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【猫の日エッセイ】わが家にやって来た「考える福猫」
11月初旬の良く晴れた冷たい朝、
事務所下の道路で小鳥を撮影中に、
ボクの背後から、かすれたような、
ほとんど声にすらなっていない、
子猫の鳴く声が近づいてきた。
振り向くと、19年間一緒に暮らし、
数年前に死に別れたテス君と、
まるでそっくりの子猫だった。
野良のはずなのにどんどん近づき、
ボクの足許まで空腹を訴えに来た。
考えたらこの事務所は以前住居で、
テス君と一緒に暮らした家だった。
きっと子猫に生まれ変わって、
また会いに来てくれたのかと、
マジに思った。
それが、今一緒に暮らしている、
推定、生後3か月の、
テツとの出会いだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1708584859618-kdvp9XNCRq.jpg)
野良育ちのためか、
よく遊びよく寝てよく食べる。
しかし、ある日突然、お尻から、
ヒモのようなものが
ズルズルと出てきた。
そう、野良猫にありがちな寄生虫、
真田君(サナダムシ)だったのだ!
獣医さんに虫下しを処方してもらい、
真田君との戦いは一か月かかった。
完全に真田君がいなくなったテツは
獣医さんも太鼓判の健康優良児として
我が家の中で完全にリラックスし、
のびのびと育って行った。
![](https://assets.st-note.com/img/1708585870414-tXIqzsliZE.jpg)
テツが我が家に来てから、
些細なことだが、何かが変わった。
受験に失敗して一浪していた息子が、
翌年春、難関の志望校に、
無事合格した。
ボクの零細企業の仕事も順調で、
TVのハイビジョンへの移行期のため、
カメラなど機材のリースや購入など、
高額出費の時期も何とか乗り切れた。
テツが来てから家の中が明るくなり、
いつとはなく、テツは福を呼ぶ猫、
「福猫」ということになった。
![](https://assets.st-note.com/img/1708589059984-gksqwUjlYh.jpg)
普段から自然や生きものを相手に、
取材・撮影しているボクは、
人間より、動物や鳥や虫など、
生きものたちの方が
心が通じ合えるようになっている。
(社会的には困ったもんだが・・・)
だからいつも一緒に家にいるテツが
今何を想い、
何を考えているのかなんて、
当然ながらよくわかる。
身勝手な奴だが、
甘えたい時は甘え、
空腹時やトイレの際は、
声を出して呼ぶ。
その声と表情で、
何を求めているかが、
ほぼ100%わかる。
![](https://assets.st-note.com/img/1708589407866-MkfWVzE7zR.jpg?width=1200)
でも一日に数回、その表情から、
今、いったい何を考えているのか、
わからない時がある。
それは、
ご飯が食べたいとか、
眠いとか、
そうした形而下的な欲求ではなく、
もっと哲学的な、
形而上学的な何かを、
間違いなく考えていると思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1708589600071-gp52GrxmcC.jpg)
テツは今年の秋で17歳を迎える。
人間なら相当なご高齢だ。
寝ている時間が多くなったとはいえ、
よく家中を元気に走り回っている。
そして時に、物思いにふけっている。
彼が哲学している内容を、
いつかボクも、
共有できる日が来ると信じている。
その日が来るまで、
テツにはまだまだ、
長生きをしてほしい。
![](https://assets.st-note.com/img/1708590102349-QSx5VWJaeD.jpg)
文責:増田達彦(映像作家)
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