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「口笛」

逆光の坂道を、三歩進んで振り返り、
浮かべていたのはたぶん笑顔、
影になって見えなかったはずなのに、
どうしてだろう眩しいくらい思い出す、

足りないと欲しがって、手に入れると他を欲しがる、
ないものを探し、あるものは忘れ、
そんなことばっかやってるってなんだかさあ、

砂を噛んで土を飲む、日々日々それを続けてる、
どこを見れども陽は見えるがつかみ取れずに涎を垂らす、
飲み込みたる赤い土、異物が喉をざらつき滑ってくのさ気分が悪い、

それから君が隣で吹いていた、
冬の風を真似た口笛、どんな歌か忘れてしまった、
僕にはそれが福音だったはずなのに、
嗚呼、嗚呼、
何もかもを忘れてしまって生きてゆくのか、

乾ききったアスファルトから冷たいにおいが立ち上る、
あのとき君が空に吹いていた、
冬の風に似せた口笛、どんな歌か忘れてしまって、
僕ひとりの居場所だったはずなのに、
嗚呼、嗚呼、
やはりか僕らは新たな孤独に身を置くだけなんだ、

photograph and words by billy.

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ビリー
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