夜は、
友達のお母さんが前もって干しておいてくれた温かいお布団にくるまって、
優しさに包まれながら眠りについた。

***

余談だが、この性格とこの雰囲気のまま年老いていって、
おばあちゃんになったら2人で“縁側みたいなカフェ”を開くのがちょっとした夢である。
縁側みたいに日当たりが良くて優しいお店で、
熱々の煎茶と具沢山のお味噌汁を出すのだ。



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