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アートに投票すること。「びじゅチューン! 100曲リクエスト」「FACE展2021」から
ランキングとの出会いは「幽白」の人気キャラ投票だったBIRTH VERSE BERTH主宰(現在36歳)です。
と言っても、切手代の41円だって貴重だった当時。投票するという選択肢はなかった。
それが今は選挙権を持ちましたし、そこかしこにランキング企画はある。投票の機会は増えました。
そんな投票について、2つの企画からつらつらと書いてみます。
1/2放送「びじゅチューン! 100曲リクエストスペシャル」
まず、一つ目は「びじゅチューン! 100曲リクエストスペシャル」。
年始1月2日にNHK Eテレで、美術作品を井上涼さんの歌とアニメで紹介する「びじゅチューン」の「100曲」を記念した番組が放送されました。
さかのぼって昨年秋には、この番組に向けた視聴者リクエストを受け付けていたんです。
とっても好きな番組なので、もっと楽しみたいと、私も聴きたい曲をハガキに書きました。
……ところが。
「マーカーで色塗ったほうが良いか」とか思ううちに受付日は過ぎ、ハガキは送れませんでした。
あーあ、といった具合。
リクエストランキングに驚き
そして放送。
ナイツの土屋さんの安心感ある進行に、過去のライブの模様、コーラスグループのジョリーラジャーズによる録音風景などの特別な映像が流れます。
ランキングは10位から……
10位 紅白海図屏風グラフ
10位 オフィーリア、まだまだ
10位 夢パフューマー麗子
同票で3曲がランクイン。
続いて、8位。
8位 武蔵の遅刻理由
8位 貴婦人でごめユニコーン
……「貴婦人でごめユニコーン」!!
この「貴婦人と一角獣」のタピスリーをもとにした曲こそ、私がハガキでリクエストしようとしていた曲でした。それがランクイン、しかも同票。ということは……
ハガキを送っていれば、ランキングが変わっていた?
送り忘れた昨年は「あー、やっちゃったな(苦笑)」くらいの気持ちでした。
けれどもランキングを見て、あの一票が間違いなく重かったことを強く実感。一票って大事。
やはりちゃんと参加したかったと思いました。
2/13~3/7「FACE展2021」
次におとずれた投票の機会は「FACE展2021」でした。
「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」の公募。1,193名の応募から83点が入選(うち受賞9点)。この展示が、新宿のSOMPO美術館で開かれ、観覧者投票による「オーディエンス賞」の選出を行っていました。
年始に1票の重みを強く感じた反省から、ちゃんと投票したいと思いました。
展示で、まず目に飛び込んだのが、審査員特別賞の山本亜由夢さん「パライソ」。
パライソ=楽園の名前のように、幸せのようにも見えるし、人の営みが生々しくもあり。ピカソ「ヴァイオリンを持つ男」みたいなキュビスム的なものも感じられる。
「面白いなあ」
いろんなことを感じながら観て回りました。
どうやって作品を選ぶか?
さて、どう選ぼう?
「びじゅチューン! 100曲リクエストスペシャル」での私の基準は単純。
ユニコーンがふてぶてしくかわいくて好きだから、だったんですよね(……浅い)。
では、今回。
新進作家の公募展ですし、作家のことを考えれば、賞の持つ意味は決して小さくはないはず。単純に決めていいのか。
いろんな基準はあると思うんです。
例えば美術的テクニックが高いとか、良い値段で売れそうかとか。
けれど、私自身は美術系大学出身でもない、アート系の仕事をしていない。本業は編集者なので、デザインを選ぶことはあっても、審美眼はどうだろう……。
ここで唐突に三谷幸喜脚本の「12人の優しい日本人」を採り上げます。
映画「12人の怒れる男」をオマージュした法廷もの。ある死亡事件について、有罪か無罪かを12人の陪審員で決める。満場一致でないとならないが、ただ1人、意見が食い違うという話。
印象的なセリフがあります(ネタバレです)。
「俺は法律のことはよくわかんないし、人前で論理的にしゃべるのだって苦手ですよ。でも陪審員になって今ここにいる。あとは直感で勝負するしかないでしょ」
要は、本来は有罪か無罪かを決めるには、法的根拠がなくてはならないはず。
けれども、陪審員として一般人がそこにいるのだから、むしろ個人的理由で、それを決めても良いのではないか。という可能性が示されます。
アートへの投票も、きっと、美術的や商業的な評価は、審査員が見てくれるでしょう。
でも一般人の自分にも票があるのだから……。
「12人の優しい日本人」のセリフに少し背中を押してもらい、結局私は個人的な好みで決めることにしました。
投票、その理由
私は、高見基秀さんの「対岸で燃える家」に投票しました。理由は3つあります。
1つ目は綺麗だったこと。
私は何事も、技術は大事だと思っています。
技術がなくても作れる。それが良いときもある。でもラッキーパンチには魅力を感じなくて、考え抜いたプロセスが見えるものが私は好きです。
ただ、粗いだけのものは好きじゃない。
丁寧な暴力は観たいけれど、単なる暴力は嫌なんですよね。
で、この絵は素人目には上手いなあと思いました。
誰が見ても「対岸で燃える家」だと分かる。中央の赤い炎が立つ白い家はショートケーキみたい。闇に広がる光のグラデーション、森の緑、川面の色味は深い。
綺麗でした。
そして、2つ目は残酷だったこと。
1つ目の「綺麗だ」って思うのって、残酷じゃないですか。
「対岸の火事」の言葉のとおりで他人事。燃えてるんですから、家の人には大変な話。それを綺麗と思うだなんて、度を越した残酷さ。
そういう投げかけを、作者は意識的に描いている気がしました。
例えば抽象的に荒っぽい筆致で表したなら、現実味が薄れる。けれど、リアリティある表現に落とし込むことで、炎の下にある不幸が分かる。
人の家の火事を見て、ショートケーキみたい?
そんな残酷さってないでしょ。
最後の3つ目は後味が長かったこと。
展示は5階から始まり3階まで3フロアでした。
この絵は5階、つまり最初フロアにあった。
でも、最後にも思い返せた。その綺麗さと残酷さの後味が長かった。
「対岸で燃える家」を綺麗に思う残酷さ。そんなことっていっぱいあってちゃんと気づきたい。
自分に振り返るものがあって、これを選びました。
積極的に投票して、自分事に
「FACE展2021」は会期を終えました。「オーディエンス賞」の結果も出ています。
投票した以上は興味も湧きますし結果は見ましたが、ここでは省略します。
1作品に投票するということは、その他82作品を選ばなかったということ。
その事実を実感することは大事だと、私は思います。
作家は “自分自身の基準”と常に向き合っているでしょう。
単に見るだけなら、基準を意識しないでも見られる。けれど、向き合ってみると面白い。
投票は物事を他人事から自分事にする行動でもあると思います。投票の理由は、軽くても重くてもいい。それも含めて“自分自身の基準”ですよね。
自分のことがわかる。
だから積極的に投票します、これからも。
1票って、やっぱり大きいですね。
「びじゅチューン! 100曲リクエストスペシャル」
10位の「夢パフューマー麗子」については以下もどうぞ。
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