見出し画像

「舟を編む」

草木で舟を編んでゆく、
子供のころに誰かの髪を結い上げた、
その仕草を見上げる天に浮かべて舟を、
君と僕は草木で舟を編んでゆく、
凝らせば微か曲線の、流木拾って背骨に選び、
既に色褪せ絶えてしまった枝葉と根、
集めていたら其れはいつからだろう、砂辺に立って潮に揺られる塔になってた、

星を模した細い首飾りを下げ、彼女は舟を編み続けてる、
春の陽の瞬きのよう、淡い光は星を順に点滅させる、
風は僕らの輪郭を、景色に溶けて消えさせようと吹いていた、
か細い背と背を鏡のように合わせて僕ら、きれいな水に浮かべる舟を編んでいた、

器用さ、狡猾、逞しい肉体や、
自由、永遠、夢に見たる黄金原野、
どれひとつも仲良くなんてなれなかったよ、子供のままいられたらって思わないんだ、
幼さ、甘え、生意気さ、
ひとつずつを舟に載せ、黄昏れ時に水に揺れる直線へ、
旅立たせて微笑む白い、頰には消えないそばかすいくつか、
睫毛がつくる影が伸びゆく、今日がまた終わると言った、
水平線へと消えた舟の数など覚えてなんていられなかった、

水の底に眠るものもいるのだろうが、ここの水はきれいだからやがて何処かへたどり着くって君が、
お星様に語りかける真夜中のことを僕は知る、
明日には明日で、再び舟を編みながら、ぽつりぽつりと細い絹の雨のなか、
果てえぬ想いを縦と横に重ね合わせる日が待つ、
やがては永久に繋がるだろう、水辺に消ゆる舟を編む、
遥か彼方の星の子たちよ、

君と僕で舟を編もう、
昨日、今日、明日、それからその先へと続く、
舟を編もう、君に会ってそう言おう、

photograph and words by billy.

いいなと思ったら応援しよう!

ビリー
サポートしてみようかな、なんて、思ってくださった方は是非。 これからも面白いものを作りますっ!