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Sweet Stories Scrap マンスリー Vol.3 2020/10
noteマガジン「Sweet Stories Scrap(SSS)」はnoteに発表されている小説の中から、独断と偏見で選ぶ『ステキな小説のスクラップブック』。月イチで批評を記事にして配信中(今回で3回目。前回記事も読め。いや、お願いだから読んで)。noteで気に入った作品があったら、ぜひ教えてくれっ✌️
めっきり秋らしくなって寒くなってきたので腹巻きしなきゃと思ってます。皆さんは寒くなったらどんな格好で寝とるんスか?
さて、今月の3作品。
世にも奇妙なホームヘルパー/文月ノベル
この作品を選ぶのにちょっと悩んだ。ストーリーの展開がとても面白いのだけれど、それだけに難しく、それだけに十分に伝わるような文章力が必要で、にしては少し舌足らずなところがあるからだ。
それでも選んだのは「え?ナニ?どういうこと?」という驚きを感じたから。感じてしまったから。芥川の『藪の中』みたいに、読み終わってもなお本当は一体何がどうなったのかわからないモヤモヤ感が残る。その引っ掛かりが何だか良いと思ったから。だから、ここに載せることにした。
ちなみに、意地悪ながら指摘しておくと、主人公が夫が大好きないちご大福について次のように言う下りがある。
「どうして、そんな辺鄙な食べ物が好きなのかしら。変なの」
へんぴ(辺鄙)というのは「遠く離れた」って意味。この後、このいちご大福のエピソードを例えに引いて最後のスリリングな場面へと繋げる伏線の張り方が見事なだけに、この誤用はちょいと残念。言葉の意味に少しでも自信がない時には辞書を引こう(自省を込めて言ってます)。
ミナト植物園/猫野サラ
ヤラれた。まったく人を食った話の展開である。前半と後半でまったく作品のノリが違う。前半の緊張感に比して、後半は「何やねん、それ。もう読むんやめたろか」といった気持ちになる。酷評?いえいえ褒めてるんです。まあ、読んでみたまえ。
ちなみに余談だが、作者の猫野サラさんはイラストレーターらしく、SSS Vol.1で選んだ作品のタイトル画を書いた人らしい。この人の描く絵のテイストが好きなので今回からしばらくタイトル画に使わせてもらいますっ!
スペシャルホリデー/みずき
「ただいま、線路上に羊の群れを確認したため、運転を見合わせております」
こんな車掌のアナウンスから始まる展開。これまた「何じゃコリャ?」という現実離れしたお話。そして、読み終わった後に「この小説の羊って何のメタファーなんだろう」と深読みをしてしまう。作者の頭にはひょっとすると「これは○○の例えなんです」というのがあるのかもしれない。
が、そんなことは知ったこっちゃないのである。
作品の細部(あるいは全体)からどういう意味を取り出すかは読者に委ねられているのだと、私は思う。何通りもの意味を与えることが出来る作品はそれだけで大きな魅力があると思う。
作者のみずきさんが発行してるnoteマガジン『ベッドサイドストーリース』がユニーク。(写真+短編小説+短歌)で一つの記事を構成。週3回更新って凄いなあ。こちとら月イチでもしんどいのに。要チャックや!
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期せずして、「予想外の展開」が見事な作品を選ぶこととなった今回。ネタバレしては面白くないので、何となく消化不良になった感は否めず、そこが反省点。そしてお別れの曲は筒美京平さんを偲んでこの曲で。
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