裾野の空 雲の山
富士山が空で 周りが山だったら
宇宙から見た人間は 蟻の巣の中で生きているようなものだ
くるりと地球がまわり 太陽を浴びた時
私達は 富士の空という 洞穴をみつける
大山も 桜島も 蔵王や有珠山も
そらなのだ
アルピニストは外側の岩を オランウータンみたいにのぼる
心あるものはそのてっぺんにぶら下がるが
光明の恵みをと エゴイズムを抱くものは
岩をくだいて 富士の空を 大きくする
ボリボリ岩を砕けば成層圏を突き破り 宇宙が見える
と その瞬間
重力との契約は破棄され 私達は宇宙の彼方へと
ひきずりだされる
そこは 道徳も 観念も 役に立たない
全体が「存在」のブラックホール
私達からは人間という名札が剥奪される
理性や感情や宗教は役に立たない
救済という言葉は 完全抹消されたのだ
さまようことの怯えや 悲しみに 同調するものはいない
醜く 汚らしいと 鼻をつまむ 生ごみよりも
価値のない 心臓によって脳が生きている 一個体なのだ
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