切り続ける。
自分の中にある【スイッチ】を切り続ける。
そうだ。
立場は違うが、二階堂奥歯も書いていた。
幼稚園から、小学校に入学する日。複数の学校関係者の好奇の目に、わたしは晒されていた。
何故か?
幼稚園で受けた知能テストの後日、職員室に、父親と呼び出された。
「結果があり得ない」と言う事で、応接室の重厚なソファに座らされて、再度テストを受けさせられたからだ。
父親は、退室させられて、6才の子供に対して、大人が5人。
とても怖かった記憶を覚えている。
担任の先生も、厄介者のような目で射抜く。
いわゆる【知能指数の高い子】のレッテルが、背中に貼られた瞬間だった。
不気味な子供を観るように。
田舎の町では、目立った行動は慎まなくてはならない。まして外部から、その町にやって来たばかりの
新参者は、生き難くなる。
父親は、毎日のように
「皆んなと同じように…普通に…」と呪文を、
唱える儀式のように繰り返した。
まるで犬に人間世界で、共存出来る為のしつけをするように。
何かを覚えたりする時、わたしは写真機でシャッターを切るように記憶した。其れは誰かに教わった訳でもなく、物心ついた時には既にそうだっただけで、音楽を流しながら、教科書と歌詞まで覚えるのも日課になっていた。検定や試験も、苦ではなかった。
大人になって、大学を卒業後、弁護士になった女性が、メディアで全く同じ事を公言していたのを観て、
『ああ、わたし以外にもいたんだ…』という安堵を感じた時は忘れられない。
勉強より、部屋に篭って、本の世界に浸るのが好きだったわたしは、その頃から、必死に自分の中の【スイッチ】を切った。
脳が記憶を追う速度を鈍くするように。
目に入る情報を少なくするように。
何より、脳をフル稼働すると、感性が薄くなってしまうと絶望していたから。非常に疲れる。
好きな絵本や童話の世界は、救いだ。
創作の中に、ピタッとフィットするには、
感性そのもので体感するには、
この脳は、邪魔者で、要らない。
だから、切り続ける。
父親は、「おんなが幸せになるには、優れていてもダメなんだ」と諦めたように言った。
そのまま、死んで、灰になった。
【スイッチ】を切り忘れると、タッチパネル操作でもしているように、みえないはずの数字、数式のようなものが、自動で流れる時がある。誰かの雑念のような思想も、自分なのか?他人なのか?
追ってしまえば、その思考回路の海にのまれて、戻れなくなり、現実か仮想なのかも理解することも、忘れたロボットのような、硬い隙間から逃げられなくなる。
だから、【スイッチ】を切り続ける。
分かってしまったとしても、無言を守る。
だいぶ、脳の扱い方も慣れて、
現実を色濃く、生きている。
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