映画 「聖者たちの食卓」
監督フィリップ・ウィチュス(Philippe Witjes) 1966年、ベルギーの首都ブリュッセル生まれ。
映像作家兼フリーの料理人。料理評論家としても活躍中。「聖者たちの食卓」は、2012年の東京国際映画祭「ナチュラルTIFF」部門にてグランプリを受賞している。
インド北西部の都市、アムリトサル。
パンジャーブ州にあり、パキスタンとの国境付近にある。
シク教徒にとって神聖な寺院
(16世紀にグル・ナーナクが始めた宗教)
それが、ハリマンディル・サーヒブ
黄金寺院だ。
毎日10万食もの豆カレーを、巡礼者や旅行者のために、無料で提供している。
皆が公平に温かい食事を食べることが出来る
正に「聖なるキッチン」だ。
感想は、「圧巻、いや、凄い!…」の一言。
インドと言えば、階級(カースト制)があるはず…
何で、男性、女性、子供が、皆同じ場所に居るんだ?
と思ってたら…
10万人の食堂「ランガル(=無料食堂)」のルール
◆寺院に入る前は、手を洗い、靴を預け、足を清める
◆宗教、階級はもちろん、女性、男性、子どもがすべて一緒に座る
◆ターバンまたは、タオルを着用(レンタル有)
◆残さず全部食べること、お代わりは自由
◆使った食器は指定の場所へ戻す
◆酒、たばこ、革製品の持ち込みは禁止
◆一度の食事を5,000人でとるので、譲りあいを忘れない
本当にドキュメンタリー映画なので、
特にストーリー展開があるわけでもありません。
本当に無料食堂の人々の日常があるだけ。
材料の収穫。
材料の運搬。
材料の下準備。
(機械じゃなく、手を使いナイフで刻むのです)
無数のニンニク、
玉ねぎ、(そりゃ、涙目になりますよ)
じゃがいも、
豆剥き、(うわー面倒だよね)
火を起こす為の大量の薪、
カレーを大鍋で作る、
小麦を捏ね、丸め、
一枚ずつ伸ばし、
チャパティを焼く、
配給する(ちょっと雑で笑った)
作業中の人々の、生命力溢れる、活き活きとした
姿が印象的だった。瞳が光っていた。
(300人ものボランティアが、それぞれ、大変さを
気負うことなく分業、手際よく、当たり前のことを当たり前にこなしています)
“同じ鍋の飯を食べたら、みんな兄弟”
そんな事を体現しているようだ。
食器の片付けも、圧巻。
(皆、手慣れている)
洗った皿を、収納カゴに、投げる、投げる。
(寸分違わぬリズムで)
**現世の無私の奉仕(セーワー)が
天国での栄光を約束する **
シク教聖典より
実は、悲しい歴史もあり、この地で亡くなった人々も
いる。生と死は人生を色濃く留める。
映画のラストに、この字幕が流れる。
インドの黄金寺院で施される
日に10万人分の食事を
人々の無償労働(セーワー)が支える
導師たちが無料食堂(ランガル)を
始めた600年前には
階級、性別、宗教が違えば
食事の場を共有することも
同じ鍋のものを食べることもありえなかった
人々が生まれも階級も気にすることなく
簡単な食事を共に用意し
共に食べる尊い光景は
今もなお ここでしか見ることができない
神を通じて、信仰というものが、如何に尊く、
人間と人間を繋ぐ力に成るという事を、
考えさせられました。
そして、《争うくらいなら、腹を満たせ》
と言う事も。
皆で一緒に同じものを食べる。
お腹を満たせれば、大概のことは丸く収まる。
食べることは、生きること。
そんな事も思った。
台風19号、皆さまくれぐれも気をつけて下さい。
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