「海辺のクオリア」
地上が終わり海が始まる岬は終点、陽が溶けて落ちるを待った、
月夜に揺れる名無しの花が何色に、咲いているのか知りたいなんて、
どうでもいいとほざいて嗤った、
枯れかけ一輪ねじり潰したのはたぶん、甘さではなくせめての慈悲だったんだろう、
漂泊続けた蛇は誰もに忘れ去られて、眠る場所さえ持ってなかった、
腰振る夜中の、白い熱を焦がし合う、
漁師小屋の不良ふたりを飲み込んで、鍵をくすねて灯台を、
回転灯が動かないよう火を点けて、蛇は岬を手に入れた、
そしてすべてを忘れてしまったのは彼が、何ひとつも欲していないだけのこと、
地上が終わり海が始まる岬が空を、眺めていると話す老婦は背中にナイフが刺さってた、
幾ばくなくとも失くした意思を、開く傷から流し続ける、
その様子を遠くから、終わらせようとライフルを、
構える若い兵隊は、蛇に喰われた漁師の息子、
前世や来世などという、虚言をのたまう阿呆が小銭を集めているころ、
水晶紛いのガラスの玉に生まれてしまった蛇は球体、
青い季節を欲しがって、枝に分かれた舌を震わせ、
卵に見立てた惑うばかりの星に咲く、花の下の果実飲み込む朝のことをいま想う、
photograph and words by billy.
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