情熱も希望もなかった3年前。「ユーザーに届けたい」という思いが、開発者人生を揺るがした
今回はWebエンジニアの瀬戸さんにお話を聞きました。
入社後、プロダクトリリースに向けて士気が高まるチームの中で、瀬戸さんは一人悶々とした思いを抱えていたと言います。開発者としての情熱も意思もなく、当時はただ苦しい日々を過ごしていたそうです。そんな瀬戸さんを変えたのは、初めて見た“ある光景”でした。開発者として目覚めた瀬戸さんは現在、多くのプロダクトを生み出す傍ら、マネジメントにも熱を注ぎます。この3年で、瀬戸さんにどのような変化があったのでしょうか。
瀬戸 康大|Webエンジニア
開発者としての自分を見失い、苦しんだ時期
瀬戸さんは前職で、社内向け製品を作るエンジニアをしていました。
「固定資産管理システムのモックアップを作っていました。実際にユーザーが使うものではなく、社内のデモや上長のレビュー時に使うための紙芝居のようなものです。社内向けだったためユーザーの声を聞く機会は一度もなく、『これを作って本当に意味があるのだろうか』と虚しく感じてしまうこともありました」
何度開発しても、ユーザーには永遠に届かない。そんなもどかしさを抱えた瀬戸さんは、創業半年後のビットキーに入社する決意を固めます。前職の先輩からの誘いでした。
「前職では、開発者としてのパッションもWILLも失いかけていました。自分に何ができるのか、どういうことがしたいのか、宙ぶらりんの状態だったんです。だからこそ、ビットキーの話を聞いたときに、『自分を変える二度とない機会かもしれない』と感じました。前職で優秀だと言われていた方々が、高い目標を掲げて会社を立ち上げている。その中に入ったら、自分も少しは開発者として頑張る意味を見出せるような気がしたんです」
しかし、思い描いていた未来への道のりは険しいものでした。
「入社してから1年はつらかったですよ、本当に(笑)。人一倍実装できないし、コミュニケーションも下手だし、同期で入った斎藤くんもすごく優秀で、自分は無能だなという気持ちが強くて。ビットキーのために何もできていないという思いがずっとありました。でも、ここで辞めたら優秀な人たちに全く追いつけないままだ、逃げたら一生開発者としての喜びを味わえないと、なんとか自分を奮い立たせてましたね」
死にものぐるいで取り組んできた瀬戸さんに届いたものは、思いがけないギフトでした。
現場に出て初めて知った、お客様に使っていただく喜び
2019年12月、プロダクトの導入体制に変革が起こります。これまでCX(カスタマーエクスペリエンス)が行っていたプロダクト導入に、開発者自身も同行する決定がなされました。瀬戸さんも導入担当とともにユーザーのもとへ出向く機会を得ます。
「そこで初めて、ユーザーがビットロックを開けたり、管理画面を開いて解錠権限を与えようとしている様子を目の当たりにしたんです。自分で作ったプロダクトが本当にユーザーに届いているんだと知り、心底感動しました。前職からずっと『自分のやっている開発は意味があるのか』と不安だったのですが、ようやくここで『意味があった』と思えました。ユーザーが実際にプロダクトを手にして、喜んでくれている。目に焼き付いたその姿が、僕を現在まで鼓舞し続けてくれました」
心のもやが晴れ、仕事に対する一切の迷いがなくなったそうです。
「あのときスイッチが入ったんでしょうね。どんどんプロダクトの導入が決まっている今、一日でも早くユーザーに機能を使ってもらいたいという思いしかないです」
また、ユーザー先に出向いたことで、瀬戸さんはもう一つの収穫を得たと言います。
「導入を担当するCXポジションの大変さ、つらさも同時に知りました。もし製品に不具合があれば、お叱りを受けるのは開発ではなくCXのみなさんです。実務上の会話だけだと、感情的な部分って見えづらいんですよね。僕が思っていた以上に、多くの人たちが製品に関わっていて、見えないつらさもそこにあるんだと理解しました」
瀬戸さんはこの日を境に、コミュニケーションに対する考え方を抜本的に変えました。
分け隔てなく、ワンチームでやっていく大切さ
「CXの思いを知らずに、開発側が一方的にコミュニケーションを取ってはうまくいかないと思いました。そこで、『その人に関するたくさんの情報を集めること』『しっかり会話をすること』を心がけ、相手の立場になれるよう努めました。Slackで済むような内容も直接会話しに行ったり、用もないのにCXの席にお邪魔して仕事したり(笑)。一見不思議な行動だったかもしれませんが、雑談含めて本当にたくさん会話したおかげで、CXのみなさんを深く理解できるようになりました」
CXのみならず、現在瀬戸さんがマネジメントを担当している業務委託の方々にも、同様のコミュニケーションスタイルを取っているそうです。
「朝会に雑談の制度を取り入れたんですよね。全然業務に関係ない話をすることで、コミュニケーションのきっかけを作りました。チームの状況を可能な限り明文化するよう心がけたり、1on1もしましたね。マネジメントの対象ではない方も含め、僕が一番業務委託の方々と会話してきた自信があります」
瀬戸さんの行動には、明確な意図があったと言います。
「業務委託と我々って、一定の距離が出てしまうものだと思っています。でもその結果、話しづらくなってしまうのは嫌だったんです。せっかく僕らと一緒に、同じ方向を見て開発してくれているので、『もっとこうしたらいいんじゃないか』と議論しながら作っていきたくて。僕は創業期に入ったメンバーと比べても能力が高くない方なので、1人でやっても限界があると感じていました。だから、色んな人の考えや力を借りて、常にいいものを作っていきたいんですよね」
瀬戸さんは柔らかな表情を浮かべながら、もう一つの理由を述べます。
「それに、シンプルですけど楽しくやりたいです。楽しく仕事をして、なおかついいものを作れるチームにしたいなと。『ちょっとつらいこともあるけど、一緒に楽しくやっていこう』という雰囲気を、ビットキー社員も業務委託も関係なくみんなで作りたいですね」
同じ目線を大切に、常にフラットな関係性で。瀬戸さんの人と向き合うスタンスが光るエピソードでした。
先を走り続けるメンバーに、いつか必ず追いつきたい
開発者として開眼した瀬戸さんに、これから何を目指すのか問いかけました。
「開発者であることの意味を見出してから、これまでがむしゃらに走ってきました。その過程で、ビルにworkhubが導入されたり、SMBのお客様にたくさん製品を選んでいただいたり、一定の成果を上げられたと思っています。でも、自分の能力を向上させられたかというと、正直なんとも言えないんですよね。猪突猛進でやってきましたが、これからはもう少し落ち着いて、着実に開発者としての能力を高めていきたいです。今、白木さんという技術力の高い方が僕のチームにいてくれているんですけど、もし白木さんがいなくなったらチームで同じ成果は出せないと思います。ユーザーに機能をもっと提供していくためには、今の自分では全然能力が足りないです」
3年間で目まぐるしい成果を上げているにもかかわらず、瀬戸さんの自己評価は厳しすぎるのではないでしょうか?
「僕の前には、ずっと同じ人たちが走っているんですよ。町田さん、白木さん、斎藤くん。僕より遅く入社した古川さん、菊地さん。僕よりもずっと先を走り続けていて、全然追いつけないなって思います。できることが増えてきた実感はもちろんあるんですけど、じゃあ追いついたかっていうと全くです。僕より優秀な人たちがこんなに頑張っているのに、僕が頑張らないわけにはいきません。もし自己評価が低いんだとすると、僕以外の人たちがいつも先を走り続けていることが理由ですね」
いつか追い越してやる、そんなエネルギーや負けん気を抱くこともあるのか、率直な思いを聞きました。
「追い越してやる、という攻撃的なエネルギーはないです。ただ純粋に『力になりたい』ですね。同じチームメンバーとして、ビットキーの掲げる世界観をworkという領域で実現する仲間として。少しでも早く追いついて、もっと頼りにされる開発者になりたいです」
情熱も希望も失っていた3年前。無我夢中で駆け抜けた先に瀬戸さんが手にしたものは、信頼を寄せる多くの仲間と、開発者としての揺るぎない信念でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?