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「うたかた」


うたかた、それはほんの一瞬だけの、

真夏に咲く炎の閃き、
恒久など要らぬとばかり、
弾け飛んでは宇宙に熱を放ってくれる、

うたかた、それが日々を慰む、
夜に戸惑う俗物たちの、
体に溜まりし毒を冷ませる、
うつらにそぞろ歩いては、夢に現に花を見る、

細い音色の鈴を手に、
少女はずいぶん未来を描く、

まだ幼くも生きているから、
笑顔ばかりは咲かせられない、

無邪気さだけじゃ乗り越えられない、
傷みに耐えうる底意地を持つ、
土にしがむ草木のような、空に眠る友を思った、

うたかた、閃く花は枯れ落つときを気にはしない、
永久に生きる術はない、
そしてまた、そうする理由も見当たらない、
いまがすべてと割れる熱源、

少女を見守る老婆は椅子で、
過ぎた伸びやかりしを思い浮かべる、

若い葉ミドリのみずみずしさに、その手の甲を、
生きた証と静謐なる微笑みで、

うたかた、人はその手に握りこむ、
願いを委ね託すよう、
瞬の大火に酔いしれる、
繰り返さぬがこの世のせめての救いであれと、

うたかた、誰もが生く濁流のなか、
醜さばかりを強いられて、
か弱く咲きしに重ね合わせる、
足るを知るも知らぬも痴れたこと、

そして少女は老婆に話す、
〝この花の連なりを、

次に見上げるそのときは、少し近くなっているかな〟
そして老婆は少女に話す、
〝ほんの少しは近づくでしょう、
でも届かないから空は見上げることができるの〟

うたかたなる真夏の宴、
うたかたなる天の饗宴、
うたかたなる花束の色、
うたかたなる願いとともに、

photograph and words by billy.

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