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「雨のあとに鉄の花」

思い出して降り出した、
軒下には雨宿りの砂時計、
鐵工所には解体されてるシトロエン、
記憶はもうない、景色の代わりに距離を刻んだメーターの、
二度とは振れない其の長針、

溶かした鉄が銃器になって生まれ変わると初めて知った幼子は、
悪に向けて火を吹く砲を思い浮かべて踵を鳴らす、
炎上した後、血を吐くのもやはりは同じ生き物と、
彼が知ってしまうころ、清濁なんぞに大差はないと教える誰かはいるのだろうか、

天にて星は墜ちてゆく、惑うばかりで願い事など訊き取る様子は微塵もない、
天にて陽は甘い戯言凍らせようと、雨を凍らすことを思う、

空はいよいよ高く冷たく、降らせるつもりの氷を溶かすために在る太陽、
皮が破れて骨だけの、傘は眠っているふりをした、
風を背にする雨の花、柄に微かな温度が残る、
飛び立てないのは自身が鳥とは違うこと、
見上げ呟く、氷水落つ頭上には、
白いあばたのあぶくのような、昼の月が無言でただただ夜を待つ、

photograph and words by billy.

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ビリー
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