陶芸家の彼女は“ダメ男”をつかまえた? 映画『ゴースト』を見て
率直に『ゴースト/ニューヨークの幻』のサムって、ダメ男じゃないですか……?
20年ぶりくらいに見返して、やっぱり私には合わない映画でした。
特に何がって、主人公のサム・ウィート。
「椅子に座れるのにドアはすり抜けるゴースト」という設定も腑に落ちないんですが、それよりもサム。あぁサム。
デミ・ムーア演じるモリーがかわいいだけに「……あぁ」と。
これって「アーティストはイマイチな恋人を選んじゃう?」って話?
まずは彼女を知ろう
まず、ヒロインのモリーがどういう女性かを、あらすじ抜きに、適当におさらいします。
彼女は新進気鋭の陶芸家。年齢はわからないけれど、演じていたデミ・ムーアが当時28歳頃らしいので、まあその前後。
アパートに、ろくろを置き、アトリエにするなど、制作意欲も満ち溢れていると言っていいでしょう。
見た目はとてもチャーミング。
マッシュルームカットが行動的な性格を感じさせます。
後にケバい印象が強まるデミ・ムーアも、この映画ではナチュラル。
個人的には首が太い感じもするけれど、そこに彼女の強さも感じるし、魅力的です。
モリー、彼でいいの?
そんなモリーの恋人が、サムです。
銀行員として、同僚の不正の糸口に気づくことから、優秀そう。
そして、何よりモリーを愛している。そこは十分に伝わってきます。
ただ、まあ私は「モリー、彼でいいの?」と。
以下、彼がモリーにとっては“ダメ男”じゃないかという3つのポイントです。
1.作品づくりの邪魔しちゃダメでしょ
私は序盤で、モリーが大事にしているものをサムが大事にしていないんじゃない、と思っちゃったんです。
それが1つ目のポイントであり、最大のポイント。
例のろくろ回しのシーン。
眠れず、ろくろを回して作品を作るモリー。後ろから腕を回すサム。ぐちゃっと崩れる作品……。
ナイでしょ。
陶芸家の彼女の作品づくりを邪魔しちゃうのって、どうなの。
まあ、彼女はそれを嫌がってはいませんが。
でも私には引っ掛かって、昔も今も、この映画で一番有名なシーンがハマりませんでした。名曲「アンチェインドメロディ」も響かない。
2.好きなものを一緒に楽しめないのダメでしょ
2つ目のポイントが、サムとモリーは同じものを楽しめていないんじゃないかということ。
ある晩「マクベス」の劇を観て、帰る2人。
はい、ストップ!
隣で寝ちゃうのは仕方ない、いびきかくのも無意識だし100歩譲って仕方がない(嫌だけど)。
でも、そこでテキトーな感想まで言わなくってもいいのに。
この2人は、作品とかに対して感想を言い合うようなパートナーではないんだなあ。
会話は続きます。
……なんか全然響かない。
テキトーに観劇するような相手から「僕の批評が本当だ」と言われても。
でも、モリーは楽しそう。
直後、結婚したいって言うし。
そして、サムは「結婚したい」とも「愛してる」とも言わない。
お節介にも私は思うわけです。「モリー、彼でいいの?」
3.わるい男友達ってダメでしょ
極めつけは、友達がそもそも厄介ですよね。
サムの同僚、カールは、銀行で不正行為をして、それがバレそうになったから暴漢にサムを襲わせて殺しちゃう。その後も、死んだ同僚の恋人だったモリーに手を出そうとする――。
カールが最悪な男であることは間違いなく、そのせいでモリーは大変な思いをする。
サムがカールと友達でなかったら……と思わなくもない。
ろくな男友達がいない……あぁサム!
わかっています、そんな映画じゃないことは
まあ、わかってます。
それでも、サムは死んでもモリーを守ろうとするわけで「愛してる」って最後にはちゃんと言うわけで。
でもねえ、モリー。
陶芸家として作品制作の邪魔をされたり、劇の感想を言い合えなかったり、挙句、彼の男友達のせいで命の危険にもさらされるって……
たいていな男を捕まえてやしないかい?
価値観だから、いいんですけれど。
銀行員という一般的にはまともな仕事(給料もいい)に就く彼と、芸術肌の彼女というカップリングは確かにあると思うし。
ただ、これがヒットして、わりとサムが良い恋人というイメージが多いのって。
私には、なんか引っかかるんですよねえ。
追記)ここでの本筋とは離れますが、この映画のウーピー・ゴールドバーグは最高です。ウーピーのシーンは安心して観られます。彼女演じる霊能力者オダ・メイも、サムに巻き込まれて迷惑を被ってる一人だけれど。
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