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貧乏蟹雑炊

金沢では、ずわい蟹漁は毎年11月の第1週に解禁される。「香箱蟹」と呼ばれるずわい蟹のメスについては、そこから1月の第1週で漁期が終わる。雄のほうは3月いっぱい獲ることができる。メスの香箱蟹の漁期が短いのは、資源保護のためだ。

晩御飯の時に、「今年は、まだ一回も蟹食べてないわ。」とつぶやいたら、妻から「わたしも食べてない。せめて年に一回くらいは食べたい。」と返ってきた。

12月も中旬になって、このままボヤボヤしていると、あっという間に年末になって、香箱蟹の漁期が終わってしまうので、思いついた時に食べようということになり、妻が金曜日の仕事帰りに、地元のデパート、香林坊大和の地下の食料品売り場で、香箱蟹を4杯かってきてくれた。

一杯1,300円で買ったらしい。安ければ数百円、高ければ3,000円近くする香箱蟹としては中くらいのランク。手に持ってみると、そこそこ重みを感じる。ずっしり重いほうが身が詰まっておいしい。

ちなみに、蟹を買うなら香林坊大和の鮮魚売り場はおすすめ。品質は間違いないし、近江町市場のように混んでいない。遠方へ宅急便で送る際にも丁寧に対応してもらえる。

金曜日の晩御飯に早速食べた。まず、ダイニングテーブルに新聞紙を敷き詰めて、食べ散らかしても片付けやすいように準備。蟹を並べた大皿をテーブルの中央に置いてスタート。集中してひたすら蟹に向き合う。

まずは、外子とよばれる暗赤色の卵が入った蟹のお腹側の殻を外す。殻の内側にびっしりと着いた外子をはずしながら食べる。外子は味が薄いので、酢醤油をつけるのが好み。

外子を食べおわっったら、背中側の大きな甲羅を外す。お尻の部分に爪をひっかけて甲羅をめくりあげると、甲羅の内側に鮮やかな紅色の内子と、灰色の蟹味噌が詰まっているので、指でつまむなり、すくうなりして食べる。

甲羅を外した胴体の真ん中にも、内子と蟹味噌がつまっているので、指でていねいにすくって食べる。スプーンをつかってかき出すのが上品だが、指の方がきれいにとれる。食べ終わったら指はしゃぶっておく。

あとは足の根元の部分の身、足の身を食べる。香箱蟹は図体が小さいこともあって、身の部分を取り出すのは面倒な割に、雄の身ほどプリプリするわけでもなく見返りが少ない。私は、それほど好きでない。今回は2杯分の身を小皿にまとめて取り出して、酢醤油をかけて一気に食べた。

私は蟹を2杯食べて満足したものの、妻は蟹雑炊が食べたいという。蟹雑炊したいのは、やまやまだが蟹は今全部食べてしまって、甲羅、殻しか残っていない。甲羅、殻しか残っていないけれど、これを煮出したら、いい蟹の出汁がでるんじゃないか。そうだ、そうに違いない。

ということで、蟹の甲羅と殻と昆布を鍋に入れて15分ほど煮込んでみた。一口すすってみると確かに蟹の香りがする。かにの味もしないわけではないが、蟹肉なしのぬけ殻だけなのでやや薄い。

蟹味は薄めだったが、溶き卵をいれて塩味を補ったらそれなりの蟹雑炊になった。思いつきで作ってみた貧乏蟹雑炊、そこそこうまい。

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