見出し画像

野菜の値段はこんなに変わる!?春のたけのこ相場の舞台裏

こんにちは。美食倶楽部運営メンバーで本業八百屋の近藤です。ありがたいことに前回記事に大きな反響を頂きました。

特にピックアップしたかったのが、とある農家さんから頂いたこちらのコメント。

スクリーンショット 2021-04-12 11.09.22

この後やりとりがとても白熱しました。これについて、アンサー記事を書こうと考えていたところ、ちょうどおもしろい事が起こったので筆をとりました。

たけのこ大豊作

たけのこは大体隔年で、豊作(表年)と不作(裏年)が繰り返されます。(理由はいろいろ諸説あるっぽいのですが、生物学的には完全に解明されていないみたいです)。

今年は京都のたけのこが表年(おもてどし)。また、今年は3月からかなり温かい天候が続いたこともあって、例年よりは二週間くらい市場への出荷状況も早まっているな〜、という印象でした。

本題に入る前に一つ八百屋として言いたいことがありまして。

私は3店舗ほど月替りのコースメニューを提供している飲食店と取引があるのですが、コースメニューに使って頂く野菜って提案するのが難しくて!
「コースメニューのしがらみ」があるんです。

その顕著な事例が今年のたけのこ。月替りコースだとたけのこは4月に使われることが多くて、3月はメニューから外れることが多いです。

しかし!今年は!出が早い!3月の終わりには既にたけのこが安値に!うーん、どうなる4月……。

たけのこと価格、相場の決まり方

3月の終わり。

たけのこの落ち値(セリの入札額)はキロ800円以下になっていました。もちろん、産地、サイズなどによって差はあるのですが、京都中央市場では例年この時期だと秀品(A品)で大体キロ1000円ほど。キロ800円切ったらかなり手頃感でて、キロ600円切ると大丈夫?って感じだと思ってください。

たけのこの価格の決まり方は需要と供給のバランス、例年の相場感みたいなものがまず第一です。そしてもう一つ、等級という要素があります。

等級は「味」ではなく「見た目」で決まります。たけのこの場合は「白子のたけのこ」という言葉があるように、真っ白のきれいなものが「上」※普通の野菜には無いランク。それから「秀「優」「キズ」と3ランクで分類されるのが基本です。

ちなみに他の野菜も「秀」「優」「良」など3段階で等級付けされることが多いです。消費者目線だと、値段が高いということは美味しいってことよね、と思いがちですが、野菜の値付けは「味」ではなくて「見た目」で決まることが多いというのは知っておいて頂きたいことです。

画像2

このトマト箱のような形式で、基本的に農産物には等級と階級(サイズ)が記載されています。

たけのこの入荷状況が変化。その時八百屋は見た!

本題に入ります。4月に入り例年だと、さあいよいよたけのこ大量入荷!売り出し時ですね!っていう期待感があるのですが、今年はもう既に旬真っ盛りという感じ。いよいよ秀品でもセリでキロ600円に。安いです。完全に。

そしてついに先日、他の野菜と同じように様仲卸さんより、「今日12ケース捌いてもらえませんか」との連絡が。(前回記事に書いた通り、市場で余った野菜は仲卸さんや八百屋の付き合いの中でなんとか流通させる努力をしているのです)。

いつもはB品のフードロス野菜ばかり投稿する当店のTwitterの腕がなるところで、たけのこなら売れるで…ということで、早速投稿。

水菜とかは葉物はフードロス投稿をしてもなかなか捌けませんが、たけのこの安売りは強力。おかげさまできれいに捌けました。

ここからが面白い話。
時を戻しまして、その12ケース捌いた日の朝セリのこと。安値が続くたけのこのセリで相場を見ていたところ、どこからともなく「この週末、どうにかしなあかんな〜」との声が…。さて、この言葉の意味するところは…!

そして週末。
土曜日の朝―セリ場について私は驚きました。たけのこ、少ないーーーー!!!

写真が無いので目撃証言になりますが、急に3割ほど位入荷量が減っていました。これは、先を見据えて出荷調整された???

価格も一気に倍です。まあでも、倍と言っても平年並みくらいの価格に戻っただけなので、それで当たり前かなというのが、仕入れる側の感想です。

その後の価格相場は、収穫時期が早かったこともあり大豊作感も薄れ、徐々に需要と供給のバランスが取れてこなれてきたというのが、現在の状況です。

実際に市場と筍農家さんの間でどういう調整がなされたのかは、定かではありません。たけのこは、収穫期に各産地で特設の直売場も設けられますので、市場出荷が限定されても直売所での販売などで農家さんも調整できるのかもしれません。

中間マージンの搾取など悪者にされがちな市場流通ですが、相場が崩れすぎ無いように、農家さんも相応の売上が作れるように、バランスを取るという大事な仕事もされているのではないでしょうか。

収穫した分は値下がりしても市場出荷した方がいいのか、それとも価格相場を維持するために出荷量を調整したほうが良いのか出荷される側のご意見も聞いてみたいところです。

作物によってもきっと違うと思います。たけのこは茹でて売れるので、八百屋的にはたくさんあっても困らない野菜の一つではあります。

画像3


青果流通の現場では、市場-仲卸-八百屋それぞれがなるべく需要と供給のバランスが整うように仕事をしています。

それでもそこにギャップが生まれ、市場流通でも過剰在庫が生まれることがあります。西喜商店(近藤の八百屋)でも積極的に、市場に滞留した野菜を引き受けて少しでもフードロスが減るように努力をしています。

大規模流通下では、それぞれの立場の思惑が入り交じるために、いつもみんなが幸せになる状況を作るのは難しいです。

一方で、このたけのこの販売状況から見ても
みんなが安く野菜を買い叩こうとしているわけではなく、日本の食料安全保障を支えるために、
生産者にも消費者にも喜んでもらうためにはどうすればいいか考えながら仕事をしているということを知ってもらえれば嬉しいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?