「ダンス・ウィズ・ウルヴス」
太陽に背を焼かれて犬は逃げ場を失っていた、
毛羽立ち焦げる匂いに気づけど慌てようにも慌てられない、
気分次第で雨だろうが風だとか、欲しがるわけにもいかぬ鎖をぶら下げて、
いつかの木陰を忘れちまったふりして過ごす午後の犬、
眠いはずもないのに然し、どうにも気楽に見える風情は虚勢に過ぎぬ、
風が流れて星を見上げる夜を待つ、
黄昏れたる黄金景には溶ける橙、
白い化粧の大道芸者が列をなして打楽器鳴らす、
シャンデリアになりゆく街なら今宵が最期であるかのように、
発狂さながら赤い音色を打ち鳴らしてサーカス誘う、
幸福そうに笑顔を寄せて、交わし続ける唇からミントが届く、
きれいな下着を着けているから今夜誘って欲しいんだろう、
欲望なんざ色とりどりが当たり前、
眠りたい者、充したい者、それから朝を望まぬ者や、
皮を剥がれて絶えた鹿は吊り下げられて、
流れ着いた流木みたいに角は砂地を貫いていた、
彼が最期に欲していたのは清々しき地平線、
一切合切、すべてを忘れて虚無に帰すことだと言ったら誰がそれを聞いてるだろう?
数百くらいは生きた気分の犬はいま、
背を焼く陽を疎ましく、そう感じる余力を何故か可笑しく、
眠りたいのに眠れないのはくだらない夢を見る、
どうにもそれが不愉快だった、
海辺に踊る蛇は漁師小屋にて愛を語らう不良ふたりを飲み込んで、
犬はそいつを噛み砕いている明日を知ってた、
シャンデリアが逆さに落ちる最期の夜を気狂うふりにて費やしてゆく、
どうにも幼稚な我々なんぞに理解を求めぬ、
彼らこそが生きているから持つ虚無を、
頭上に騒ぐ陽を噛み殺しそうと、
絶える直前、犬は唯々夢想に耽る、
photograph and words by billy.
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