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【本】聞く技術、聞いてもらう技術

東畑開人さんは臨床心理士で、私が読んだ本はこれが3冊目。
これまでの本と同様に、これも素晴らしい内容でした。

聞く技術 聞いてもらう技術
「聞く」は「聞いてもらう」に支えられている

普段、私たちは人の話をふつうに聞くことができます。
でも、自分が追い詰められたり、脅かされたりすると、相手の話を聞くことが途端に難しくなります。
どうすればいいか。
「聞いてもらう、からはじめよう。」と東畑さんはいいます。

最近、私はあることから人にたくさん話を聞いてもらっています。
すると不思議なことに、自分の中で何かが変わってきた感覚があり、私自身が「聞いてもらう」ことの効果を実感しています。

一方、私の場合は人の話を聞くことが目的の場なので、聞いてもらえていますが、そうでないときには意外と難しいとも感じます。
それは私が思うに、聞いてもらうためには、自分の弱いところをさらけ出す必要があるからです。自己責任が叫ばれる今のこのご時世に、自分が弱いと宣言するのはたいへん勇気がいることです。
さらけ出さずに自分を語るのは自慢話の類で、聞いてもらうというよりは聞かせる、といったほうが適切でしょう。上下関係ではよくある話です。聞かされる方はげんなりしますね。

そこで、聞いてもらうには相手との関係性が重要になってきます。
「結局のところ、信頼とは時間の経過によってしか形作られないものです。」(p.107)

昔、東畑さんがスクールカウンセラーをやっていたときに、不登校の生徒の家庭訪問をしていたそうです。学校では会えないので、家に行くのですが、約束の時間に行っても、寝ていたりして会ってもらえません。で、書き置きをして帰る。次も会えない。書き置きをする。そんなことを繰り返すうちに、少しずつ変化が現れる。あるとき、子どもは起きているけど、会いたくないという。そうしているうちに、この時間に先生が来るから、食卓でパンでも食べてようか、となってくるそうです。

これを読んで私は、高校受験を控えた長男のことを思い出しました。
ずっと本人の主体性を尊重するという名目で放任主義を取っていたのですが、それは彼を孤立させ、不安にさせてしまっていたのではないかと1ヶ月ほど前に思い至りました。
私がいてもいなくても、彼の勉強にはたいして影響しないでしょう。でも、夜遅くに塾から帰ったときや勉強して寝る前など、顔を合わせて話そうと思えば話せる状態をつくっておく。そうすると安心感をもたらすかもしれない。そう思って実行しています。

心の問題など、一瞬では解決しないものだから時間をかける必要があることはよくよく理解していたつもりでした。自分ができていなかったことに気づき、頭を殴られた感じがしました。

「聞いてもらう」という着眼点はこれまでになくユニークで、今の社会問題の本質にまで切り込んだ良書だと思います。ぜひ手にとってみることをおすすめします。

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